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斜支靭帯(Oblique Retinacular Ligament)の重要性


導入

まず、斜支靭帯という存在は知っているでしょうか?
また、斜支靭帯が何に関与しているか考えたことはあるでしょうか?
今回、この記事を最後まで閲覧してもらうことで斜支靭帯という靱帯の特性と拘縮に対するアプローチ方法が分かるようになります。

斜支靭帯とは?

まず、大前提として斜支靭帯は支靱帯の中の1つの靱帯にあたります。もう一つの靱帯横支靱帯(transverse retinacular ligament)と呼ばれています。

斜支靭帯は基節骨遠位1/4部の掌側およびその部の指屈筋腱腱鞘より起始し、幅の狭い腱様の索を形成し、横支靱帯の深層を末梢背側に向かって斜めに走り、横支靱帯より4〜6mm遠位にて側索と癒合する。この靱帯の近位部の線維はほぼ横走し、遠位部の線維は斜走しているので扇状の膜を呈し、PIP関節の両側面から指背に出て側索と融合する。融合部はPIP関節部から中節骨中央部にまで及んでいるから、この部位においては側索の外縁は非常に不明確となる。側索と融合した斜支靭帯の線維は腱と共に指背を末梢に向かって走り、末節骨の骨底部に停止する。斜支靭帯はそれぞれの指の両側に存在するが、その太さ・厚さは各指の橈側・尺側により多様に変異する。一般的に環指尺側のものが最も強靭であり、小指尺側のものが最も弱小である1)


引用:上羽康夫:手 その機能と解剖.株式会社 金芳堂.第6版第1刷

斜支靭帯の拘縮確認方法

斜支靭帯は、PIP関節の肢位によって緊張・弛緩を行います。例えば、PIP関節が伸展している場合はDIP関節は緊張し、PIP関節が屈曲している場合はDIP関節は弛緩します。そのため、PIP関節が伸展している時には斜支靭帯の影響を受けDIP関節は過度に屈曲できないようになっています。反対にPIP関節が屈曲している時には斜支靭帯は弛緩することによりDIP関節は屈曲しやすくなります。角度としては、PIP関節が伸展0〜30度であれば、斜支靭帯はPIP関節側方から背側にかけて走行し、DIP関節を伸展させます。反対にPIP関節が屈曲60〜90度であれば起始・停止が近づく事で弛緩することによりDIP関節は容易に屈曲可能となります。
DIP・PIP関節が伸展位の状態ということはその状態では終止伸筋腱は近位に滑走し緊張が亢進している状態となります。その状態で末節骨背側より屈曲方向に外部刺激が加わった場合には終止伸筋腱の断裂リスクがあります。その影響を少しでも軽減するために斜支靭帯が存在している可能性があるのではないかと考えます。


図1: PIP関節伸展0°


図2:PIP関節軽度屈曲位


図3:PIP関節90°近位屈曲位


図4:PIP・DIP関節最大屈曲位

余談が長くなりました。
前で述べた通り、斜支靭帯はPIP関節の肢位の影響を大きく受けます。そのため、DIP関節に関節構成体軟部組織性の拘縮が残存していない例であればPIP関節を伸展位の状態でのDIP関節屈曲角度が反対側と異なり低下している場合には拘縮が残存している可能性があります。また、注意しなければいけない点としては、へバーデン結節などの症状がないかどうか評価をすることは重要だと考えます。

斜支靭帯の伸長性改善方法

DIP関節に関節構成体軟部組織性拘縮がないことを前提として、斜支靭帯を完全に緊張させた状態からスタートすると疼痛を感じやすい・関節自体の動きが殆ど出ないため拘縮自体を改善しにくい可能性が示唆されます。そのため、緊張位よりも軽度弛緩させた状態を開始肢位とします(斜支靭帯の緊張度合いは人により異なるため反対側と比較しつつ施行してください)。その肢位を保持した状態にてDIP関節の屈曲・伸展を反復させて伸長性を得ていきます。斜支靭帯を軽度弛緩させた状態でのDIP関節屈曲角度が反対側と同様のレベルまで得られるようになってきたら徐々にPIP関節の伸展角度を0°に近づけていき斜支靭帯の緊張肢位としていきます。最終的には、PIP関節伸展位でのDIP関節屈曲・伸展の反復をしていき最大伸長位を得ていく流れとなります。また、他動運動のみでは疼痛誘発が強くできない、もしくは上手く斜支靭帯の動きが出ない場合であれば、FDPの自動屈曲と共にDIP関節の他動屈曲を行う、自動介助運動(assistive motion)を施行することで運動自体が確保しやすくなる場合もあります。

引用・参考文献

1)上羽康夫:手 その機能と解剖.株式会社 金芳堂.第6版第1刷.195

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