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【意外と知らない】手指ピンチの効果的な考え方


概要

ピンチとは人が生活していく上で握力と同様に必要となる手指動作です。ピンチとは日本語で摘みの事であり、ピンチ形態は複数存在します。また、ピンチ形態の違いにより働く筋・神経は異なります。今回、ハンドセラピストの視点からピンチについて解説をしていきます。

ピンチ形態

まず、ピンチ形態は主に以下の3種類となります。呼び方としては他にもありますが一般的に使用される名称にて記載しておきます。

  • 指尖つまみ(Tip pinch)

  • 指腹つまみ(Pulp pinch)

  • 側腹つまみ、鍵つまみ(Lateral pinch、Key pinch)

  • 3指つまみ(Chuck pinch、Three fingered pinch)

図1:指尖つまみ(Tip pinch)
図2:指腹つまみ(Pulp pinch)
図3:側腹つまみ、鍵つまみ(Lateral pinch、Key pinch)
図4:3指つまみ(Chuck pinch、Three fingered pinch)

ピンチ形態による支配神経・筋の違い

  • 指尖つまみ
    筋:示指FDS、最重要な筋が母指FPL
    神経:正中神経

  • 指腹つまみ
    筋:示指FDS、FPB、FPI、APB、最重要な筋がAdP
    神経:正中神経、尺骨神経。(FPBは2重神経支配)

  • 側腹つまみ、鍵つまみ
    筋:FDI、FPB、FPI、最重要な筋がAdP
    神経:正中神経、尺骨神経

  • 3指つまみ
    筋:示指FDS、FPB、FPI、FDI、AdP。IPjt屈曲位であればFPL関与あり
    神経:正中神経、尺骨神経

注意として、母指と対立位となっているのは示指を前提として考えています。対立する手指が他指の場合は筋が異なるため考慮してください。

ピンチ力

ピンチ力の計測意義としては、異なるピンチ形態における相対的なピンチ力の客観的評価です。そのため、計測することで実生活上でどの形態によるピンチ動作に困難さがあり、QOLの低下に繋がる可能性があるのかを推測することが可能であります。また、その困難さが生じている動作をできるようにするためにはどの程度のピンチ力が必要になるのかを目標としてリハビリ遂行が可能となります。

ピンチ力を計測する計測機器は以下の2種類があります。

引用:ミナト医科学株式会社/2023年総合カタログ

ピンチ力 測定機器の使用方法

各ピンチ形態により検者・被検者共に測定方法が異なります。
一つずつ説明していきます。

  • 指尖つまみ
    検者:検査機器のメモリが横を向くように準備
    被検者:前腕・手関節中間位。母指と対立位となる指以外は屈曲位となり、指尖部でのピンチとなるように準備

  • 指腹つまみ
    検者:検査機器のメモリが横を向くように準備
    被検者:前腕・手関節中間位。母指と対立位となる指以外は屈曲位となり、指腹部でのピンチとなるように準備

  • 側腹つまみ、鍵つまみ
    検者:検査機器のメモリが上を向くように準備
    被検者:前腕・手関節中間位。示指側副部と母指指腹部でのピンチとなるように準備

  • 3指つまみ
    検者:検査機器のメモリが横を向くように準備
    被検者:前腕・手関節中間位。母指と対立位となる2指以外は屈曲位となり、指腹もしくは指尖部でのピンチとなるように準備

一般的な握力測定と同様にピンチ力測定にも注意点があります。以下に示します。

  • つまむ瞬間に検者が「もっと、もっと」などの声掛けをすることで測定値の値の向上を図れる

  • 机上に肘、手指尺側部をつかない。代償動作により数値の向上が生じる

  • 測定は1回のみではなく、できる限り3回ずつ測定し平均値を出す

ピンチ力に対する重要事項

  • 握力はピンチ力との相関を認め,鍵ピンチ力との相関がより高かった

  • 鍵ピンチ力と指腹ピンチ力には高い相関を認め,鍵ピンチ力は指腹ピンチ力の平均 1.3 倍で あった

  • ADL自立には水銀握力計での握力は100mmHg(8Kg)、ピンチ力は 1kgf以上が必要であると報告した。

参考文献

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