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なかなか異世界転生しない男

カリサキタクロウ
年齢52歳
恋愛経験ゼロの真正童貞
いや最早童帝であり魔法使いであり賢者だろうか
休日や余暇にはゲームやらアニメやら漫画やらフィギュアやらプラモやらで過ごし
そんな独身生活で孤独に死ぬと思っていた

終わりは唐突に訪れた
よく死ぬ瞬間はゆっくりモノが見えるなんて聞くがそんなことはなく
トラックが見えた瞬間には死んでいた

そして目を覚ますとなんか異世界転生モノみたいな謎空間にいた
俺の目の前には転生的なことをしてくれるのであろう謎の女神がいる

ここまではいい
だがそう簡単に転生などしない
異世界転生モノを見てて思った
あいつ等簡単に転生しすぎだ
説明なく強制的に転生させられるパターンもあるが
俺は今ここでこいつに聞き出せることは全て聞き出してやる

まずはこの女神(仮)がオレの心を読む的な能力を持ってるかを確認しなければならない
俺の眼力(カリサキアイ)でこの女神のスタイルを見る
この女神は顔立ちは清楚系だ
服装はファンタジーで天使とか神的なヤツが着てそうな布を纏ってる感じだ
輪っかも羽もない
ノーブラノーパンのようだ
ノーパン?ノーパンだマジか
ノーブラにも関わらずおっぱいは垂れてない
謎の女神パワーなのかグラビアアイドルのごとくいい感じの位置に留まってる
E、F、G…GはないなFカップだあれ
全身ドストライク
だがおかしい
こんなに俺好みの女神なんてことあり得るのか
姿を変える邪神的な感じかもしれないから見た目だけに惑わされてはならない
女神がなんか光りながら現れてからわずか0.5秒の間に眼力で判別したこのデータを元に
凄いエロい事考えてみる
清楚系女神だからやはり陵辱系エロ展開だろうか
エロゲーでよく見るやつ
可能な限りのエロ的な展開を妄想する
だが
「…」
『…』
数秒見つめ合うが
この女神には俺に対するゴミとかを見るような反応とかが見られない
希望的観測もあるがおそらくはオレの心を読む的なことは出来てないと考えられる
流石にあんなのを初対面で妄想されて反応ゼロということはあるまい

「あの、ここはどこですかね?」

とりあえず情報を聞く必要がある
そもそも異世界転生じゃなくて天国地獄の分かれ道という可能性すらある
いや地獄行きな悪いことはしてないんだが!?
大丈夫だろうか!?

『私はあなたを転生させるために死んだあなたの魂を回収した者で、ここはその転生前の空間みたいな場所です』

イイイイイイヤッホおおおおおおお転生ぇええええキタアアアア
待て待て待て待て
どこに?元の世界?

「それは元の世界の何処かとかですかね」
『いえ、あなたの住んでた世界とは別な世界です』

おっしゃあああ異世界転生エエエエエエ
第1段階はクリアだ
さて

「なんのためにそんなことを」

コレ大事
とんでもない理由や役割を与えられるパターンとかあるかもしれねぇ

『貴方に魔王を倒して世界を救ってほしいのです』

嘘だ

正確には嘘というより裏に企みがある

俺の眼力(カリサキアイ)はふざけてるわけではなくチート特殊能力でもない
あまたの死線をくぐり抜けた会社員だけが持つ読み
一言でいうなら洞察力
コイツは何かを企んでいて、建前として魔王を倒せと言ってる
僅かに、ごく僅かに発言に揺らぎがある
営業中のクライアントが伏せてた爆弾(わざと黙ってたやべー情報)を察知したときと同じだ
見た目に騙されるところだったが
経験が活きたな

「私のようなオッサンには無理だと思うのですが」

当たり障りのない対応でもっと情報を掘る
とにかく情報が足りない

『勿論です。貴方には魔王と戦うための力を与えます』

嘘はない
とりあえず倒してほしいという点は本当なのだろう

「何故私だったんです?」
『魂の強度というものがありまして、貴方は転生を行うことが可能な強度を持っています。大抵の人間は転生そのものが出来ないのです』

嘘はない
ないが、魂に強度があるとか魂実在したのかとかマジで驚く話出てきたなおい
ついでに、俺に転生してもらわなければ困るらしいというのも確定したな
代わりが居ないか、見つけるのが大変なんだろう

「因みに断るとどうなるんですかね」
『そのままあなたという存在は消え去ります』

断る理由も消えたな

「とりあえず…転生はさせてもらいますが…見返りとかあるんですか?魔王を倒すとか絶対危ないですよね」
『……あなたの世界の人は異世界転生とかしてとりあえず世界を救うヒーローになったらそれで嬉しいと思ってたので考えてませんでした』

おい
マジの本音じゃねぇか

『そうですね、もし魔王を倒せたなら…』
「倒せたなら?」
『私を好きにしていいですよ』

─────
ハッ
ヤベーヤベー意識飛んだ

「それは」
『それは?』
「燃えますね」

やる気になっちまった
こうなれば仕方ないよな
やってやろうじゃないか
裏に企みがあるのは確かだが
それを差し引いてもご褒美が魅力的過ぎた

「それじゃあ転生先について聞きたいのですが…」

してやろう異世界転生
まずはとりあえず行き先について徹底的に質問攻めからだ


続く(予定はない)

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