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映画「カラオケ行こ!」3回見た私的な覚え書き。



⚠801をそれこそ中学生の頃から、愛好しているオタクの発言になるので、そういう内容が気になる方は、そっとページを閉じてください。 
⚠ネタバレしてます。 



初見、朝8:30に見て、頭、パァン!なる。
見終わったあとに、幸せすぎて、思わずショートケーキを食べてしまった。 
あと、無性にオレンジジュースが飲みたくなる…聡実くんのせいだよ。 
多幸感に浸りたくなった。
ハッピーエンドの余韻の素晴らしさよ。 

映画は、今のところ3回鑑賞し、1回目→随分と邪な妄想で、自己の記憶を補完、または一部改変してる事実に気付く…オタクなので、こればっかりは、いた仕方ない。 

原作は一度きり、普通にサラっと、読了。 
原作とは、狂児のビジュアルからして違うことには気付いていたので、特に違いをあーだこーだ言うつもり、無し。 
映画版として、すごく全年齢層向けに見やすく、きれいにまとまっていたと、感じる。 
原作を、原作通りにやったら、確実に事案やからな。 
以下、映画「カラオケ行こ!」の、ものすごく個人的な思いの吐露、もしくは、迸る熱いパトス(情念)の覚え書き。


まずはじめに、綾野剛の演技は、この映画が初見。
綾野さんのバラエティ出演は、2回ほど見たことあり。 
嵐にしやがれ→明星だったか、アイドル雑誌の表紙の嵐に入りたいって、ニノか翔さんの立ち位置で、楽しそうに嵐メンバーに混じり、写真を撮ってもらっていた記憶がある。 
2回目が2023年末のあざとくて?のスペシャルで、穏やかで物静かな感じを受ける。
それ以前に、一番印象深いのが、たしかテレビ雑誌の放送予定の記事だったと思う、少し売れはじめた頃だろうか。 
ナイナイのバラエティ番組で、渋谷かどっかで、ナンパ100人切りみたいな企画を綾野剛がやるらしい記事を見た時、すげぇな、この人…コミュ力、高すぎだろ…なんで俳優やってんの、ホストかヒモのが稼げるんちゃう?って、本気で思ったのを今でも覚えている。
記事発見↓2017年…1秒て…無敵やん…
(綾野剛、1秒でナンパに成功「第一回渋谷ナンパ駅伝」俳優の綾野剛が、フジテレビのバラエティ番組「めちゃめちゃイケてるッ!」に出演し、ナンパの企画に挑戦した。)
演じた役柄で、綾野剛を大型犬と評していた文章を見て、友達にドラマ番宣画像を見せてもらったら、狂児とは、確かに真逆っぽい雰囲気で、明るい笑顔。 
さすが、役者さん。

「綺麗なもんしかダメなんやったら、この街ごと全滅や」 
(以下インタビュー抜粋) 
綾野「そこだけ切り取ると哲学を持っているように聞こえるかもしれませんが、あれは、狂児にとって聡実への純粋なエールです。感情を変容させずにストレートに発した言葉。狂児は『大人の手練手管で聡実と向き合ってはいけない』ということを、本能的に察知できる人です。それが、狂児の本質的な凄味であり、だから聡実も相手がヤクザであるとわかっていても、当たり前のように一緒にいられるという説得力に変わる。もしあれが、大人としての経験則に基づいて、狂児が発していた言葉だったとしたら、きっと聡実には響かなかったはずです。目の前の相手を説得や納得させようと思って発したわけでなく、あくまでも聡実と同じ目線で世の中を見渡した瞬間に、狂児の内側から、ポッと生まれ出た言葉だったような気がします」
聡実くんに対する狂児は、感情を変容させずにストレート…素のままってことか…
え? 素で、あんなんなん? 
あんな彼氏彼女みたいな物理的距離感かまして、語尾にハートマークつけて名前呼んで、「聡実くん置いて死なれへんし」って言って、右腕に名前彫られんのか、そうか…そうかぁ…(遠い目) 
1回目に見た時に、この狂児という人の聡実くんへの距離の詰め方が、ものすごく気になって…意識的か、無意識的なのか、ぐるぐる考えていたら、演者の綾野さんが上記の答えをくれて、さらにぐるぐるするっていう、な…情緒がぐちゃぐちゃになる。

綾野剛扮する成田狂児は、個人的なイメージだと、蛇。 
狙った獲物を、じりじり追い詰めて、弱らせていく、非情な戦い方をしそう。
陽より陰、動より静、湿度と粘度を感じてしまう。 
ねっとり、と表現されていたレビューがあり、まさに!と思った。 
奇しくも、綾野さんのインタビューかなんかに「♪紅は、情念を込めて…」と言っていたので、粘度を感じるのは、あながち間違いではないのかと、安心した。
湿度と粘度を勝手に感じていたせいか、映画出だしのワイシャツすけすけモンモン(入れ墨)ぬれぬれの、お姿に震える。 
エッッッロ。 
歩く18禁じゃん。 
え?これ、大丈夫? 
中学生、見れる感じ? 
そら、ヒモで生きていけるわの、納得感をありがとう。

♪戸惑いながら、覚悟している(影絵)
光と闇の対比、聡実くんと狂児の出会いを示唆するような、とても美しい合唱が響く。 
合唱コンクールの銅賞、後輩の和田くんの質問に淡々と答える聡実くん。 
「ぼくが悪かったんちゃう?」 
「部長のソプラノは、完璧ですよ?!」
高い声がうまく出ないツラさをひとりで抱えながら、トロフィーを取りに行く聡実くんは、三年間近く真面目に部活やって、しっかり部長として、責任感を持ってやってきたんだろうなと思う。 
でなければ、自分を責めたりしないだろう。
さっきまで中学生の透き通る合唱を聞いていたはずなのに、雷雨の中、急な18禁仕様に、またも震える。 
狂児、階段ののぼり方よ… 
そこの純真無垢な中学生男子、はよ逃げて!って気持ちになる。 
市民ホールの階段の間隔で、途中からのドンッ、ドンッ、ドンッて…あの勢いのまま、壁があったら、絶対壁ドンになるし、そのまま、押し倒されるのかと、真剣に心配した。
「カラオケ、行こ?」の、にやあ、って笑顔が、雷雨とともに普通にホラー。
逃げて、はよ逃げて!ダッシュで!! 
タイトルの入りかた、不穏からポップな感じの曲調、ネオンサインっぽいのも粋。 

カラオケ屋→店名が、天国か…天使と、天国か…。
部屋で、オールブラック→ワイシャツも黒に着替えてるとか、なんなん…男前か、そうか、知ってた。 
車に着替え、入れてんの?
何用?返り血用?
このシーン、もしも、狂児がトイレかなんかに着替えに行ってたんなら、聡実くん、その間に逃げれたんちゃう?と思ってたけど、タオルで髪の毛ガシガシ拭いてる狂児を、聡実くんがチラチラ見て、普通にビビってるから、ワイシャツだけ替えたんかな…え、聡実くんの目の前で?…うわ…うわぁ。 
座る位置、近っ。 
狂児のパーソナルスペースの距離感、完全にバグってる件。 
この、対・他人との物理的な距離感の描写は、893的な距離感としてみると、もう逃げられない距離感の詰め方でもある…威圧、脅し的な。 
だけど、ヒモテクニックとしてみると、あんな男前にナチュラルに初対面で、あの距離感されたら、そら、太刀打ちできんやろと思う、エグさ。 
まっさら、ピュアピュアッな中学生男子に対して、自然に、あの距離感とあの柔らかな態度で接する狂児、すげぇ…ってなる。 
なにげに、あんな座り方してくる男、彼氏彼女関係か、ホステスとその客くらいしか見たことない。
あんな距離感、そら、聡実くん、体を逃して、ちょっと斜めにもなるわ。 
ストローでズンズン、手でばしばし、一連のスキンシップ→狂児のその手の動きをチラチラ見る、聡実くんがビビっていて、小動物。
 「どこで笑えばいいですか?」
ビビりながらも、ちゃんとツッコむ、ローテンションな聡実くんがすき。
始終裏声→予想以上に気持ち悪くて、何回聞いても笑える。 
リュックに顔を埋める聡実くん、紅の出だし、予想外の高音に、びくっ!ってなるのも、かわいい。 
「紅だーーーー!!!!」 
さらに、びくっびくっ、てなるのも、毎度かわいい。 
得体の知れない、異様な雰囲気にのまれてしまい、びくつく聡実くんが、かわいそうだけど、かわいい。 
かわいそかわいい←聡実くんのためにある言葉だな、きっと。
でも、非常に真摯に、ひたむきに、真剣にこの歌に向かう姿勢、全身全霊を込めて歌っている狂児をみて、歌に対する人間性みたいなものを感じて、この人は思ったより大丈夫かも…ってなって、狂児が情念込めて歌う最中に、チャーハンを普通にオーダーし、普通に食す聡実くんが、したたかで強いなと、感心する。 
本気で好きになったら、絶対ダメな男。 
一般人は、関わってはいけない男。
外は快晴なのに、その男のまわりだけは、いつも薄暗い闇、閉塞感がある。 

♪戸惑いながら、覚悟している(影絵)
亀の傘さして、校門前で待ち伏せする狂児。
細身のスーツが、ようお似合いで。 
「ついてこんとって!」 
かわいらしい、キャンキャンした威嚇が、ほほえましい。 
きちんと「ありがとう」「ごめんな」「肘、ついたら、あかんで」って言える狂児は、普通にきちんと育てられたんやなと思う。
人間性は、至極まとも。 
合唱の基礎が書いてある冊子→狂児は、バイブルを手に入れた! 
ミナミ銀座→通学路に、ぬるっと、現れる狂児…こわすぎる。 
みかじめ料とかを回収に来て、たまたま、ほんとに、偶然、そこにいたんですよね…です、よね?(震) 
狂児、手ブラやけどな…
で、聡実くん発見して、めっちゃ笑顔+デカい声で、ほんとに嬉しそう、けど、ズンズン、ズンズン迫ってくる感じ、足の長さも相まって、あっちゅう間に追い詰められた感がすごい。
明るい昼間なのに、軽くホラー。
「ミラクルやな~。ここ、通学路やろ?通るかなー思てたら、ほんまに通ったわ」 
ここも、聡実くんと出会う前ならば、おおよそ「ガキが多い道やなー」くらいしか、思ってなさそう。 
で、聡実くんと出会って、道を通る子どもが聡実くんと同じくらいの子たちだと気付いて、その制服から、近くの学校が、聡実くんが通う中学だと認識して、偶然?会えることを期待して、あそこらへんに偶然?いたなら…いたなら…
「俺の才能ちゃうかな。聡実くんを見つける才能」 
この台詞が、狂児のストレートな感情から出たと思うと…震える。 
893的というか、ホラーというか、ストーカーというか…非常に、湿度と粘度を感じてしまうのは、いた仕方ないと思う、オタクは悪くない。 
あ、パンフに、狂児が聡実くんに「まとわりつくように」って書いてあったんで、公式的にも粘度を感じていい、と…まとわりつく…言い方…
「名前、なんで名前…」
そら、聡実くん、ぷるぷるするわ。 
バイブルを常に持ち歩く狂児。 
「聡実くんは、迂闊ですな」←にやにや。
歌の基本が書いてある冊子を、バイブルと宣う狂児…聡実くん→天使やから、聡実くんから貰った教典→バイブルか…こわいな、その思考が。
真面目にバイブルを読んで、その通りに真面目に歌おうとする狂児は、たしかに聡実くんの前では、愚直な感情を見せてる感じはする。 
音叉の話を、途中「んん?」ってなりながら、目線きょときょとしつつ、真面目に聞く狂児。 
そして、自分の背後で、情緒不安定にハイエナの兄貴の話をする狂児をスルーして、チャーハンを注文する聡実くん、つおい。
コンクールの銅賞という外部評価を、部長の責任感、変声期の自分のせいだと、丸ごと受け止めてしまう聡実くんは、真面目で良い子。 
淡々と受け入れるしかない、けれど、気持ちは、ずっと沈んだまま。 
「ハイエナの兄貴はあの時死んだんや。そん時に天使の歌声に出会ったんや。お告げやと思ったわ」 
天使の歌声、そう言ってくれる男に出会ったことは、救い、な感じもする。
紅→高い声→ソプラノ→天使→聡実くんを発見し、奇跡やと、捕まえた男。 
「あの歌は、カズコの思い出がつまっとんねん」 
その言い方、お姉ちゃんと違くても、ピュアな中学生男子やぞ、勘違いもするわ。 
車で帰り道、送ってもらう聡実くん、いつの間にか、ライン交換してはる… 
「家着いたらLINEしてな」 
「夜道ひとりで危ないやろ、心配やん。聡実くん、おやすみ」 
「よくできました」 
彼氏やん… 
完璧なる彼氏やん…

どうして「銅賞」なのか、それは愛が足りなかったから。 
愛とは、与えるもんらしい。 
「狂児も、カズコの瞳に乾杯したんかな」←気になるとこ、そこか、かわいいな。 
鮭の皮、笑った。 
あんなに、煌めいている鮭の皮を見ることは、もうないと思う。 
ぽっかーん、としてても、なんとなく、理解してしまう、聡実くん。 
このシーンを見た後、友達が「うちは、エビフライの尻尾だわ」と言っていて、愛のカタチとは、その家庭ごと、関係性ごとに、全く違うから、気づきにくいけど、確かに、その2人だけには、わかるもんなんだろうと、しみじみ思う。 

♪愛すること、それがどんなことだか、わかりかけてきた(心の瞳)
自分の代わりがいる、合唱コンクール。
歌いたくとも歌えない、そんな沈んだ気持ちのまま、黒ボディーな乗用車が、ずらーと停めてあるカラオケ屋へ。 
カラオケレッスン、予告なしだからか、カラオケ屋のロビーで、聡実くんを待ち構え、出迎える狂児。 
「時間、過ぎてましたか?」 
「いや、過ぎてへんよ。みんな、お待ちかねや」 
「みんな?」 
「そう、みんな」←ここの声、ちょっと、かたい感じがする。 
聡実くんと、2人っきりで出す声と、ちょっと違う。 
これが、素じゃないほうの狂児かなと、ふと思う。
カラオケ屋のロビーで、不思議そうな聡実くんのほうに歩いてきて、一歩近づく→じっ、見下ろす。 
ここ、3回見ても、狂児が聡実くんに一歩近づいた意味が、よくわからなくて、でも聡実くんの目の動きを見る限り、聡実くんのどこか、何かを触った感触があって、不思議だったのが、ビジュアルブック見て、解決した…
いや、でも、なんで、それ…触ったん? 
この出迎えの一連の動き、デートの待ち合わせ、では…ない? 
保護者感より、彼氏感を感じてしまうのは、しがないオタクだからか…。 
コワモテ893がいっぱいのカラオケルームで、小動物がさらにちっさくなってるの、かわいそかわいい。 
自分から狂児にくっついてて、怒鳴り声にビビりまくって、狂児の腕に、ひしっ!! 
両腕でしがみつくの、ほんとにかわいい。 
泣き笑いみたいな顔で「狂児さん… 帰りたい」って、ここの言い方、ちょっと泣きそうな感じが、かわいそすぎて、ほんとにかわいい。
狂児がカラオケルームに入って、すぐの「タバコ吸うな、言うたやろ」のところ。
聡実くんに対する気遣いも、まだ子どもやからというのと、合唱やってる喉に良くないからという、きちんと歌を習う先生への敬いみたいなものを感じて、好きだけど、始終かばって、見守ってる感じも、庇護者っぽくて良き。
狂児の背中に、すっぽり隠れられちゃう聡実くん、マジ小動物。 
ここの聡実くんの土下座シーン、胸がギュッとなる。 
こわかったよね、かわいそうに…って、なった後、追い討ちをかける小指よ。 
プリッと小指、いきがよすぎるんよ… 
一番最初、狂児が名刺を渡してくるところで、カラオケ屋のテーブルの上に、タバコとライターがきれいに揃えて置いてあって、この小指も、いやにきれいに置いてあるのを見た時、狂児、ちょっと几帳面なんかなって思った。 
「最後に…」で、狂児の名前の由来を聞く聡実くん、かわいい。 
「ひも…???」→聡実くんは、わからなくていい話か、ほほぅ。 
歯車が狂って、きちんとハマったところの、行き先は地獄。 
だから、天使に惹かれたのだろうか。
「聡実くんは、聡い果実やからな、大丈夫や」 
この男は、やっぱり893なんだなと、思わされる瞬間。

「怖いのは、もういややけど、狂児さんだけやったら、続けてもえぇよ…カラオケ行こ。」 
自分から歩み寄って、狂児の声質にあった曲を自ら調べてきた聡実くん。 
初めて、自分から近寄ってきた、身体的な距離も、精神的な距離も縮めてきた聡実くんが、かわいくて、かわいくて、いとしくて、しかたないって感じになる狂児。 
聡実くんが、曲の説明してるなか、じぃーーーーーっと、聡実くんの顔を見る狂児。 
「さぁとぉみくぅん(ハート)」 
名前を呼ぶ声、初めて語尾にハートマークの幻影を見た…すげぇな、狂児。 
「ありがとうなぁ、聡実くん(ハート)」 
ハートマーク乱舞の幸せな空間→そういや、天国やったな、あそこ。 

♪天国なんかに住んだりしない(影絵)
和田くん、映画を見る部にまで乗り込んできちゃうの、すごい。 
浮気を問い詰める、彼女か。 
和田くん、部長のこと、ほんと好きなんだなと思う。
後輩に、きちんと慕われてる聡実くんは、やっぱり良い先輩、部長だったけど、自分の成長期という壁にぶつかってしまい、ひどく揺らいでいる。 
それを何も言わず、受け入れてくれる、映画を見る部の同級生の子の存在も、逃げだけど、救い。 
あの二人の関係も、すごく好き。
部活の後輩のやらかし、原因は自分だから、お小遣いから立て替えようとした聡実くんは、ほんとにいいこ。 
宇宙人に捕獲されちゃうけどね。 
狂児の足音、全然しなくて、ここも、ちょっとホラーというか、商店街のアーケード入口にいる舎弟2人との距離を見ると、絶対に走ってきただろうに。 
宇宙人が「かわいいの、見つけてーん」って、聡実くんを指さして、ようやく存在に気付いたみたいな感じを醸す狂児の、ここの一連の温度が、すごく静謐としているというか、すごく凪いでる。 
聡実くんとカラオケしてる時の、人としての温度を感じる佇まいではない、たしかに異質で、異様な空気感。
暴力が、日常的に存在している感じ。
蛇っぽく、冷たい感触、ぬるりと獲物を飲み込んで、何処かにいなくなる感じ。
「なんや、この子犬ちゃんは」
じっと、見る目…蛇に睨まれたかのように、呆然と立ちすくむ聡実くん。
聡実くんの体をそっと押して、宇宙人から、さらに離らかす狂児。
宇宙人に掴まれて、ヨレヨレになった聡実くんの襟元、ちょいちょいっと触る→宇宙人「えぇやろ~」聡実くんに、手を伸ばそうとした瞬間、流れるようにカバンで一撃。 
「君たち、これ、ほかしといて。聡実くん、どうしたん、こんなとこで」 
一転した優しげな笑顔で、聡実くんの肩からズレたリュックの肩紐を直し、落ちてしまった財布を拾って、渡してあげる。 
「なんや、欲しいもん、あったん?買うたろか?どれ?」 
この流れの中に、893的な非常識と、それまで過ごしていた普通の日常が、平行線として存在していて、狂児の異質さを目の当たりにして、胃の下がギュッとなる。 
ここ、個人的には、狂児からしたら、日常として暴力をふるい、それをなんとも思わない893的な世界線と、以前ならば、それを隔つであろう世界に住んでいた聡実くんが交じりあっていて、そこから、もう逃れられない怖さを感じる。
予備動作なし、感情起伏なしでの、突然の暴力に、正直引いた気持ちが少しあって、聡実くんも同じかと思っていたら、紅の大熱唱シーンの回想で、この子、全然引いてなかったわ~〜って、なった。 
あれ、完全にピンチを助けてくれたヒーローに向ける、ヒロイン目線の回想…恋した瞬間やで…
あと、初めて「買うたろか?」って台詞を普通に聞いたような心持ちになった…なんでも買うたるみたいな感触で、受け止めてしまったけど…ほんとに言うんだ、そんな援交みたいなって、震えた。 
異質な怖さを感じる感情とは別に、あの宇宙人への一撃は、動きとして、本当に素晴らしく美しく、惚れ惚れする。 

ビルの屋上、ビデオデッキ、普通に買ってもらっていて、聡実くん、ほんと強いなー!
からの、は????狂児、足、長っ!って、情緒がぐらんぐらんになる。
いや、薄々、気付いてはいたけど、引きの絵だと、際立つモデル体型…恐ろしい。
「ソプラノが綺麗に出んから、もうダメや」 「綺麗なもんしかダメなんやったら、この街ごと全滅や」 
誰にも言わなかった弱音を、素直に吐き出せるくらい、聡実くんのなかで、どんどん存在を大きくしていく狂児。 
そして、ずっと悩んでいた憂鬱を真っ青な空みたいに、軽く拭い去って、助けが欲しい時に、きちんと助けてくれた狂児に対して、忌避感がわかないなら、さらに好感度が上がるのは、必然か。

カラオケルームで、狂児が頼む「チャーハン、2つ」とか。 
音叉を虎柄にしてる前で、紅の英語の歌詞部分を和訳してあげてる聡実くんとか。
「狂児さんが、後悔しない選曲で」とか。
お父さんとお母さんに御守りをもらって「次に会ったら、げんきをあげます」のラインとか、文章がめちゃくちゃかわいくて、びっくりした。 
和田くんの「やらしっ!」の言い方、だいすき。 
狂児のラインの既読の早さよ… 聡実くん、怒ってるってわかってるのに、ラインがんがん送ってくるのも、なんか、ウザ絡みがすごくて、狂児やなーと思う。 
「ごめんな」 
「聡実くんいつも丁寧な敬語やのにキレるとフリーザみたいやな」 
「このアホみたいなお守りなんですか?」
そして、引き際さえ、潔い。
ほんま、たちの悪い男に、引っかかってもうたな、聡実くん。 

「ぼくのソプラノが悪かったんちゃう?」を「天使の歌声」って言ってくれるし、自分を害する宇宙人からは守ってくれるし、ビデオデッキ買ってくれるし、今のどうにもやりきれない自分を、合唱から逃げている自分を、きちんと今の自分を見て、その上で必要としてくれて、認めて、受け入れてくれている。

そら、今の自分が持ってる愛を、声を、歌を全て、捧げたくもなるだろうよ。

歌は、愛。 

愛とは、与えるもん。

狂児への鎮魂歌。 

紅という、歌を捧げる。 

狂児へと愛を与える、天使の歌声を持った、男の子。 

歌ってる聡実くんを、ちゃんと見て、呆然としている狂児。
ちょっと、嬉しそうかな?
こっちは、生きとるやんけ?!?!ってなるけども。
亡霊を見るような、聡実くんの顔と体をつつく狂児。 
これも初見時、つつくとこ、ちょっと狙いがズレたのかと…普通、ほっぺた、じゃないのかと。 
でも、狂児は、聡実くんの唇の左下辺り?と左の鎖骨あたりをつついてる。 
宇宙人のくだりでもあったけど、その軽く、おさわりする感じ……なんなん… 
しかも、ぐっ、って、わざわざ距離を一歩詰めて、じっと、見つめて。 
「これが守ってくれたわ。聡実くん置いて死なれへんし」←そうゆうとこやぞ…
ヒーロー的に見てた、愛を捧げた男に、無意識で全力の彼氏ムーブかまされる、中学生男子… 確実に、ギルティ。
狂児は、いつか、絶対、横っ腹、女に刺されると思う。

「あんたが去ったとき、オレは振り返られへんかった。ハートが、めちゃ痛い。追いかけ続けてしまいそうで、怖い。あんたのマボロシ見てもうて。真実見つけに真っ暗な街を走ったで。記憶の中のあんたは、オレの心の中で光ってんで。ピカピカや」

宇宙人、あれ、死んでたんかな… 
(傷害致死罪→有期懲役3年以上…)
だからこその余白、音信不通の月日。
刑務所入って出たら、ミナミ銀座も、ホテルに様変わり。 
電話を持つ右腕に「聡実」… 
うん、屋上でね、そんな話をね、好きなものを嫌いって、まんじゅうこわい、落語ネタだったけど、聡実くん、わかるんかな…
「いや〜、久しぶりやなぁ~、ん?今度は負けられへんからな。聡実くん、カラオケ行こ?」 
めちゃくちゃ、明るく弾んだ声。 
背中越しだけど、狂児の笑顔を感じる。
未来は、明るいんだなと思う。
映画には、映画版の2人の、そのあとがあるのだと、きちんと思える終わり方。 
そのあとの2人も、幸せだといい。 
ハッピーエンドの多幸感は、湿度と粘度をもって、いまだ、心を揺さぶり続ける。


ちなみに、1回目を見た次の日、綾野剛扮する成田狂児があまりに若く感じたので、原作の狂児の年齢を確認したら、聡実くんとふたまわり違うことに愕然とした…いや、普通に…事案やん。
狂児のお誕生日、5月5日やったな…縁起がよろしいようで。 
狂児、末っ子やし、年の離れた弟とか、子犬ちゃん呼びからも愛玩動物とか、なんか、そういう庇護欲というか、自分と違ってキラキラしててキレイな、大事に大事にして、まるっと守ってやりたいみたいな感情で、そこに性の気配はしないんだけど…なんか、ねっとりさを感じてしまう。 
そこが、綾野剛扮する成田狂児の魅力なのかもしれまへんなぁ…(遠い目)