見出し画像

ヒトとして終わってる財前にすら納得の信念があるなら、何者でもない自分こそもっと軸を持たねばと思った話・ドラマ「白い巨塔」の感想文

未だに右みて左みて人から嫌われることにおびえながらアタフタした人生を歩んでいるのではないかと思うと「えぇかげんにせぇよ。40歳やで」と自分自身に言いたくなることがある。そんな私からしたら驚愕の人物がおった。『白い巨塔』の主人公・財前教授とその他の皆さん。こんなに嫌われることを意にも介さず、我が道、進む人々がおるとは…。

ご紹介するのはフジテレビ開局45周年記念ドラマ『白い巨塔』。今から20年前(え?!マジで?!時の流れ早っ)の2003年秋から半年間放送された唐沢寿明主演の医療ドラマだ。原作は山崎豊子の同名小説。親世代の『白い巨塔』と言えば、田宮二郎という俳優さんが主演した名作があるそうで、主演の唐沢寿明は原作者の山崎豊子からも『あなた、いい度胸しているわね』ってな感じのプレッシャーをかけられたんだとか…。しかし結果は平均視聴率23.9%、最終回は30%超。平成中期の最大ヒット作になった。

あらすじをご紹介。舞台は浪速大学医学部。第一外科助教授の財前五郎(唐沢寿明)は現教授・東(石坂浩二)退官による次期教授の座を狙っていた。名実ともに兼ね備える財前は自信満々だったが、その傲慢さと悪目立ちが気に食わない東が対立候補を立てたことで、医学部全体を巻き込んだ教授選をめぐる熾烈な戦いが始まる。そんな折、財前が執刀した食道がん患者の佐々木庸一が死亡。財前の誤診を疑った妻のよし江に民事訴訟を起こされる。

で、どいつもこいつも腹黒くてねちっこくて、絶対友達になりたくないタイプばかり。医療訴訟を起こすよし江側の社会派弁護士(上川隆也)ですら、最初は金欲しさに依頼を受けて、あとでテキトーに取り下げようとしよる。(のちに改心するのだけど…)唯一の『義』である第一内科・助教授の里見脩二(江口洋介)は、己の信念の元、常に正しいことをし続けるが、彼ら(大学医学部)的な社会的地位は落ちるところまで落ちてしまう。

特に主役の財前は、野心家で目立ちたがり屋でプライドが高く、損得で人を判断するトンデモーな人物。裁判で不利になると判断すれば、自分に心酔している若き研修医を切り捨てて、罪を被せるほどのクズっぷりだ。
じゃあ、対局する東教授に正義はあるのかというと、こっちはこっちでネチネチとした嫉妬心に溢れてみっともないったりゃありゃしない。のである。のであるが、

この財前にも、東にも、教授という名誉にしがみ付いてギャーギャーわめくばかりの東教授夫人(高畑淳子)ですら惹きつけてやまない魅力がある。それは彼らの生き様に信念が貫かれていることだ。

「僕は間違っていたのか?確かに僕は里見のようには患者に向き合ってこなかったかもしれない。だが常に真剣にやってきた。真剣にオペをやってきたし、真剣に偉くなりたいと思った。目指すなら一番上を目指したし、創るなら最高の病院を創りたいと思った。多少手段を選ばないところはあったが、何かを得るためなら仕方がない。それが、そんなに責められることなのか」

フジテレビ『白い巨塔』最終話

苦境に立たされた財前のセリフ。人として終わってでも、彼が貫きたいと考えていた信念だ。

彼らの信念は見えにくい。若き日に描いていた理想を叶えるためには地位や権力が必要なことを知り、やがてそれが全てとなってしまったのかもしれない。もともとクソな人なのかもしれない。いろんな理由で信念もクソもないやろうと思える人々が、最終回では各々果たすべき生き様を魅せる。自分のことしか考えてない奴らの自分のことしか考えない理由が分かる。

さてこれはドラマだし、現実的にこんなに激しく生きていたら身が持たんよね。実際にはそんな殺伐とした人間関係ばかりじゃないしね。人は温かい一面があることも知っているよ。

だけど、もう40歳。右みて左みてアタフタすんのはやめたい。財前教授みたいな能力もオペ技術も、医学界への理想もないけど、何もないからこそ自分の生き方くらいは自分軸をしっかり持った方が逆に生きやすい気がしてくる。責任を持つのが怖い気もするけど、決めてしまえば意外に行けるもんな気もする。
自分軸を持つってことはその他を捨てるってこと。時々他人軸に触れたら孤独に負けそうになるけど、捨てんと次のステージには行けんし、その先で出会うだろう仲間にも出会えない。アタフタして他人軸で生きとったら、その先で出会うだろう仲間には認めてもらえない。折り返し地点。もう、人生の試用期間はとっくに終わってる。これまでの知見をもとに実践編へと足を踏み出していこう。と奮い立たせている。


この記事が参加している募集

#テレビドラマ感想文

21,638件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?