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西 加奈子さんの『くもをさがす』を読んでみた

小説家の西 加奈子さんがカナダでがんの告知を受けて、がんの治療を受けた。
そしてがんに罹患しながらも、がんを恨むことなく、「どんな自分も愛する」という西 加奈子さんの強さは心に響いた。
「もしがんになってしまったのなら、それはもう、そういうことだったのだ。誰にも起こる事が、たまたま自分に起こったのだ。」(本文より)
この一文が私の心を確実に軽くしたし、自分の身に起きている現実を受け入れる勇気をくれたようにも思う。
私は、この本を読んで改めて「人生はシンプル」だということに気づかされた。
普段の生活の中では、様々な情報が目や耳から入ってきて無意識に余計な事を考えてしまいがちだと思う。私の場合は、そうしている内に「人生」というものが、とても複雑で難解なように思えてしまう。
しかし、この本を読んで「生きる」ってもっとシンプルで自由で良いのではないかと思えることが出来た。
そしてもう一つ、考えさせられた事があった。
私はどんな時に「自分」の存在を確かめる事が出来るだろうか、という事だ。
私はつい最近まで、思い通りにならない事実を受け入れられず、目を逸らして生活していた。でもそうしていると、どこか「生きている」実感が味わえずにいた。朝起きて仕事に行くのだが、今働いているのは「自分」なのだろうか、とあいまいな感覚になるのだった。
しかし、そんな状況でも自分の「生」を味わえる瞬間はあった事に気づいた。
月に2回程参加するエアロビのレッスンでの時だ。
どんどん乱れていく自分の息使い、上半身の動きに連動して上手いこと動いていく下半身、背中をつたう汗、その一瞬に集中してクリアになっている頭。
そしてこの体を動かしているのは紛れもなく私で、この瞬間じんじんと痛む足は、誰のものでもない私のものだと、急に「自分」の存在を強く感じたのだ。

この本はおそらく、読む時の心の状態によって新しい気づきをくれるように思う。そして「どんな自分も愛そう」って優しく抱きしめてくれる様に思う。

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