書道の段位や師範免状のトリセツとウラ話

こんにちは。書道は教え、お歌は教わりの慈岳です。

習い事にはよくそのコミュニティ特有の階級が存在します。試験が必要なもの、一定経験を積めば申請資格を得られるものなど様々で、先生クラスの階級になるとある程度お金が掛かることが一般的です。

今回は習い事の中で最も長く続けている『書道』について、階級にまつわる考えやお話を。なお、段位や級位、あるいは師範などの免状類もここでは『階級』に統一して呼ぶことにしますね。


●階級を上げるか上げないか

まず、特定団体に所属の先生を目指す人は、団体に入って階級をどんどん上げた方が良いです。なぜなら『○○会』の看板を使って教室を持つ場合には、○○会の指定する『お免状』が必要となることが多いから。

いっぽう、ずっと生徒として続けるだけなら、階級が必要な場面は特に無いので、団体に入らないままで行くことも可能です。ひとつ注意点は、団体への入会を前提とする教室も多いということ。無所属で行くならそうした生徒を受け入れる先生を探しましょう。

無所属でもし実力を試したくなれば、公募書展に出せばOKです。公募書展は階級関係なく出品できますから、お財布に余裕があるときにでも参加してみましょう。

そもそも団体に所属しなければ、級や段は付きません。各団体に入会して『競書誌』と呼ばれるホンを購読し、課題を出して、審査してもらうことで階級が決定しますのでね。ごく稀に、その教室独自に『道場』のようなローカル階級を設ける教室もあります。

また、団体の看板やブランドに頼らず独力で先生をする場合も、書道以外の場で人にモノを教えた経験や、正味の書道の実力があれば、無理に団体へ所属して段位やお免状を取らなくて大丈夫です。詳細は後述。

●階級ナシの書道教室

書道団体でどれだけ高い階級になろうとも、即ちスゴイ!とはなりません。A団体の師範レベルのことをB団体では5級から習う。B団体の初段ならA団体の人を師範まで育てられる。そんな極端なことが現実に存在します。

慈岳がプロとなる前に習っていた教室は、基本的に階級ナシ。書道は正味の字の良さが大事なので、階級欲しさから自分を殺し、競書におもねる癖が付かないようにという配慮でのことでした。

階級が欲しい生徒は履歴書に書ける『毛筆・硬筆書写技能検定』に取り組むか、自分の研究用として先生が属している団体に入るかのどちらかで対応してくれましたが、半分くらいの生徒は階級を取らないままスキルを磨いていました。

●階級が活きる場面と逆効果になる場面

書道の階級が活きる場面は主に商売面。『集客』です。悪い言い方をするなら『箔付け』ですね。手書き文字難民からすれば書道の師範とか八段とかスゴイので、何もないよりお客さんは集まりやすい。町のお習字教室や個人~自営業者向けの毛筆筆耕等、素人さん相手に書道で商売をするなら、高い階級は有利に働きます。

いっぽう、階級を言うと逆効果になるのは、プロやマニア、法人などの組織を相手に仕事をするときです。彼等のメガネにかなう実力が伴っていればもちろん良いのですが、通信講座など促成教育を修了しただけの人だとポートフォリオで未熟さがバレてしまい、「よくある量産師範か……」と断られてしまいます。

●書道の階級と履歴書

書道関係で『資格欄』に書けるのは、毛筆・硬筆書写技能検定だけだということは皆さんご存知ですね。級位目安は、一般職種なら3級~、字を書く職種なら2級~。準2級以下は一般、2級以上は専門家と捉えると良いでしょう。

その他の団体ごとに発行される階級は、『趣味・特技欄』で触れる程度で構いません。書くときは『書道五段』ではなく、『書道:○○会硬筆部五段』って感じでしょうか。書道にもいろいろありますからね。

なお、履歴書を手書きする場合、階級はむしろ書かないほうが良いかも知れません。字の巧拙は履歴書を見れば分かることですし、面接官が興味を持てば「書道されてました?」と話を振ってくれます。

●書道の階級とオトナの事情

「この人は1年昇段なしだな。正直同格の中ではまだ下手。でもメゲずに提出してるし、(辞められたら困るから)そろそろ上げとくか」
「今年は収益が少ないなぁ。準師範試験の審査基準ちょっとユルくして、師範試験(←試験料1.5倍)に進んでもらおう。あ、通信講座の広告打って~」
「おっ編入申請が来たぞ。なかなかの腕前だ。(初段からは昇段試験料取れるから)1級編入で!」

……引きました?w

私があまり書道の階級にこだわらないのは、こんなオトナの事情があることも一因です。もちろん信用問題上、純粋な技能を審査するのが最優先ですし、マジメな団体ほどその傾向が強いですが、多かれ少なかれ会員維持やお金が理由で上下することはあるんですよね。

●子供のころに取った段位はどうよ?

結論から言います。子供の段位は『がんばったで賞』です。毎回しっかりお稽古に通い、毎月課題を提出し、何年も続けて頑張った。そのご褒美としての性質が強いもので、デカデカと元気よく書いていればそのうち階級が上がるやつ。

ある団体では、小学低級(1~3年生)で開始したとして、小学高級(5~6年生)へ編入→中学部へ編入(1~3年生)→高等部へ編入(1~3年生)→一般部へ編入(大学・社会人)とステップアップします。

上位部へ編入する場合、原則として現在の階級から下がります。一例として高等部→一般部へ編入の際は、高等部で取った階級から最大5階級落ちでの開始。

高校生以降に有段者となったなら、一般部の現役中級位~初段くらいの実力はあると思います。普通の大人よりは間違いなく『書ける人』なので、新卒さんや若いうちの転職なら自己PRとして使ってもよし!

ではではこんなところで〆。


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