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小説【夢の華】①


優斗『~思ったより悪い世界じゃない~♩♩』

また、君に会いたい。

そう、リアルな夢で見た・・泣き虫な君。

ねぇ、君は本当にいるのかなぁ?


なんて考えてると、

スタッフが俺に届いた…

プレゼントを持って

楽屋に入ってくる。

俺はありがたい事に歌を唄う仕事をしてる。

スタッフ『はい、今月分のプレゼント(^_^)v』

ありがたいな、

ファンからの贈り物

大切にしないと。

そうおもいながら、荷物を受け取る。

仕事が終わり、

自宅に帰るとひとつひとつに目を通していく。

すると封を切られてない手紙がある。


基本、個人情報が書かれてたり

写真はスタッフにはぶかれてたり、

一応、封を切って中身を確認して

俺に回ってくるから珍しかった。

封をあけ手紙を読みはじめた。

“はじめまして、優斗さん。

私は、姫って言います。

いっつも優斗さんに元気とか勇気をもらって毎日頑張ってるよ。

私ね…

ううん、やっぱり何でもない。

優斗さんの笑顔に癒されて

心が暖かくなるんだよ。
出来たら、優斗さんに『頑張れ』って言われたいよ。

いつかは、言われる日がくるかな~?
あっ、あとね最近、毎日夢で優斗さんを見るの。

何も言わずに泣いてる私に優斗さんは背中をさすりながら涙を拭ってくれる夢なんだよ。

優斗さんの手の温もりが暖かくて優しくてリアルな感じだったから幸せな気持ちで目覚めるの。

だから、ありがとうを言いたくてお手紙書きました。”


便箋に3ページにも渡り書かれた気持ちになんだか嬉しくなった。

俺と似たような夢を見てるんだな。
不思議だよなぁ…

3ページ目最後に何か書いて消しゴムで消されてる。

気になって、鉛筆で擦り消された文字を浮き出させる。

彼女のメアドらしきのが出てきた…。

まあ、連絡する事は出来ないからと

読み終えた手紙を封筒にいれようとしたら…

優斗 『ん?』

写真が入って… る

俺は、写真に写る人が・・・

いつも夢で見た人だとすぐに気付いた。


優斗 『まっ、まさか?!』

何度も見返しても、間違いなかった。

夢で見た・・・泣き虫な君だった。

思わず、スマホを取る。

“いや、今いきなりメールしてどうすんだ?”

深呼吸をして落ち着かせて。



“今日は寝よう”




ベッドに入り眠りにつく。

。・゜゜☆゜゜・。。・★゜゜・。 

優斗 『また、同じ夢?』

暗闇を抜けてどこかの部屋にたどりつく。

泣き虫の君は、また泣いてる。

俺は、勇気を出して声をかける。

優斗 『ねえ、なんで泣いてるの?
君の笑顔が見たいから俺をまっすぐみてほしいな』

肩を叩きながら声をかけると… 

彼女は、首を横にふり

姫 『優斗さん、ごめんね。
私には笑顔になる資格ないの・・・』

そこで目が覚める、いつもなら。

今日は、違う。

姫 『でも、優斗さんに逢えてこんな私でも笑っていいんだって教えてくれた気がする。
優斗さん、ありがとう』

少し微笑んだように見えた

君を俺は、背中から抱き締めた。 

(アラーム音)

“ヤベェ”

飛び起き、時間を見る。

午前10時。

今日は、歌番組の収録日

準備して、テレビ局に向かう。

優斗『おはようございます』

ひと通りの挨拶をすませて

コンコン!

優斗『はい』

ドアが開く 

緑愛 『あの、優斗さん!
助けて下さい!

姫を…助けて』

見知らない女性は、

泣きながら入ってきてすがり付くように手を握る。

そして、助けてと叫ぶ。 

優斗 『大丈夫?

誰を助けるの?

落ち着いて。』

緑愛 『姫をヒック…』

姫って夢で見た泣き虫の君…?

緑愛 『いきなり、すいません。。』

落ち着きを取り戻した彼女は、まだ少し震えてる。

どこかで見覚えある。

優斗 『少しは落ち着いたかな?
ゆっくり話を聞きいてあげたいんだけど、これから収録もある・・からな。』


緑愛 『すいません、やっぱり優斗さんを巻き込むのは違いますよね…

帰ります。』


すっと立ち上がりドアノブに手をかける。

思い出した。

あの写真に一緒に写ってたってことは。

姫ちゃんの知り合いなのか。

だったらよけいに俺は、

このまま見てみぬフリできねぇし…

そんな事をしたら後悔する気がして

呼び止める。

優斗『ねぇ!君の名前教えて?』


緑愛 『緑愛(ゆか)です…』

優斗 『緑愛ちゃんね。

俺たち、友達にならない?

こんな風に出会ったりして

姫ちゃんって子を助けられるヒントになるかわからないけど

夢で見た風景とかいろいろ気になるし、

偶然が重なったってだけじゃ説明出来ない気がするから』

緑愛 『…?』

優斗 『とにかく、今から俺らは友達ってことで』

半ば強引に友達になったかも。 

収録終わりにまた連絡すると言って緑愛ちゃんと携帯番号を交換し 

俺は収録に向かった。 




‐3時間後‐ 

優斗 『お疲れ様~♪』

収録が終わって、合流する為に急いで支度をする。 

緑愛ちゃんが助けをもとめてる姫ちゃんが

もし、夢の姫ちゃんだったら…


やっぱり俺は助けたい。

人、一人を守ったり幸せに出来ないで…

表にたって歌なんか歌えない。


って会いたいだけの言い訳にしかきこえないよな。


テレビ局の近くのカフェで
待ち合わせ。

自然に急ぎ足になる。

優斗 『おっ、いたいた!』

緑愛 『あ、お疲れさま』

俺に気付き会釈する。

隣に誰かいる。 

似てる、夢で見た泣き虫の君。

そう、ファンレターで見た笑顔の君。

目が離せない・・・

ゆっくり…席に近づく。

少し俯き、緑愛ちゃんの隣でじっと座わる君をみて確信する。

やっぱり、夢で見た君だと

俺の直感は間違ってなかった。 

緑愛 『優斗さん、この子が“姫”です。

・・・

姫、ほら、優斗さんだよ?』

優斗 『姫ちゃん、よろしくね。

あ、お手紙もありがとう、ちゃんと最後まで読んだよ!』

嬉しくて、声が大きくなる。


姫ちゃんは、ビクッとして頭を抱える。 

姫 『ごめんなさい。ごめんなさい。』

突然の謝罪に

俺は、ただ…立ち尽くすしか出来なかった。 


姫 『・・ごめん、緑愛。やっぱり帰る…』

走ってお店を出る

緑愛 『ちょっと、姫!』

緑愛ちゃんも俺も追いかける。


お店をでて辺りをみるけど…

もう姫ちゃんの姿はない。



緑愛 『優斗さん、ごめんなさい。巻き込んでしまって・・・』


申し訳ないって顔で見る緑愛ちゃんに俺は…

優斗 『いいよ。

とりあえず、事情聞かせて?』


二人でカフェに戻る。

注文して席に着くと経緯を話し出す。


緑愛 『姫と私は、2007年に共通の友達が引き合わせてくて…

すぐに意気投合してお互いに親友って呼べるまでになったんです。

その頃から姫にはお付き合いしてる人がいてとってもラブラブで羨ましく見えるぐらいだったあの頃は。』 

優斗 『・・・』


緑愛ちゃんの表情がだんだんと暗くなる。

緑愛 『2008年になって…優斗さんがテレビで注目されるようになって、

姫も私もすぐにファンになり。

特に姫は、ファンって感覚よりは男性としても魅力を感じてる感じでした。

それから

2009年、姫は彼氏と同棲をする事になり。

その頃から様子がおかしくなっていって、

ご飯誘ってもなんだかんだで断るし…

家に行くのもダメって言われるしで。

初めのうちは、新婚生活の真似事で

邪魔されたくないのかと思ってたんです…
でも、1年たっても変わらない。

メールも電話もしたがらなくていって、いよいよヤバさを感じて。

気になって…突撃で家にいったら、、、、、』


涙ぐみ、言葉を詰まらせる。

優斗 『ゆっくり、深呼吸して~』



緑愛 『ありがとうございます、落ち着きました。

えっ、、と、どこまで話しましたっけ?』


優斗 『突撃で家に行ったんだってとこ。』

緑愛 『そうでしたね。

インターホンならしてドアが開くと…

髪ボサボサで

顔や身体中にアザが出来てて

一瞬、誰か解らないぐらいでした。


姫もびっくりした顔で立ち尽くしてました。

私は、状況をすぐに理解して姫を抱きしめたんです。

姫は、泣きじゃくって

‘なかなか連絡出来なくてごめんなさい、緑愛。。。’

それしか言葉を発しないから。』

優斗 『彼から、、

DV受けてたんだ、ずっと…』

緑愛 『はい、、

DVだけならまだ私だけでもなんとか助けられたはずだったんですけど。。』

優斗 『ん・・・?』

緑愛 『洗脳、

マインドコントロールされてて、

殴ったり蹴ったりするのは


‘愛してるから’


周りと接触させないのは


‘姫を独り占めしたいから’


とか甘い言葉を精神的に追い込んだ後に言ったりして


‘姫を女として受け入れるの、俺しかいないし、俺を男として受け入れられるのは姫しかいない。だから、どこにも行かないでくれ’


そんな風にゆっくりゆっくりコントロールしていって

今じゃすっかり、あいつの思い通り、周りは敵ってなってしまって。

ようやく私は、敵ではないと理解してもらえたんです。』



優斗『そんなの間違ってる!

そんなのは…

愛じゃね~し!!』


悔し涙が俺の目から溢れてくる。 

緑愛 『姫の為に泣いてくれてありがとうございます。

こんな状況をなんとかしたくて、

私・・・あいつに取り入って、

身体まで委ねたんです…


ちょっとずっと姫を外の世界に戻したい。

その一心で。。

優斗さんの話や歌を聞くと

一瞬だけ昔の笑顔になって

‘やっぱりいいね’って

…でも、すぐに強張った表情になってしまいます。


半年後には姫、あいつと結婚してしまう!

どうしたらいいかわからなくて・・・・・

姫の意識を変えられるのは、

優斗さんしかいないのかもって

思って、今日、あんな風に楽屋まで押しかけて来ました。』


優斗 『まだ、俺を忘れてないんだ!!

良かったぁーー

事情はすっげぇわかったし…

俺も姫ちゃんと緑愛ちゃんを助けたいから

こっちからお願い、協力させて下さい!』


俺も緑愛ちゃんもお互いに深々と頭をさげた。

やっぱり、ほっとけねぇよ。

なぜだろう、俺は使命感に似たものを感じた。


あれから1ヶ月たった。

俺はずっと…

姫ちゃんが笑顔になるにはどうすればいいか考えてる。

緑愛ちゃんともこまめに連絡をとって状況聞いたりしながら。 


そして、あれから夢で姫ちゃんを見なくなった。


君は今大丈夫だよな…? 

少し不安になる…。

おい、しっかりしろ俺!

お前が弱気でどうするんだ。

頬を2回叩き気合いを入れる。


冬弥 『兄ちゃん、聞いてる?』

優斗 『ごめん、冬弥。

聞いてたよ!』

冬弥 『ホント?怪しい~』


そうだよ、今は弟の冬弥と飯食ってたんだ。


ん?


待てよ、その手があった!

最近、結婚した弟の親友の・・智夫婦に会わせたら少し意識変わってくれるかもしれない。

そー考えたら行動しないと落ち着かない。

優斗 『冬弥、次の休みいつかわかってる?』

冬弥 『急に?わかるけど、なんで?』

優斗 『じゃ、智夫婦にも連絡して欲しいんだけど、向こうの休みわかったら連絡して』

冬弥 『智夫婦も?
マジで、何があるんだよ?』

不思議そうに訪ねる。

優斗 『実はな…』

冬弥に全て話して理解するまで計画を話した。 

何となく理解した冬弥は

すぐに智夫婦に連絡をとってくれた。

俺もマネージャーと緑愛ちゃんに連絡をする。

姫ちゃんを笑顔にしよう計画の決行は二週間後。

よぉし!希望が見えてきたぞ!


冬弥と別れ家に向かう途中。


公園のブランコに乗り

星空を見上げて祈る・・・



神様、もし本当に実在して…俺達を空の上から見てるなら

どうか、姫ちゃんを笑顔にしたいから力を俺に貸して下さい!


スマホが光る。



メールがなり開くと 

“緑愛”

《姫に確認したら、例の日は外出していいそうです》

スクロールするとまだ続きの文が 


《一応、あいつにも私から確認したら、例の日から二泊三日で出張に行くので見張りを頼まれました。

私の家に泊まる許可までくれたんです。
これってチャンスですよね?!》

そうだよ!
チャンスは奇跡を起こせる前触れだと

目を閉じて思う。


神様、ありがとう。


緑愛ちゃんにメールを返信して

家へといそぐ、

でも、気が付くとスキップしてる自分がいる。


部屋に入るとベッドに倒れ込みそのまま眠りにつく。



‐決行の日‐






俺は、待ち合わせ場所に30分前に着いていた。

時計とにらめっこしてると… 


緑愛 『おまたせです』

顔をあげて前を向く。


笑顔で手をふる緑愛ちゃんのそばに少しうつむく姫ちゃんがいた。


優斗 『久しぶり♪』

何気ない会話をしながら、
新婚夫婦の家に向かう。


‐30分後‐


冬弥『兄ちゃん(^o^)/~~』


新婚夫婦の家に着きインターホンをならすと


同時に冬弥も合流。


優斗 『おう、冬弥!』

ガチャ(ドアが開く)


智・美月『いらっしゃ~い!』

優斗 『久々~』

智 『久しぶりです!』

優斗『元気だったか~?』

智『げん…』

美月 『はい!立ち話になる前に中入ってください!』


俺たちは、早々に中に入り広々したリビングに通され…シックなソファーに座る。


緑愛 『自己紹介します。

私は、緑愛って言います。

で…こっちが親友の・・・・』

姫 『…姫です』

美月 『姫ちゃんに緑愛ちゃんだね(^^)
よろしくね♪』

緑愛 『よろしくお願いします!』

冬弥 『俺は優斗の弟の冬弥って言います!
こっちは俺の親友の智。
んで、こちらが、智の奥さんの美月さん。』

優斗 『みんな一応優しいから大丈夫だよ』

智 『一応ってひどくないっすか(笑)』

なんて冗談言いながら、食事会という名の姫ちゃんを笑顔にしようの会は開かれた。


‐3時間後‐


姫ちゃん、落ち着かない様子だな~。

スマホばかりを気にしてる。 


緑愛 『美月さん、とっても料理うまいですね♪

スッゴク美味しくいただきました(^^)
ありがとうございました!』

美月 『うまくないよ、まだまだ勉強中☆
それに敬語はやめようよ♪』



(姫の携帯に着信)





姫 『ちょっと…失礼します。』


険しい顔でリビングを出て行く。







姫 『ちがっ!信じて!』


突然、叫ぶ声に楽しい空気が止まる。 

電話が終わり、慌ててリビングに戻ってくる姫ちゃん…

姫 『きょ、今日はありがとうございました、私達、そろそろ・・緑愛…急いで帰ろう。』



緑愛 『えっ?まだ早くない?』


優斗 『そうだよ~

夜はこれ・・』 

姫 『もう、遅い…』


美月 『私達に遠慮してるなら気にしないで♪

いつまでもいてくれてかまわないよ(^_^)v』


姫 『緑愛…帰ろう。』


様子がおかしい。




---続く---

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