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小説【夢の華】②

表情が暗く、何かに怯えてる。

冬弥 『どうしたんですー?』

緑愛 『そうだよ、今日はパッとはじけようよー!』

姫 『・・・・

ダメ!!!

もう、帰らないと橙士が怒ってしまう…

さっき、電話でも

“俺をがっかりさせないでくれよ、姫”って言われたし。

今ままでだって私がいけない事をしたのに許してくれた…

嫌われると私、生きていけない。

だっ、だからお願い、帰ろう、緑愛。。

また、橙士の手や足をまた痛くさせてしまう前に帰りたいの!!!!』


泣きじゃくる姫ちゃん。


もう、止めてくれ。

気づいてほしい。

そんなのは、愛なんかじゃないよ。

考える前に俺は、姫ちゃんを抱き締めてた。 

姫 『やめてっ!!
何ですか?!

いきなり…

離して下さい!!』

優斗 『・・』

姫ちゃんは、もがき逃げようとする…だからギュッと力を入れる。

姫 『ぃたい…優斗さん、痛いです‥』

俺の瞳から涙が1つ流れる。

優斗 『痛いよね、ずっと痛かったよね。』

姫『…』

泣き出した、
姫ちゃんを俺はゆっくり抱き締めた腕を緩め

ソファーに座らせる。

優斗『ねぇ、姫ちゃん…。

ここに集まってるみんな君に笑って欲しいって思ってるよ。

特に緑愛ちゃんは、出会った頃の元気で明るくて素敵な姫ちゃんに戻って欲しいはずだよ。』

嗚咽を吐きながら…

涙を流す姫ちゃんに

そっと緑愛ちゃんが寄り添いながら本音を話始めた。 

緑愛 『今の姫は、私が大好きだった姫じゃない。。

橙士の顔色ばかりを気にして…

殴られたりするのが愛情って。

間違ってるんだよ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ひめ、、』

息を詰まらせて泣き出した、

緑愛ちゃんに美月が背中を擦りながら

美月『姫ちゃん、私ね。

愛を形にするとしたら…


笑うことだと思うの。

どんなに悲しくて苦しくても

お互いを信じ合える2人なら

笑顔になれるんだと思う。

相手を殴ったり

責めたり支配して

束縛するのは、

間違ってるの。

そんなの小さな子供でもわかること。

そんな事もわからないような人を相手にすると

姫ちゃんが笑顔忘れたり、

落ち着けなかったりして

心が息抜きしたいって

いつか、壊れて泣いちゃうんだよ。

だからね、そこは一緒にいて…

成長出来ずにいる彼より 

姫ちゃんがちょっぴり、大人になって離れてみよう!』


智 『男が、女性に対して絶対にしてはイケナイ事。

“殴ったり蹴ったりする肉体的暴力”

“脅したり、監視したりする精神的な暴力”

女性は、モノじゃないし家政婦でもない。

大切にしないといけない存在。

俺は少なからずそう思ってるよ。』


しばらく…沈黙が続き姫ちゃんが口を開く。 


姫 『わたしのこと、

橙士以外で受け入れてもらえるの?

彼を失うとどうやって生きて行けばわからないんだよ。』


周りの意見に動揺してる姫ちゃん。

どれだけ独りで

不安・恐怖、思いをして来たんだろ…

やっぱり、心からの笑顔がみたい。


優斗 『姫ちゃんは、1人じゃないよ。

君をこんなにも心配してくれる、

緑愛ちゃんもいる。

美月や智、冬弥だって

今日、初めて会ったのに

笑い合って今、一緒に泣いて笑ってそばにいる。

俺、、

俺だって、姫ちゃんに笑って欲しいって思ってる。


それって、姫ちゃんを受け入れてないと出来ない事だよ?

生きて行くのに理由が必要なら

自分が幸せになりたいとか

大切な仲間に笑顔届けたいって

理由でも大丈夫なんだよ。

1人で不安なら、俺たちを頼っていいんだよ。

それでも心配ならちゃんと言ってくれたらいい。

どこにいても何してても、すぐにそばに言って抱きしめてあげるから。

だから、焦らなくていい。

ゆっくりでいいから。』


そう我慢しなくていいんだよ。


姫 『…あ、りがと』

大粒の涙が頬をつたう。

冬弥 『泣いた時は、これ食べて…元気になるよ?』

おもむろに鞄からチョコチップクッキーをとりだし、

泣いてる緑愛ちゃんと姫ちゃんに渡す。

緑愛『ありがとう、冬弥くん』

姫『あ、ありがと。』

美月 『冬弥さん、今食べたら余計に口の中パサパサして大変かと思います笑』

智 『ってか、渡すタイミング…今じゃないねw』

優斗 『いつもの事だろ、冬弥は・・笑』

冬弥 『え?お呼びでない?笑笑』

優斗 『チョコチップクッキーは呼んでない!Www』

緑愛・姫『あははは笑』

泣いてた二人も吹き出し、大声で笑い合った。

姫ちゃんがやっと、笑顔になってる。

すっげぇ、嬉しい!!!

落ち着け、俺!

とりあえず今日の作戦は大成功に終わった。 


俺たちは、時間を忘れて騒ぎ、気がつくと

朝になっていた。 

俺たちは、お昼過ぎまで少し仮眠をとり…

俺の車で緑愛ちゃんのアパート近くまで向かった。

2時間半のドライブ。

ミラー越しに二人を見ると緑愛ちゃんはまた、寝てる。

姫ちゃんは、眉間にシワを寄せて外を見ながら大きなため息を一つ。

優斗 『姫ちゃん、大丈夫?』

姫 『…』

優斗 『聞こえてないか、、』

ふとミラー越しに俺をみると重い口をひらいた。

姫 『・・・・・あの…どうしてこんなに私たちに優しくしてくれるんですか?』

優斗 『う~ん、簡単に言うと嘘くさくなるけど…

*運命*だからかな。』

姫 『*運命*ですか…?』

優斗 『そうだと思ってる。

姫ちゃんさ、俺に手紙送ったよね?

それを読むまえ、ずっと…

半年ぐらい毎日同じ夢見てて、

暗闇を抜けてどこかの部屋につくといっつも泣いてる一人の女性がいて…俺は、勇気を出して声をかける。

“ねえ、なんで泣いてるの?君の笑顔が見たいから俺をまっすぐみて”

肩を叩きながら声をかけると… 彼女は、首を横にふり

“優斗さん、ごめんね。私には笑顔になる資格ないの・・・”

いつもそこで、目が覚めて

苦しくてせつねぇ気持ちになる・・・』


姫 『……その夢…似てる』

優斗 『多分、同じ夢を視点が違う感じで見てるよ、俺たち。

それを確信したのは、姫ちゃんを一目みた瞬間かな。

“夢で見た、女性”だって…

会いたかった人。

そして、なんで俺に助けを求めてるのか答えをしりたかった。

いざ、会ってみて答えかどうか分からないけどわかったこと。

俺が世界を敵にまわしても一番先に、守りたい唯一の女性だってこと…………………』

なんか、勢いよく…コクっちまった。

姫 『なんてお答えしたら今は分からないですが。

優斗さん、私…変わりたい。

みんなの話聞いたり、ばか騒ぎして

少しだけ、思い出した。

私、人と話したり外に出たりするの好きだったな~って

子供の時みたいに自由に羽ばたきたい、

でも、彼が怖い…。』

うつむきかけた姫ちゃんに、

寝ていたはずの緑愛ちゃんが起きて

緑愛 『大丈夫、私達もついてるから!』

緑愛ちゃんが自分のスマホ画面を姫ちゃんに見せた。

“今日、出会えて嬉しかった(^m^)これからはずっと友達だよ!”*美月*

“何かあれば…みんなでまたばか騒ぎしよう!”*智*

“ありがとう。大切な仲間が増えてハッピーな1日ありがとう。”*冬弥*


緑愛 『力になるから大丈夫!』

優斗 『損はさせないから、信じて守らせて、姫ちゃん!』

彼女の目からぽたぽたと涙がこぼれた

けど…
口元は、口角が上がり

満面の笑顔だった…

ああ…やっぱりこの笑顔が好きだー。

緑愛ちゃんの家の前に着き

手を振り別れ、車を発車しようとした時

姫 『優斗さ~ん、待って』


車を降り、姫ちゃんに近寄る。

優斗 『どうしたの?』

姫 『私、ちゃんと答え出すから…だから、』

必死な姿に思わず…

優斗 『無理しないで無茶して頑張れ!

ずっとそばにいるから』

手を握る。

姫ちゃんは嫌がる素振りはなく… 

ただただ、震えながら

姫 『・・・・・・・ありがとう・・・・』




あれから3日がたった。



姫ちゃんの笑顔が見れた喜びに顔がニヤける。

あぁ~、次は何したら笑ってくれるかな(^m^)

ふいにスマホがなる。


開くと“緑愛”の文字

優斗 『もしもし?』

『ゆ、、優斗さん。。。

どうしよ・・・・・・』



優斗 『姫ちゃん??

泣いて、どうしたの?』

姫『私が・っなこ・・緑愛が・・・・』

優斗『落ち着いて~

ゆっくり、深呼吸してから教えて?』


姫 『すぅはぁ、ふぅ~。

ありがとう、、、

私、橙士に離れたいって緑愛もいる前で話したら・・・・

やっぱり、怒って暴れた

そしたら.....

緑愛にまで手を出して...

私が止めに入ったら・・・

“俺を馬鹿にするな!”って灰皿を私に向かって投げてきて。

緑愛が、かばって灰皿が頭に当たって血が。

その後も散々暴れるし…

緑愛の血が止まらないしグッタリして

でも逃げれなくて

橙士が寝たの見届けてから

今…病院に来たばかりで一人不安で。』


優斗 『はっ!マジ!?どこの病院!?すぐに行くから!!』

事の大きさに慌てて車に乗り込み、エンジンをかける。

姫 『〇△病院です。』

優斗  『わかった!すぐに行くから待ってて!』

姫 『迷惑かけてごめ、、』

優斗『謝らないで。
姫ちゃんはな~んも悪くないんだから大丈夫大丈夫!』

姫 『ありがとう…』

俺は、夢中で車を飛ばした。

緑愛ちゃんは無事なのか… 

今待合室で一人、悔しさ・不安・恐怖と戦ってる姫ちゃん。

俺にとってどちらも大切なんだ。

負けるな、負けるな!

病院に着き…待合室に走る。 

優斗 『姫ちゃん!?』

誰もいない待合室に一人…じっと座ってる。

姫 『優斗さん。。』

立ち上がる姫ちゃんにかけより…強く抱きしめる。 

優斗 『大丈夫…?姫ちゃんは、どこも怪我はしてない?』

姫 『私は…大丈夫だけど、、、、緑愛が私の変わりに・・・・・・』

涙声になる、姫ちゃんをグッと引き寄せて

優斗 『緑愛ちゃんなら大丈夫だから!

信じようよ。』

コクンと首を小さく縦にふり… 

“ごめんなさい”を繰り返しながら…ただただ声を上げて泣き出した。

優斗『守りたい。』

姫『でも…優斗さんにまで迷惑かけるから』

優斗『いい、迷惑かけてよ、俺に。
迷惑なんて思わないから…

好きなんだ、姫ちゃんが....

いち、仲間・ファンではなくて

ただ、一人の女性として

好きなんだ、だから守らせて頼りにして

一緒に笑って幸せになりたい』

もう、こんな嫌な思いさせたくないし

姫ちゃんを守り抜く。

覚悟は出来た。

姫『私…笑っていいの?』

優斗『当たり前に笑うの♪』

姫『幸せになりたいって願って叶えてもらってもいいの?』

優斗『うん、叶えないともったいない』

姫『痛くてつらい、悲しい気持ちにさよならしてもいいの?』

優斗『いいのいいの!
俺が全部受け止めてプラスに変えて見せるから』

姫『私…

優斗さんが好き............』

だきしめ合いながら、本音をぶつけて

俺は姫ちゃんを少し離しておでこにキスをする。

やっぱり、すぐには震える癖は治らない

看護師『あの…緑愛さんの家族の方ですか?』

声をかけにくそうに看護師が呼んだ。

俺たちはパッと身体を離して照れながら

姫・優斗『いえ、親友ですっ』

緑愛ちゃんは、頭を15針縫い…安静に薬で寝てるだけだと看護師さんに教えてもらった。

一安心してまた、待合室の椅子に腰かける。 

姫ちゃんの電話がなる 

病院の外に行き話し終え

姫 『優斗さん、私…戻らなきゃ』

また、俯く。

優斗 『行くな!』

姫 『ありがとう…でも…』

優斗 『わかった、どうしても行くっていうなら俺も一緒に着いてく!!』

もう、独りにさせないって決めた。

俺は、納得してない姫ちゃんを車にのせて家に向かう。 

車の中、姫ちゃんは窓の外を見て…震える手を必死に抑えていた。

優斗 『姫ちゃん、同棲したのって新しく部屋借りたの?』

姫 『えっ…?違うよ、もともと橙士の部屋に私が住んだって感じです。』

不思議そうに答えてくれる。 

優斗 『そっかそっか…』

姫 『は、はい…

もともと荷物少ないから、引っ越しもらくでしたし。

スポーツバッグに入るぐらい』

女の子にしては少ない荷物。

優斗 『服ぐらい?』

姫 『服とか下着とかだけで十分だって言われたし…通帳や印鑑は今は緑愛が預かっててくれてるから失くさない環境です』

少し和みそうな時に家に着き…

姫 『あ、ありがとう』

姫ちゃんは急ぎ足で車を降り、インターホンを鳴らすと

彼が不機嫌な顔で出迎え、姫ちゃんの髪を引っ張り頬を叩く。

俺はその瞬間に車を飛び出して姫ちゃんに駆け寄る。

優斗 『姫ちゃん、大丈夫!?』

姫 『ダメ、来たらダメ!』

俺を跳ね退けようとした腕を掴み、、姫ちゃんを隠すように後ろに連れる。 

橙士『お前、なんなんだよ?』

優斗 『てめぇに関係ない。』

睨まれたら睨み返す。

橙士『姫!こいつは誰だぁ!!』

姫ちゃんの震えが止まらなくなるのが背中から伝わる。 

優斗 『女の子に対して手をあげたり、怒鳴ったりして・・・

面と向かって、俺に追求すりゃいいだろ.....』

悪そびれのない態度が俺をマジでキレそうになる。

橙士 『お前には興味ない!

姫、こっちへこい!』

身を乗り出し、姫ちゃんに近付くこいつの前に俺は立ち塞がる。

優斗 『俺の女に・・・・・・

気安くさわってんじゃねぇよ!!!!!』

橙士の胸元を掴み部屋の壁へ押し付ける

橙士 『っ…はな…せ…』

優斗 『こんなことで痛くねぇし、苦しくねぇよ?!

今、病院にいる緑愛ちゃん。

ずっとずっとお前に殴られて蹴られて・・・自由を奪わられ続けた

姫に比べたらこんな事・・・・・

屁でもねぇんだよ!!!!!』

姫 『優斗さん・・・』

優斗 『姫、俺が絶対にこの先守り抜くから…』

言いかけた瞬間に姫ちゃんは俺の背中にしがみつき

姫 『優斗さん、ちゃんと今向き合って答えだすから・・・

橙士を離して。』


俺は橙士から離れ…姫ちゃんの手をぎゅっと握る。


橙士 『ゲホッ、ゲホッ』

むせる橙士。

姫ちゃんは深呼吸して口を開く。 

張りつめた空気の中・・・


姫は口を開く。

姫 『橙士、私ね..気付いたの。

淋しいから・・叩いちゃうんだよね?

私が橙士を見てないから悲しんだよね?

もう、ずっと何年も前から

橙士を家族みたいだって 

お兄ちゃんみたいになんでも話せたり相談しあったりして

この関係が楽しく感じてた。

トキメキなんか求めてなくて当たり前のように

毎日過ごしてた。

叩いた後に優しい笑顔を見せてくれるから“大丈夫”って“前のように兄妹みたいな関係に戻れる”って信じてた。 

けど、“結婚決めた”って言われた時から 

心が苦しくなって、このまま結婚してもいいのかな?

って考えて頭ぐるぐるして。

でもね、優斗さんや緑愛といると何も考えないで笑えた。

子供の時のように…笑えたの。

彼・・優斗さんといると安心出来て素直な自分でいられる。

だから、 

だからね、私達、別れよう。。

羽ばたきたいんだ、自由に…』

橙士は立ち上がり、姫の髪を掴む。

橙士 『認めない、認めない!!!!!!!!!』

姫 『れっ…やめ…』

優斗 『離せ!』

橙士の手を掴み、姫の髪から離そうとした時… 

警察 『はい、そこまでだ!』

パトカーが止まり中から…

警察と緑愛が降りてきた。  

緑愛『姫、大丈夫?!

優斗さんも無事?!』

姫『緑愛こそ病院は!!?
動いて大丈夫なの?!』

緑愛『この通りへっ…いたた…』

優斗『無理すんなよ。。』

警察 『氷嘉橙士、自分が何したかわかってるだろ!
さぁ、こっちへ来い!』

車に連れて行かれ乗り込もうとした橙士は立ち止まりこっちを見る。

橙士 『おい。。

俺は、認めないからな。

絶対に姫を奪いに戻って来る

そして、俺を侮辱した、お前(優斗)と 

俺を裏切った、緑愛… 

許さない・・・・

覚えておけ、必ず戻る』


橙士はニヤリと笑い車に乗り込み

発車して居なくなる。

そして…握ってた姫の右の手をまた、ぎゅっと 強く握りしめた。

緑愛 『今日はなんだか疲れた~

姫、すぐにでも荷物まとめようか?』

姫 『うん』

緑愛 『さあ、作業にかかろうー!』

緑愛ちゃんは部屋に入っていく。

優斗 『大丈夫、何があってもこの手は絶対に離さないから!』

姫 『はい、私も離れたくない。』

姫と向かい合い…キスをする 。

優斗 『姫、、順番間違ったけど、俺と付き合ってください!』

姫 『はい。』

微笑む姫を

力いっぱい抱き締めた。

この先に起こる事なんか分からずに。

                       ‐続く‐

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