「食堂み」の女たち6

木島美奈が泣きはらした顔をして
帰ってきたのは、コスモスの花が咲き出した頃だった。

「ミナちゃんどしたん?」光恵が言うと、宿題をしていた俊一が鉛筆を止め、その横で漫画本を読んでいた響子が立ち上がった。美奈は三人の顔を見るなり、ギャーと泣き喚いた。
「まあお座り。お水でも飲みな」美奈をカウンターに座らせ、挟んで光恵と響子が座った。響子の横にはしれっと俊一も座り、美奈の顔を覗きこんでいる。
「金盗られた。だまし盗られたんや」お水を飲んで少し落ち着いたのか、でも鼻をすすりながら話し始めた。話の筋はこうである。

金をだまし盗ったのはホテヘルの客。客とは映画館前で待ち合わせをしてホテルに入った。部屋でコースを聞くと、二時間コースと言うので、上客やと思って有頂天になった。たいていは一時間コースで一万四千円。二時間ならその倍の二万八千円だからだ。そんな客はめったにいない。「年は六十歳くらいやった。頭は禿げてたけど、背はスラッと高くてわりとええ男だったわぁ…」だまし盗られたのに何言うてんねん!


続きは明日

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