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【受賞作品を深掘り!】2017年インターナショナルカテゴリー受賞作品「Notes」(Take Note/カナダ


<Take Note>

時代が変わってもペンと紙を使った書き物を愛する人々が集う場所、Take Note。若手アーティストやデザイナーの店が集まることで知られるトロントの地区、ザ・ジャンクション(The Junction)にある店舗には、文房具や雑貨に加えて個性的なギフトアイテムが並び、ニッチな顧客の心をつかんでいる。 オーナーのJolanta Petrycka氏は、美術と工学の分野に通じている。中でもデザインと職人技術に情熱を傾ける彼女が手掛けるその店は、店内の美しいレイアウトも然ることながら、世界中から集められた質の高い商品が手に入ることが売りだ。 丹念に作られたペンを走らせ、あるいは高質の紙を指でなぞって摩擦やサイズ感を確かめると、自ずと感じられる繊細な特徴が大好きだと語るJolanta氏。彼女は、「だからこそ書くということが、ぐっと親密で、喜びある経験になるんです」と付け加えた。 ザ・ジャンクションをホームにして20年以上が経つが、ここにはいつも、“エネルギッシュ”で“生”な何かがあると言う。また、アートが存在の中心になっているこの地区ではコミュニティ意識がとても強いそうだ。その意識をTake Noteの店内にも活かしたいと考えた彼女は、店の家具のほとんどを地区内の店で購入した。試し書きコーナーには昔の銀行で使われたというアンティーク机が置かれ、ペンの陳列用には60年代のディスプレイ棚が使われている。 Take Noteで扱うこだわりのアイテムの中には、フランスのRHODIA(ロディア)、イタリアのFabriano(ファブリアーノ)、ドイツのThe Leuchtturm1917(ロイヒトトゥルム1917)といったブランドの製品に加え、日本のミドリやアピカ、ニーモシネの製品も数点並ぶ。他にはアルネ・ヤコブセンによるデザイン便箋や、オランダの文房具・雑貨ブランドmo man tai(無問題)のアイテム、小規模経営の活版ブランドから集めてきた数えきれないほどのグリーティングカードが揃っている。 筆記具も充実のセレクションだ。最高の機能性と現代的なデザインを両立させたラミー(LAMY)等のブランドから、日本製ならではの細かい描写能力がファンに支持され続けるパイロットまで、取扱いの幅は広い。油性ボールペンから万年筆、水性ボールペンにいたるまで、店では「書く」シーンにおける様々なニーズに応えている。ハイエンドのシェーファー、ファーバーカステル、ペリカン、プラチナやNoodler’s(ヌードラーズ)といった品々は、筆記具オタクを大満足させること間違いなしだ。
Take Noteの公式ウェブサイトはこちら

Take NoteのJolantaさんのインタビューがほぼ日新聞に掲載されています!

<作品制作の経緯>

トロントで小さな文房具店のオーナーをしています。店の常連客の一人に、広告エージェントで副社長をされている女性がいるのですが、ある時、彼女のお祖父さまからお祖母さまに宛てて80年以上も前に書かれたというラブレターの話で盛り上がりました。束にするほどのたくさんの手紙はそのお客さまに受け継がれ、以後宝物として大切にされているそうです。今の時代、そういったやりとりのほとんどが携帯のメッセージやEメールで済んでしまうので、私たちの子ども世代や孫世代が直筆の言葉が持つ価値を知る機会はほとんどなくなるでしょう。それがひどく悲しく思えて、2人で嘆いていたのです。
この出来事がきっかけで私たちの中にある想いが生まれ、それに息を吹き込むためのクリエイティブチームが集められました。何か月か経って、彼女は“Notes”の最初の脚本を持って店に来てくれました。わたしはそれを読んだ瞬間に、ストーリーの美しさと、”誰かと誰かの関係“が生まれてから終わりを迎えるまでを「手書きの言葉で描く」という深い発想に胸を打たれました。完成した作品をコミュニティの皆さんやお客さまに見てもらうことで、この店に興味を持ってもらい、また手書きの言葉の価値を強く伝えることが出来ました。作品を担当したクリエーターにインスピレーションを与えられたことを誇りに感じ、創作の過程に加われたことをとても光栄に思っています。