水が低いところへ流れていくように

人が自分の心を損ねてしまうとき
どうしようもなく、抗いようもなく損ねてしまうものだ
まるで水が高いところから低いところに流れていくように
窪みに淀んで渦を巻いている
水が流れていくことを誰も阻むことはできない
ひっくり返すことなんて不可能なくらい当たり前の現象を
ぼくたちはただ眺めていることしかできなくて
目の前に広がる窪みが沼になり池になり湖になり海になる
その様子を眺めているしかない
自分に無力さを感じることすらおこがましくて
それはむしろ相手に対する無礼と冒涜だ
感傷的に眺める行為さえ、淀んだ水の一部になる
感傷でもなく哀れみでもなく善意でも義務感でもなく
溜まった水がまた新たな場所に流れだすのを見届けなければ
いつの間にか沈みかけている自分の足元に気づかずに
淀んだ水の一つになってしまうよ

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