青葉流し

夏の長雨がもう一週間続いている。たおやかに優しく降る日もあれば荒々しく、それこそバケツをひっくり返したように降る日もある。粒の大きな雨がアスファルトに打ちつける音。川沿い並木の桜の葉が雨を弾いて踊る。増水して濁った水が激しく流れる川。平日の午前十時に布団にくるまっている私。どれもが簡単に頭で想像できる”よくある”風景として頭の中で再生される。今年は夏が遠い。梅雨も最近の中では長く続いている方で、梅雨入りする前もなんだかこの時期にしてはずいぶん涼しいと感じていた。早く夏が来ないものか。いや夏が来てほしいというわけではないけど。ただ次の段階に物事が進んでほしいというだけ。そうすれば今布団にくるまっている私の停滞した現状も、不思議と好転していくんじゃないか。そんな淡い期待。淡すぎて水泡のごとく簡単にぱちりと消えてしまうのが目に見えているほど。誰も助けてくれる人はいない。救世主みたいに楽園へ連れて行ってくれる人。助けようと手を差し伸べてくれる人はくらいはいるけど、最終的には自分自身で助からないといけない。自分自身で局面を打開して、自分自身で幸せ地帯に滑り込まないと。
窓の外で雨が桜の葉に当たる音が聞こえる。落ちた青葉が茶濁の流れに乗って川を下っていく。どんぶらこのリズムで飲み込まれてまた浮き上がって。そんなふうに事が流れて、川の淀みにふらふらと揺蕩う青葉になれたなら。

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