清家雪子展 @中原中也記念館

 清家雪子さんという漫画家をご存知であろうか。
近著「月に吠えらんねぇ」が最近最終回を迎えました。
がちがちの文学漫画で、フリークにとってはかなりアツい展開。
彼らの想いを考えると、胸が締め付けられます。
登場人物たちは文学史上の人物なのですが
そのまま本人というわけではなく
清家さんが作品を読んだイメージからキャラクターを立ち上げていて
そのまま本人を写しているわけではないところも面白さ。
中原中也は盗んだバイクで走りだしたりはしないのだろうけど
チューヤ君は盗んだバイクで走りだすタイプのキャラクターです。

 そんな漫画を描いていらっしゃる清家雪子さんをフィーチャーした展示が
山口県の湯田温泉にある中原中也記念館で行われています。
1Fの常設展で中原中也の勉強をしてから、2Fの清家雪子展へ。
中原中也の作品は知っていましたが、生い立ちを知ると新たな発見が。
中原中也は2人の男の子を授かっていますが、
長男の文也が2歳の時に亡くなってしまいます。
子を悼んだ詩集「在りし日の歌」はその悲しみに溢れていて
気軽な気持ちでは読むことができません。
中也はその翌年に亡くなり、次男の愛雅もその翌年に2歳で亡くなります。

「月に吠えらんねぇ」は題名から想像がつく通り萩原朔太郎が主人公です。
その朔太郎が、物語の途中で分裂したり女になったりするのですが
分裂した子供の朔太郎をチューヤ君が面倒を見る場面があります。
中原中也は意外と(と勝手に思っているんですが)子煩悩な人みたいで
そんなチューヤ君が子供の朔太郎をかわいがっているところを見ると
ぽろぽろ泣いちゃう。まるで文也や愛雅を愛でているようで。
チューヤ君が子供の面倒を見ていると泣いてしまうという
新しい呪いをかけられました。

 文学漫画って作品を元にしたコミカライズだったり、
ストレイドッグスみたいなファンタジー系だったりいろいろだけど
月に吠えらんねぇは清家さんの才気が渙発した新しい作品。
戦中や終戦直後の文芸界の苦悩をしっかりと描き切っていたところは
ほんとに感動です。
文学になじみのない人は、そういう苦悩の部分を
ぜひ楽しんでもらえればと思っています。

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