夜のスーパー

 私は夜のスーパーが好きだ。生気がなくて妙に落ち着きつく。特に夕食の時間が過ぎた21時頃から私にとってのゴールデンタイムだ。他人に対して特別劣等感を覚えやすい私にとって、この時間帯のスーパーは子連れの家族、夕食や宅飲みの調達をする大学生のカップルや仲良しグループといった目がつぶれそうなほどキラキラし、無意識のうちに自分の中に影を作り出してしまうような人々はそこに存在しない。バイトや仕事帰りのくたびれた人々が店の外の景色のように暗く、憂鬱な空気を纏い等身大でただそこに存在する。そのような人々が必ずしも不幸せだとは思わない。家に帰った後や別の日に、眼が眩むほどの輝きを放っているかもしれない。ただ、そのような側面をもっていようと真夜中のスーパーのほんの一瞬、憂鬱な空気を纏いながらその場で存在してくれるだけで、私はとても救われた気持ちになる。様々なところで放たれる強烈で輝きに目を細め、光と影のうち影として悶えながら人生の大半を生きてきた自分にとってのオアシス。存在が肯定されたとまでは思わないが居心地の良さを感じる。情けない自分を認めて優しく包んでくれる感覚。そんな気持ちにさせてくれる夜のスーパーではいつもより多めにお金を使うようにしている。オアシスの水が枯れてしまわないように。

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