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フロムゲー初心者のSEKIRO感想記⑦『キャラ語り・狼(前編)』

※この記事はこちらの記事の続きです↓

今回から合間合間で、ちょっとずつSEKIROのキャラ語りも挟んでいこうと思います。
とりあえず主要人物は全部語りますが、中にはストーリーのネタバレも含まざるをえないキャラもいるので、そういったキャラは後半に回します。

まずは手始めに、SEKIROで最もプレイヤーが目にする人物。

主人公の狼さんについて語っていきます。
SEKIROはどのキャラも魅力的でつい忘れがちになりますが、主人公である狼さんも負けず劣らず、素晴らしいキャラクターです。

ただ、狼さんは主人公なだけに物語の都合も含め、語ることがものすごく多いです。
なのでひとまず今回は「前編」と題しまして、序盤の時点での狼さんについて語っていきたいと思います。

寡黙で仏頂面、しかしどこか人情を捨てられない「不器用な忍」

不器用。
狼さんを一言で表すのなら、この言葉が一番しっくりくるでしょう。

実はSEKIROの作中で、狼さんはほとんど喋ることがありません。マジでびっくりするほど喋らない。

それと、狼さんは喋らないというよりも「二文節以上の言葉を話すことがほぼ無い」といった感じなんですよね。
ちょっとNPCとの会話を抜粋してみても↓
「なぜ、泣く」
「どうした」
「断る」
「必ず取り戻す…」
「不死断ちを果たすため…お伺いしたいことが」

こんな感じ。だいたい単語で喋るし、文章を喋っても簡潔な物言いが多いです。
で、あとはもう戦う時は基本的に無言ですし。ダメージボイスも殆どない。
死亡する時も落下死と、特別な死に方の時以外は無言。
(ちなみにこの特別な死に方は「敵に尻子玉を抜かれて死ぬ」というちょっと想像したくない死に方なので、さすがの狼さんもそりゃ叫ぶわって感じです)

ただ、喋らないからといって狼さんは冷たい人間かというと、そうでもありません
むしろ言葉少なだからこそ、その少ない言葉の隙間から狼さんの人情というものが、よく見えてきます。

例えば、狼さんが「…」となっているときは、だいたい息づかいで感情表現していることが多いです。
言葉に詰まったり、困っていたり、迷っていたり、驚いていたり…。
無言の中にも、ちゃんと色々な感情が詰まっているんです。

それと、NPCとの絡みも見どころです。
ちょっとNPCが困っていたり、泣いていたりすると、狼さんが声をかけたり、協力しようとする選択肢が出たりします。
もちろんプレイヤーとしては助けない選択肢も選べますが、
「選択肢が出るということは、狼さんの思考に一瞬でも人を助けるという考えがよぎったのではないか」とも思えます。

それで、いざ人を助ける選択肢を選ぶ時ですが、これがまたなんとも不器用な方法ばかりで。
それがなんだか、ちょっと切なくなるというか。
だって狼さんは戦闘中は人を斬るのに、全く躊躇がないですし。
プレイヤーの戦闘スキルがどれだけ情けなくても、忍として実力者であること、敵に対して情け容赦がないことは一目瞭然です。
だから「あっ、この人、本当に人との接し方がわからないんだ…」と、ふいに思い知らされるというか。

でもわからないなりに、狼さんは自分の考えを外に出そうとしてるし、不器用に人と接する方法を模索していく様子が伝わってきて。
人情ものの時代劇を見ているようで、ちょっとじんわりとしたものが胸にこみあげてきます。

この不器用な忍が、ストーリー中で如何な道筋を辿るのか?
それがSEKIROの見どころのひとつでもあります。

主人は従者に、従者は主人に似る

狼さんが忍であるにも関わらず、これだけ優しさを滲ませたキャラになっているのは、主人の九郎様の影響が大きいのではないでしょうか。

九郎様

九郎様は序盤の言動からもわかる通り、物腰柔らかで優しい方です。
作中で年齢は明かされませんが、たぶん10代前半とかかもしれません。
けれど従者である狼さんのことは決して軽んじることはなく、常にその身を案じてくれています。
天涯孤独、親兄弟のいない九郎様にとって、狼さんは唯一の家族といっても過言ではありません。
だからこそ、絶対に無下にせず信頼してくれているのでしょう。

それは物語の冒頭、狼さんが九郎様と再会するシーンを見ても明らかです。

自分を迎えにきてくれた狼さんに対して、まず最初に九郎様は手を差し伸べるんです。
何気ない行動ですが、この一瞬の行動だけで如何に狼さんのことを大事に思ってくれているかがわかります。

また狼さんにとっても、九郎様は一番最初に仕えることになった主です。
他の主人に仕えたことがないからこそ、九郎様からもらう影響も、かなり大きいのはないかと考えられます。

主人がやっていたように、人に手を差し伸べる。
もしかしたら狼さんの見せる朴訥な優しさというのは、九郎様を無意識に真似しているのではないでしょうか。

主人公たるもの、覚えやすく、お洒落であれ

ちょっと趣向を変えて、狼さんの服装について語ってみます。
で、これはゲーム開始当初から思っていたことがあるんですが、

は…………。
派手な服だな……………。

SEKIROは全体的に褪せた色設計がなされていますが、それでも狼さんが忍らしからぬ服であるのは明らかでしょう。
まずやっぱり目を引くのは橙色の着物。狼さんのトレードマークといっても過言ではありません。

これはやっぱり、仏教的な要素を絡めた色なのかなと思います。
その理由が、物語の冒頭で出会う仏師さんも同じ色の着物を着ているからなんです。

仏師さんの方が若干、色が濃い橙色

二人並べた画像を見ると一目瞭然。ほぼ同じ色です。
国や文化、地域によって差はありますが仏教のお坊さんが橙色の袈裟を着ているのを、よく見かけたりします。
一番顕著なのはタイでしょうが、日本でもたまに橙色の袈裟を着たお坊さんがいらっしゃいます。

SEKIROは作中の随所に仏教の要素が散りばめられています。
この要素がストーリーにも深く関わってきますので、今のうちに抑えておきたいポイントとして挙げてみました。

では、狼さんの服の話に戻りましょう。

首にはためく襟巻き、体の随所に撒かれた赤い組紐。足甲には綺麗な紫色があしらわれています。
地味に見えて、その衣装には様々な色彩がふんだんに使われています。
凄く面白いなと思ったのが、狼さんは後ろから見た時の方が体の特徴が掴みやすいということ。

並べてみてみます。
もちろん前から見ると顔はわかりやすいですが、後ろから見ると橙色の着物が占める割合が多く、シルエットとしてわかりやすいんです。
背中に巻かれた大きな2本の紐も、交差させることで×マークのようになっていて、パッと見える記号として、すぐ覚えられます。
地味に効いていると思ったのが、手足に巻かれた白い紐。手甲と足甲の上に巻かれているおかげで、白が目につきやすくなっています。
これがあるおかげで狼さんの動きを確認する時、手足の流れがわかりやすいなと感じました。

ゲームを遊ぶプレイヤーにとって、最も目にするものは狼さんの背中です。
さらに、SEKIROはスピーディに動きまわるゲーム。
こういったデザインにすることで、プレイヤーが狼さんを覚えやすく、かつ動きを追いやすいようにしてあるのかもしれません。
また首に巻かれた襟巻きと、切れ込みの入った着物も見逃せません。戦闘時に動くことで、これらが旗めくのでかっこいいんです。これ大事。
主人公だからこそ、お洒落に。
主人公だからこそ、覚えやすく。

ゲームとしての工夫が詰め込まれた狼さんの服装、今一度、じっくり見直されてみては如何でしょうか。

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それでは、今回はここまで。次回は私用により1週間お休みさせていただきます。
次回更新予定日は5月27日(金)20時です。よろしければ、また読んでいただけますと幸いです。
プライベートの都合により、次回更新を一ヶ月後の6月下旬あたりにいたします。また日取りが決まりましたら、お知らせいたします。

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