見出し画像

岸田文雄が首相として「原発の再稼働」のみならず「新増設」まで認めた無識ぶりと暗愚のきわみ

 ※-1 2024年1月30日時点,原発問題に関する問題意識

 「原発を新増設する」ことしたら,再エネの比率向上が大々的に圧迫されるだけでなく,そもそもその方途すらを阻害する悪・要因になる。だが,原子力ムラの底意を基本から理解できもしないで,それを認めた「正体不明:素養不在の日本国総理大臣:岸田文雄」の無主体ぶりは,

 現在開催中の国会・予算委員会で審議されている「パー券裏金問題」に対するこの首相の「答弁の口調」からして,「世襲3代目の政治屋」としての暗愚さかげんならば,まさに「絶好調」に発揚している点からも類推できるように,岸田文雄は多分,原発問題の技術経済論のイロハすらまったく理解できていない。

 21世紀の現段階において置かれているこの国全体の行き先を,どのように舵取りし,運営していくのか,そのための理念も展望も理念もなにも抱いていない「世襲3代目の政治屋」は,国民の立場からすればまことに恐ろしい,それも無責任な輩だと非難するほかない。この「無主体的な存在物」である「世襲3代目の政治屋」の正体のなさは,当人が首相になっただけによけいに目立つ個性的な特徴となって発現している。

 この国はすでに「衰退途上国」の資格ならば十全にととのえてきたところにまでなっている。そして,現状における世相が,ひとびとに夢や希望をもたせえない「この国」になっているさなかにあるのにもかかわらず,これに,なんら危機感も切迫性も感じとっていない岸田文雄は,即刻退陣・引退することが喫緊事である。

 だいたい,岸田文雄の為政ぶりを観察していると,1人《自分が首相でいられる時間》を1日でも1時間でも1分でも,ただ延ばせればいいとしか考えていない「世襲3代目の政治屋」であった。この事実だけが非常に鮮明になっている。このような「はかなく,たよりもない」「世襲3代目の政治屋」が首相の座を占めているのだから,この国はさらに傾いていかないわけがない。

世襲政治はカースト制度!

 以上の理解から敷衍していえば,この国全体をよりよくしようとか,国民生活を改善・向上させようとかは,岸田文雄の念頭にはまったく存在しなかった。そもそも,一国を動かすための力量も才覚も知恵なにも,もともとなかったのが,この首相であった。この事実は,彼が2022年10月4日に首相
座に就いてからというもの,それこそ一貫して披露してきて特性であった。

 つぎに紹介する世襲議員の割合に関した情報は,2021年時点に作成されていたものである。

世襲議員の実態

 「丸出だめ夫」君は漫画の世界において登場した人物像であった。だが,「岸田文雄」君は1億2千万人以上もの人口をかかえた国の最高指導者であるゆえ,「だめ夫」風に即した漫画的な人物評価をくわえるわけにはいかず,それこそ即物的にきびしく評定せざるをえない。

 安倍晋三の政権の時代は,分からず屋のあの大きな坊やが,この「美しい国」を破壊してきた一途あるのみであった。つぎに,岸田文雄の政権の時代になったところ,この人は「国会のなかでの答弁は官僚の用意した答弁」を棒読みする〈才能〉しか備わっていなかった事実が判明した。自分の頭脳を通して表現できることばがありえない首相であった。

 つまり,この岸田文雄君に実際に首相をやらせてみると,「世襲3代目の政治屋」に固有の暗愚・陋劣ぶりだけがきわだつ「国会でのその模範演技」になっていた。

 安倍晋三も岸田文雄もデタラメさの程度に関していえば,どちらもどちらであったが,ともかく,このたぐいである日本国首相の在任期間が延びれば延びるほど,国民・市民・庶民側がこうむる迷惑・害悪もどんどん増大してきた。

 それでもこの岸田文雄は「自分は開成(高校)の出身(卒業生)」という点だけは,自分のとりえだと思いこんでいるらしい。だが,そんな半世紀も前の「学歴の一断層」よりも,いま現在「首相としてどのように仕事を遂行している」のかが,一番の関心事となる。

 ところが,その実際の仕事ぶりに関して第3者が下せる人事考課は最低点であって,からっきし使いものになっていなかった。しかも,当人がいまだに首相の立場から執務しているとなれば,あとは国民たちに与えるのは不安と恐怖しかありえない。

 さて,岸田文雄は首相になってから1年も経っていなかった2022年8月下旬,日本は「原発の再稼働と新増設」をおこなっていくとなどと,滅相もない構想をぶちあげた。増税と防衛費倍増もついで唱えていたから,この首相のいうこと・なすことはみなサイテイであった。

 もっとも,岸田は,以上の構想や方針が自分なりの脳細胞を濾過させてから公表したものではなく,原子力村(財界)側の要望などを鵜呑みにしたうえ,そのようにただ「オウム」返しに「鳴いていた」に過ぎない。

 さて,2024年はいきなり元日に能登半島地震(震度7の激震,M7.6)が発生した。たまたま「3・11」以降,稼働停止状態であった志賀原発(2基)も,相当の被害を受けていた。もしも,この志賀原発が稼働中であったとしたら,それこそ重大な事態(故障・不具合)が,能登半島地震によって発生させられていたはずである。なにせ,敷地内というか原発の真下を活断層が通っているのだから,恐怖あるのみであった。

 本日のこの記述は,ほぼ1年ほど前〔2023年2月5日〕に公表してあったが,その後,ブログサイトの移動のため未公表になっていた文章を,再度,ここに公表することにした。もちろん,再掲に当たっては相当に補筆した段落もある。

 本記述における問題の焦点は,原発が排出させる廃熱エネルギーの多寡にある。要は,原発という電力生産方式の「熱交換比率の問題:原発の性能」にかかわって,不可避に浮上していた「重要な検討課題」が議論されることになる。

 つまり,地球温暖化という現象が文字どおり事実であると認定されうるならば,とくに原発という電力生産方式が,原子力を燃料に使い電気を作る技術特性を有するものゆえ,

 この施設・装置全体が発生・排出させている「廃熱の〈大きさ・多さ〉については,これに格別の関心を向けるべき,いわば「マイナス的な要因:論点」として議論の対象にする必要があった。ところが,このところに焦点を当てた議論が少なかった。

 ※-2 本日の話題は最初に,原子力ムラ側の拡声器の役割を日常的に果たしている「原発推進論者」の意見・立場・イデオロギーから拡散されている「原発バンザイ」の発言から紹介してみたい。  

 小山 堅・日本エネルギー経済研究所専務理事「〈エコノミスト 360° 視点〉 エネルギー市場安定化を主導せよ」『日本経済新聞』2023年2月3日朝刊7面「オピニオン」に,この人の,原発信仰的な「いつもの弁舌」が開陳されていた。 

小山堅の原発論は「虚説」が基本
       

 「脱炭素化についてはエネルギー安全保障との両立を前提として,原子力・省エネルギー・再生可能エネルギーなどの開発・利用推進に向けた協力が重視される。脱炭素化への取り組み・・・」という文言には「原子力」まで含められているが,これは確たる科学的な根拠に裏づけられた主張ではない。

 極言すれば,完全なる誤謬の言説(宣伝:プロパガンダ)であり,原子力ムラ的なイデオロギーにもとづく虚偽の発言であった。ここで批判の対象のとりあげた小山 堅は,「原発は温暖化の原因にあらず」という誤論まで,なんどでも懲りずに,確信犯的に反復しつづけてきた識者である。

 その発言をする「理由ないし根拠」はたとえば,電気事業連合会のつぎの説明に記述されている。添えられていたる図表も紹介しておく。なお,赤の上向きの矢印は引用者の加筆である。

電気事業連合会の
原発が炭酸ガスを排出しないという主張は
ほぼデマ

 原子力発電は,ウラン燃料の製造や発電所の建設などの過程においてCO2 を排出しますが,運転中にはCO2 を排出しないので,発電電力量あたりのCO2 排出量は,ほかの電源と比べて少ないとの結論がえられています。 原子力が電力供給のトータルシステムとして,温暖化抑制に優れた電源の一つであることが証明されているわけです。 

 注記)前掲の図表について,原文と原表は 「〈原子力発電の特徴〉CO2 を排出しない」『電気事業連合会』https://www.fepc.or.jp/nuclear/state/riyuu/co2/index.html を参照されたい。

 原子力ムラ側が原発(原子力),それも「稼働中にかぎってはほとんど出さない」といういい方にまで表現を変えてきた裏には,以前ならば,このムラ的にはいっさい無視を決めこんでいた “つぎのごとき事実” があった。

 その点については,ほかならぬ電力中央研究所のある「解説論文」がその事実に言及していた。同所の和田 明が「原子力発電所の温排水問題-拡散問題を中心として」という論題の「解説」(正確には論文ではなかった)を,『日本原子力学会誌』第15巻第6号,1973年6月(いまから半世紀も以前)に寄稿していたので,これをまず参照しておきたい。

 それは,なんと半世紀もさかのぼってすでに公表されていた論稿であった。次項※-3で紹介する。


 ※-3 和田 明「原子力発電所の温排水問題-拡散問題を中心として」という論題の「解説」(正確には論文ではなかった)『日本原子力学会誌』第15巻第6号,1973年6月から

 なお,この論稿,和田 明「原子力発電所の温排水問題-拡散問題を中心として」は,つぎの住所から入手,閲覧できる。以下の記述では,本部筆者なりに関心を引く段落を紹介してみたい。
  ⇒ https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesj1959/15/6/15_6_386/_pdf/-char/ja


 ★ 発電所温排水の現状 ★

 火力あるいは原子力発電所はそれぞれボイラ,原子炉から取り出した熱エネルギーをタービン発電機により電気エネルギーに変換するもので,このさいの熱効率は最新火力でも40%程度である。すなわち現状〔1970年代前半〕では,有効に電気エネルギーになった量にほぼ匹敵する熱量を外部に放出せざるをえない。

 この放出熱量は本質的には熱効率の向上を待たねば減少できないものであり,充分な熱容量を有する媒体である大気系または水系に拡散することになる。問題とされるのは蒸気タービン発電所において復水器により放出される熱量である。火力および原子力発電所から放出される熱量は次表のとおりである(和田,前掲稿,28頁)。

発電所からの放熱量
         

 原発は「稼働中は温暖化の原因になる炭酸ガスを出さない」といいいわけしたところで,このように冷却機能を働かせている間は,熱効率の比較ではほぼ火力発電の2倍の排熱になっているゆえ,観過できない問題点を抱えている。

 しかも,この和田 明の報告は半世紀も以前におけるものである。とくに火力発電はLNGを燃料とする方式(改良型)では最高60%に達する熱効率を実現している。

 この最新火力と原発を比較考量したら,いったいどのような「日本におけるエネルギー観」が展開できるか? 前段で,原発の場合,「熱効率の比較ではほぼ火力発電の2倍の排熱になっている」と説明した点=差は,もっと大きくなっていた。

 つぎに紹介するのは,比較的最近の記事となるが,21世紀になった段階においてもまだ,原発の性能・出力に関してだけは,いまだに「なにも変化=向上・改善」がないままに,こう説明されている。

   火力発電と比べると,原子力発電所の効率は比較的低く,約30%~35%に過ぎない。そのうえ,原発ユニットの循環水量は火力発電ユニットの 1.2~1.5倍で,稼動の過程では,60%を超える熱量が冷却水とともに水中に排出される。

 1000MWの原発ユニット1基は,2000MWの熱量を環境に発散する。直接水流冷却方式を取った場合は,温排水の流量は約50m3/s〔秒速50立方米〕である。

 夏には8℃昇温すると考えれば,毎日水中に排出される熱量は   
    1.45×1011kJ,

 冬期には10℃昇温するとすれば,排出される熱量は
    1.81×1011kJ

となる。

 このため発電出力で同レベルの火力発電所と比べると,原発には,温排水の排出量が大きく,廃熱の排出が多いという特徴がある。

 --ここで途中に参照することになるが,「海洋生態環境に対する海上浮体式原子力発電所の温排水の影響」『SCIENCEPORTAL China』2018年4月5日,https://spc.jst.go.jp/hottopics/1805/r1805_lan.html  という論稿から,つぎの段落を切り出し,紹介しておく。

この論文(のこの記述中)にはよいことはなにひとつ書かれてない
つまり悪影響ばかり説明されている

〔ここで記事(和田・論稿)に戻る→〕 わが国における復水器冷却水の設計最大使用水量は出力10万kW当り,火力発電所で3.5~4m3/sec,原子力発電所で6~6.5m3/secとなり,原子力は火力にくらべて50%ほど多くの冷却水を必要とする

 今後の技術開発によって,原子力発電所の蒸気条件が新鋭火力なみに改善され,熱効率34%以下の現行軽水炉型から熱効率40~42%の新型炉(AGRやHTGR)へと発展すば,単位出力当りの冷却水量を減ずることを期待できよう(38頁)。

 補注)ウィキペディアは,AGR(改良型ガス冷却炉,Advanced Gas-cooled Reactor)について,「2022年1月現在,英国にはそれぞれに2基のAGRが稼働している原発は5ヵ所あ」ると書いてある。

 だが,「1976年から1988年にかけて稼働を開始した」というこの原発と同じ型式が,ほかの国で稼働しているとはとくに書いてはない。

   HTGR(超高温原子炉, Very High Temperature Reactor,VHTR)は,ヘリウムを一次冷却材として使う方式であり,もっとも開発が先行して実証炉段階にあるために高温ガス炉としてしられているが,現在まで商用化されていない。

補注

 再度,和田 明の論及に戻ろう。以下も,話題が提供していた主要な論点に関する考察であったけれども,その基本線はあくまで「解説」であると断われた語感での構成ないし文章になっていた。

 --海の表層部へ放出される水の温度は復水器通過後のために,海の場の海水温度より平均5°~7° C 程度高く,それだけ密度が小さいので海の表層部にうすく拡がる,いわゆる密度流の性質をもっている。

 この温排水が拡散冷却する過程は,温排水自身の放出はこよって生ずる流れによる熱の移動(移流)と,周囲の冷たい海水との混合希釈,および大気への放熱の3つの物理現象が複雑に組みあわさっておこなわれる(30頁)。

 水温上昇の深さ方向への影響については,理論解析および現地実測の結果から,温排水の密度流としての特性のために,深さ方向の熱拡散より水平方向の熱拡散がはるかに大きいので,熱は水平方向に,海面からせいぜい2~3m前後の厚さで拡がるものと考える。

 却水放水口の近傍では下層冷水の加入による混合によって主に放出水の水温が低下し,放水口から遠ざかるにつれてしだいに海域の渦動拡散や潮汐による混合冷却を支配するようになると考えられる。

 したがって,できうるかぎり現地での観測調査を実施し,拡散過程の資料を集積し,それを正しく処理して帰納的に問題の本質に近づく努力が必要である。

 一方,個々の基礎的な現象の理論解析によっても,それぞれの局所的な問題を解明することはできるが,総合的な沿岸海洋学問題の解決には限度がある。以上の観点から,実際的な問題の解決にはもっぱら数理模型あるいは潮汐水理模型実験の手法が広く用いられている(31頁)。

 補注)以上,要するに「原発問題」に対しては「対症療法」しか採らないと宣言したも同然の意見を記述していた。

b前段で比較できる材料として添えてあった中国側の論文,「海洋生態環境に対する海上浮体式原子力発電所の温排水の影響」『SCIENCEPORTAL China』2018年4月5日と密着させて比較対照すれば,こちら和田 明の究明は,きわめて控えめであって,

 その中国の論文が「総合的な沿岸海洋学問題の解決」に糸口を与えうる記述をおこなっていた点とは対照的に,和田 明の「解説」は「局所的な問題を解明することはでき〔てい〕るが」,それは「個々の基礎的な現象の理論解析によ」るものに過ぎないと断わるだけで,それ以上に研究が進展できる可能性には直接触れていなかった。

 ともかく,以上の「解説」のための分析や考察をしたのち,和田 明は結論部で,関連するはずの「今後の研究課題」を語っていた。

 今後以下に示す事項についての調査研究が必要であり,項目相互の系統的なアプローチが必要になるであろう。

   (1)   水温と水棲生物の関係に関する調査研究
   (2)   温排水による熱拡散機構の解明
   (3)   温排水の海域への影響を低減する対策研究
  (4)   温排水の利用に関する研究

 〔なお〕温排水問題全般の解明のためには,いましばらく研究期間を必要 とするものであると考えられる(37頁)。

 従来の数理あるいは水理模型実験の手法をさらに発展させ,一般的でかつ精度の高い温排水影響域の判定資料を求めることにある。今後は発電所の大容量化に伴う冷却水放出水量の増大と相まって,その拡散現象は複雑な様相を呈することが予想される。

 これまでの拡散予測手法をより精度の高いものとするためには,風,波,潮流,沿岸流などの作用や海域の水温鉛直分布の影響などの諸要素による混合現象に関する理論的研究をすすめる必要がある(38頁)。

 以上のように指摘されていたわけだが,この意見が表明されてから,すでに半世紀が経過した。だが,前段において,比較・対照用にもちだしてみた「海洋生態環境に対する海上浮体式原子力発電所の温排水の影響」『SCIENCEPORTAL China』2018年4月5日のように,核心の問題はすでに実証分析的に公表されていた事実を踏まえていうとしたら,

 当然に,関連する論点の解析に関して顕著な進展があってしかるべしと考えてみたいところが,後段の記述でも言及することになるが,少なくとも原子力ムラ側「陣営」からする研究からの,つまり,日本の地域社会に対して役立ちうる貢献があったようには思えない。この実情はある種「意識的な懈怠」であり「意図された罷業」であったといえなくもない。

 

 ※-4 その後における原発関連の温排水問題

 原子力委員会(1956年1月1日設置,日本の行政機関,初代委員長は正力松太郎であった。委員長および委員2人の計3人で構成される)のホームページに,ずいぶん昔の時期の論稿であったが,関連した記述がある。

 該当の項目は,原子力委員会「2 環境放射能調査 (3)温排水に関する調査研究」http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/wp1974/sb20203.htm  である。つぎのように「解説」していた。

 温排水問題は,原子力発電所に限らず,火力発電所においても,共通の課題となっている。温排水の放出は人の健康の悪化や生活環境の悪化を招く物質の蓄積をもたらすものでばないが,環境への影響については,必らずしも十分解明されているとはいえない現状にある。

 補注)このいい切りぶりには感心する。生物圏内の海域において原発から排出される温水が,生物である「人の健康の悪化や生活環境の悪化を招く物質の蓄積をもたらすものでばない」などと断言できた発言は,それこそ,勇み足的な決めつけであった。

 すでに「3・11」以後に限定されなくとも,その悪影響は以前から発生しつづけてきた。ウソにかぎりなく近い「安倍晋三的な虚言」は不適切のきわみであり,しかもそれが「研究者の立場からの意見」だとすれば,反証に絶えられない独断の発言であった。

〔記事に戻る→〕 環境庁においては,水質汚濁防止法に基づく温排水の排水基準を策定するため,特定地域を選定して調査研究を進めている。また,通商産業省においては,拡散予測,水理実験等による調査研究を民間に委託して行っているほか環境審査顧問会を設置(昭和48〔1973〕年10月),発電施設の設置に先だつて環境への影響を評価検討している。

 原子力発電所から放出される温排水中に含まれる極微量の放射能の海洋生物への濃縮及び温排水の漁業への利用等について総合的に研究するため,放射能調査対策研究の一環として「原子力施設排水の海洋資源への影響に関する調査研究」を昭和46〔1971〕年度より5カ年計画で進めることとし,(財) 温水養魚開発協会に委託して,調査研究を実施している。

 補注)この「原子力施設排水の海洋資源への影響」は,原子力ムラ側の意向に照らしていわせれば,「まあ,いいからさ」「ドンマイの精神でいこうぜ」いう程度でもって,故意に無視・軽視されてきた「問題」に矮小化されていた。これはそちら側においては,それなりに意図的に形成してきた「歴史への態度」であった。

 昭和48〔1973〕年度は,日本原子力発電(株)東海発電所から温排水を取水して,チダイ,アワビ,クルマエビ等の飼育試験を実施し,放射性核種の濃度等を調査したが,いずれも,検出限界以下であった。

 また,昭和49〔1974〕年度からは,従来の試験を継続するとともに,抱卵期の飼育試験をおこなった。

 なお,昭和49年度より都道府県に対して,電源開発促進対策特別会計により温排水影響調査交付金が交付されることとなり,発電所周辺における温排水の影響調査を実施することとなったほか,昭和50〔1975〕年度からは,さらに温排水の有効利用の調査研究が委託される予定である

 補注)しかし,以上のごときいいぶんは,2011年「3・11」「東電福島第1原発事故の発生」を境にその事由を,完全に喪失させられていた。いってみればそれどころではない大問題が発生したからである。

 

 ※-5 水鳥雅文「発電所の温排水拡散評価技術」『海生研研究報告』第27号,2022年,https://www.kaiseiken.or.jp/publish/reports/lib/2022_27_01.pdf

 この論稿の「冒頭・要約」は,こう書かれている。

 a) 火力・原子力発電所に係る環境アセスメントにおいて,海域へ排出される復水器通過後の冷却水(以後,温排水と呼ぶ)の拡散評価は,海域環境や沿岸漁業等に及ぼす影響を考えるうえで,重要な検討事項のひとつである。

 b)   本総説では,我が国における温排水拡散評価の経緯と現状,拡散評価のための予測手法,海象調査とデータ解析(事前・事後調査)について,その概要や留意点を解説する。 

 c) 火力・原子力発電所に係る環境アセスメントにおいて,海域へ排出される復水器通過後の冷却水(以後,温排水と呼ぶ)の拡散評価は,海域環境や沿岸漁業等に及ぼす影響を考えるうえで,重要な検討事項のひとつである。

 以下からは,あいだの本文を飛ばし「最後に」という項目にいくと,こう書かれている。

 環境アセスメントにおける温排水拡散評価は,国による火力,原子力発電所の環境審査が始まった当初より重要な環境影響評価項目のひとつとして取り上げられ,現在まで数多くの実績が積み上げられてきた。そして,その影響評価の手法はほぼ確立されているといえる。

 しかしながら,温排水の排出による海生生物・生態系への影響や海域の水質への影響などについては,未解明な点が多く残されており,今後も継続的な研究および知見の蓄積が必要である(8頁)。

 これは,最近における関連する研究報告のなかでの見解であった。ひとつ不思議に感じたのは,放射性物質の汚染問題を,沿岸地域にせよ遠洋に向けてにせよ,参照したこの論稿には一言も言及がない点である。また,末尾に一覧されている引用文献元も,原子力ムラ関連のものがほとんどであった(→電力中央研究所からのそれが最多)。

 なお『海生研研究報告』は,公益財団法人海洋生物環境研究所が発行主体であり,それなりに研究成果を公表しているが,前段の指摘したごとき限界を完全に払拭できる法人組織ではないことも,また分明であった。

 以上までの記述に関しては,研究書としてすでに,湯浅一郎の諸著作があるが,そのなかからこの本を紹介しておく,出版社は緑風出版,2016年。この湯浅の著作は原子力村住民の執筆になるものではない。

   

※-6 原発と海洋の温暖化を問題にする議論

 1)  小出裕章「原発温廃水が海を壊す  原発からは温かい大河が流れている」『imidas』2010/03/26,https://imidas.jp/jijikaitai/k-40-059-10-03-g112

【前 文】 原子力発電所の稼働に不可欠な冷却水は,その膨大な熱とともに放射能や化学物質をともなって海に排出される。この温廃水(温排水;hot waste water)の存在,あるいは環境への影響が論じられることは少ない。地球温暖化への貢献を旗印として原子力回帰が叫ばれるなか,けっして避けられない温廃水の問題を浮き彫りにする。

 この寄稿の章構成と本文中にかかげられたその見出しは,つぎのものであった。

      蒸気機関としての宿命
      想像を絶する膨大さ
      途方もない環境破壊源
      熱,化学物質,放射能の三位一体の毒物

 補注)以上の項目は,中国側の論文,「海洋生態環境に対する海上浮体式原子力発電所の温排水の影響」『SCIENCEPORTAL China』2018年4月5日が指摘していた危惧と共通する問題要因であった。

  2)エネルギーチーム 鈴木「原発が温暖化対策にならない5つの理由」『GREENPEACE』2020-11-1,https://secure.gravatar.com/avatar/3d4543987e4754f52dbe4f03e5abb5f0?s=96&d=mm&r=g

【前 文】 2020年10月26日,菅〔義偉〕首相が2050年までの二酸化炭素(CO2 )排出実質ゼロを宣言しました。しかし,その具体策は,(相変わらず)原発を再稼働させることでした。

 世界をみれば,東電福島原発事故発生後に多くの国が脱原発に舵を切っています。(ここだけは,2021年3月に追記)

 本当に2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを実現するためには,原発は動かさず,省エネと自然エネルギーの利用によるCO2 排出実質ゼロをめざしましょう。

 なぜなら,原発は,そもそも温暖化対策にはならないからです。その理由はたくさんありますが,主に5つにまとめてみました。

 この寄稿の章構成「その〔5つの〕見出し」。〔 〕内補足は引用者。

   1.   省エネと自然エネルギーがますます遅れる〔つまり妨害する電源が原発・原子力である〕

   2.   原発はすぐ止まる〔原発の歴史を少しでも調べてみればすぐに判ること〕

   3.   原発も温暖化に貢献を進める〔前後で議論しているとおり,99%はウソなのだが……〕

   4.   気候危機回避に間に合わない〔原発の利用をこの気候危機を意識してのみ発想する立場が,そもそもの大間違い〕

   5.   原発は持続可能じゃない〔つまり持続可能な再生目標ではありるはずがない,廃炉のために半世紀・1世紀以上も時間がかかる原発である。冗談はよそう〕〔東電福島第1原発事故になった原子炉の場合でなくとも,通常に廃炉工程に入った原発の場和であっても,実際に商用に稼働させてきた期間よりも長期にわたり,その工程(後始末)作業が必要になっている〕

 ここで参照している記述は,「 2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロにするには」という見出しを付けたつぎの章では,つぎのようにいっていた。

 「それでは,どうやって,二酸化炭素排出を実質ゼロにすればよいでしょうか」と問い,具体例を長野県の場合にみいだし,そこでは以下のごとき目標値が設定されている計画・事実を説明している。

 実際に2050年二酸化炭素排出実質ゼロのためにつくられた「長野県気候危機突破方針」をみてみましょう。

     まずは省エネ,
     使うエネルギーを3割に,
     再生可能エネルギーを3倍以上に。

 長野県の計画では,これで2016年度の総排出量 1450万トンのCO2 を2050年度までに実質ゼロへ。7割減なんてできるの(?)と思うかもしれません。

 長野県の〔つぎの〕シナリオをみてください。

長野県気候危機突破方針

 ということなので,「長野県気候危機突破方針-県民の知恵と行動で『持続可能な社会』を創る-」
 ⇒ https://www.pref.nagano.lg.jp/shinko/kensei/shichoson/shichoson/kyogi/documents/06_19shiryou4.pdf からつぎの2頁と3頁を切り出し,紹介しておきたい。

長野県に原発は立地していないが
北と北西の方向には関西電力などの原発が多基あり
南方には中部電力の浜岡原発がある
   

   3) 2023年2月の初めに,こういう記事が出ていた。

 「EUの再生エネ,初めてガス抜く風力・太陽光発電量,昨〔2022〕年22% 侵攻機に投資拡大」『日本経済新聞』2023年2月2日 2:00,https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68105240R00C23A2FF8000/ は,つぎの統計図表を出していた。

水力と原子力をいっしょにする点は理解しにくいが
原発と揚力発電との関係を意識しているのか

  さらにここで関連させて,以下にかかげておく図表は,経済産業省・資源エネルギー庁 「日本のエネルギー 2020年度版『エネルギーの今を知る10の質問』「7. 再エネ」,https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2020/007/  から借りたものである。

あくまで原発にこだわる基本姿勢が強く反映されている

原発全般の廃炉工程からのみならず東電福島第1原発事故現場のせいで
これからも莫大な経費を要する原発事情関連の事実からは
目をそむけている

この作図じたいが燃料価格の上昇をやたら強調する描き方をしており

ともかく「原発,原発,原発が……」という話法であり
トンデモな説明の仕方

廃炉会計問題とは無縁に
このように原発の有用性(?)だけを意図的に誇張した図表を作成していた

要は誤導のためにする解説図
 

 ドイツは2022年かぎりで原発を全廃する予定であった。だが,「プーチンのロシア」が起こしたウクライナ侵略戦争のために2023年4月15日までは,最後に残った2基の原発を稼働させることにし,同年の冬季を乗り切る算段であって,実際そのとおりに経過してきた。

 第2世界大戦では敗戦国になったイタリアが以前に廃炉にしており,こんどはドイツも原発を廃炉(全廃)にする方針を堅持してきた。

 ところが,日本だけは原爆2発と原発事故1発をくらい,それはもうたいそう悲惨な目に遭っていながら,「3・11」の東電福島第1原発事故で国の東半分が崩壊する危機に直面した記憶は,すでに忘れていた〔い〕原子力ムラの住民たちが,いまだに「原発,原発,原発・・・」と叫んでは跳梁跋扈している。

 この「▼さ加減の優等賞」は,いったいどこから発しているのか」? アメリカは,原発体制の基底に関してのみは,日本に下駄を預けた関係にしておきながらも,実際にはその関係をただ自国には都合よく維持させている。

 ところで,岸田文雄みたく「バイデンにハグされて満面の笑み」を浮かべるのは,完全に脳天気であった。アメリカから兵器の爆買いをして,褒められてそんなにうれしいか?

 岸田自身の「国家最高指導者」としての自覚が奈辺にあるのか,疑わせる「世襲3代目の政治屋」の面目躍如をかいまみせていた。

 4) 結局,この「世襲3代目の政治屋」である甘々・無主体的なこのボンクラ首相は,「2022年8月下旬時点で原発の新増設」を決めていた。この首相は多分,原発推進をもくろむ関係方面に限ってみれば,必らずしもボンクラだったという評価は出てこない。岸田のそうした「原発に関する為政の位相」は,原子力村の面々にいわせれば,万々歳に歓迎すべき面相を表わしていた。

 つまり岸田文雄は,経済産業省や大手電力会社など原子力ムラのいいぶんに対してだけは,たいそうりっぱな「聞く力」(くわしくは「聞く力と決断し実行することのバランスが政治に求められる」という文句になるもの)をもっていたわけで,つまり彼は,自分の耳をそばだてるかのようにして,原子力ムラの要求に対してのみはきちん聞き入れていた。

 安倍晋三の原発観はたいそうひどかったが,岸田文雄もまたその同類として登場しただけであった。岸田はただ「原発の推進」しか発言していない。再生可能エネルギーのことなど念頭にないかのような姿勢をみせた。この国は本当にいよいよ「21世紀に黄昏ゆくこの社会」に向かいはじめている。このままだと,いずれ崩落するための道を歩んでいることになる。

 原発問題でも明晰になっていたように,21世紀の日本では「亡国の首相」しか登壇しなくなった。この日本の政治社会においてめだつ体たらくぶりはもはや,軌道修正は不可能なのか? 岸田文雄の為政ぶりは「世襲3代目の政治屋」としての無能・無策・無為ぶりを,存分に発揮しつづけている。

 現在開催中の国会をのぞけば,そうした「世襲3代目の政治屋」の国会議員としての性能がいかほどかは,高がしれていたとなれば,一般の国民たちは絶望的な気持ちに追いこまれるほかない。

------------------------------


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?