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戦争と国家,アメリカ「帝国」の欲望に即して考えてみるが,ロシアのプーチンも同じ穴のムジナである事実はウクライナ侵略戦争で自明

 ※-1 帝国主義の悪業・罪業

 a)「本稿」は2008年の6月30日に初めて書いていた文章であったが,米帝(アメリカ帝国主義)の本性を,ほんの少しだけ「歴史の事実:記録」をなぞって復習していた。

 欧米諸国(とくに蘭・西・葡・英・仏・独・米,そして露)の大国風の帝国主義は,アフリカやアジア,中南米諸国に対する搾取・収奪を基本にその自国の政治経済をなりたたせていた。

 大英博物館は世界各地から財宝を収奪してきたその集大成を誇る,いわば泥棒・強盗一家の貯蔵庫(保管所としての宝庫)である。日本もかつて大韓帝国を植民地していた時代,各地に所在した古墳を暴き,しかも民間人までがその盗掘作業によって金銀の財宝を収奪してきた。

 日本の国立博物館関係について関連する事情は,つぎの記事を参照されたい。


 最近では「解放」後の,とくに韓国では独自の調査・発掘により,日本の博物館が宮内庁などが秘匿している古代史が生んだ財宝よりもさらに貴重な発掘品が発見・収集されるようになってはいるものの,敗戦前に旧大日本帝国が盗んできた韓国(朝鮮側)の損失は,文化史的な観点からみて尋常ならざる重大な歴史への冒涜・収奪を意味した。

 b) 昨年の2022年2月24日であった。民主主義体制とはなんの縁もない,単なる強権・専制国家である「ロシアのプーチン」が,なんだかんだとリクツをこねくりまわしては,ウクライナへの侵攻を開始した。爾来1年と9ヶ月近くが経過してきたものの,いまだにウクライナの人びとからは歓迎されざる侵略軍として強い反撥を受けており,戦争状態がつづいている。

 旧日帝が遂行した太平洋戦争(大東亜戦争)は,1941年12月から1945年8月までの3年と8カ月ほど継続して敗戦したが,「宇と露の今回の戦争」状態は,すでにその半分以上の期間が経過した。

 ところで,ロシアでもスラブ系民族にとってみれば国家的な宗教であるロシア正教会は,ウクライナへの侵略戦争に動員させる将兵たちに対して,その神父たちが「聖水」を彼らの頭に振りかけては,ウクライナへの派兵を督戦する役目を果たしている。

 c) また,2024年10月7日になると,イスラエルが隣接するガザ地域に拠点を置くパレスチナ側の武装組織ハマスから「数千発のロケット弾攻撃」などを中心に「水・陸・空」からの総攻撃を受けて,両陣営の戦争状態が始まっていた。

 イスラエル側は当初,民間人を中心に千5百名ほどの犠牲者を強いられ,かつ240名以上の人質を取られるという「紛争(戦争)の顛末」になっていた。ハマス側のその攻勢に対抗して反撃を開始したイスラエル軍によってすでに,パレスチナ人側ではそれよりも一桁多い人びと(1万1千人近く)が,老若男女を問わず命を奪われていた。

 ハマス側が民間人のなかにまぎれこんでイスラエル側を攻撃する戦法を採っているかぎり,イスラエル側にいわせれば民間人の犠牲は不可避だという理屈を押し通す根拠になっている。

 中近東においては近代以降,さまざまなかたちで発生してきた歴史問題(紛争問題)の根源には,あのイギリス帝国そのものが居て,自分たちの支配がおよばなくなってからは「二枚舌」どころか「三枚舌」を使い分けつづけてきた結果,今日におけるイスラエルを中核として中近東地域の紛争状態を不可避に誘発させてきた。

 d) 本ブログ筆者は最近,中国帰還者連絡協議会・新読書社編『【新組新装】侵略-中国における日本戦犯の告白』新読書社,1958年7月7日という本を入手し,読んだ。この本は,たいそう有名になっていた。

 最初は光文社のカッパブックスとして『三光』の書名で1957年に発行されたが,「右翼の脅迫によって絶版とされた」のち,新読書社から1958年に初版が出版されていた。最新の刊行としてはその「新組新装」版『侵略』2002年になっていた。

 同書『侵略』を読んでみればすぐに気づかされる「日中戦争」-1937年7月7日に開始された〈支那事変〉,当初は〈北支事変〉-と称した日本帝国の中国へのさらなる侵略戦争の拡大過程のなかで,日本軍がどれほど残虐な行為を犯してきたかについては,戦犯として中国側に拘束された将兵たちが自分の口からじかに正直に語っていた。

 この本『侵略』のなかにも登場するように,ABC兵器のうち旧日本軍が化学兵器を使用していた事実は,指摘するまでもない「歴史の事実」そのものあった。例の「731部隊の」存在は敗戦後,アメリカ側がその作戦の実態に関連する情報・資料を一括して入手するという闇取引をもって,関係者の高級将官全員を免罪するといった,非常にあくどい戦後処理をしてきた。

森村誠一記事

 森村誠一『悪魔の飽食』光文社という本が1981年に刊行され,本書が,戦地中国における旧日本軍の蛮行を克明に描いていた。すると,こちら(日本)側でその事実(真実)を熟知する「当事者」をはじめ,「東京裁判史観」を蛇蝎のように毛嫌いした「大東亜共栄史観」の持主たちは,この森村誠一を「第1番の天敵(仇敵)である」かのように攻撃する事件まで発生していた。

『悪魔の飽食』の告発

 e) さて,本日に復活・再掲させることになった,それも15年ぶりに目覚めさせたこの一文は,いつもの文章に比較したら分量が控えめであった関係もあり,冒頭での序論に当たる「この段落」を,このようにいまどきの話題をとりあげつつ,いくらか書いておいてから,以下の本論となる「アメリカ帝国主義の問題」を検討・議論していくものとなる。

 ということで,15年前に書いた記述であったが,「米帝」の変わらぬ歴史的な本質が,その程度の短い時間の経過のなかで,いまもなお変わるわけなどありえず,「その本質付近の〈史実〉」をめぐり,以下の小論を充てていくらか議論をおこなってみたい。

 

 ※-2  戦争と国家,アメリカ「帝国」の欲望 -ビジネスとしての戦争問題,戦争は誰のため,なんのために起こされるのか-

     ★ 20世紀における「アメリカ〈帝国〉」の世界支配」★

 1) 戦争と宣伝

 2002年3月に日本語訳が出版されていたが,アンヌ・モレリ,永田千奈訳『戦争プロパガンダ 10の法則』草思社,という本があった。本書は,イラクにアメリカが戦争をしかける,ちょうど1年まえに訳出・公刊されていた。

 補注)イラク戦争とは2003年3月,アメリカの米ブッシュ(息子)大統領が,イラクのサダム=フセイン政権が大量破壊兵器を保持しているとして攻撃に踏み切り,米軍主体の「有志連合」軍が侵攻し,フセイン政権を倒した「事件」である。

 しかし,大量破壊兵器の保持の事実は確認されておらず,戦争の大義に疑問があった。またイラク情勢はその後も宗教対立などが続き,安定していない。

 ブッシュ(子)大統領が当時ニュースに現われ出たときの「印象」を,本ブログ筆者はいまも記憶しているが,その「▼カ息子風の雰囲気:容貌,見目形」は,まさにアメリカ版の安倍晋三であった。

補注

 本書『戦争プロパガンダ 10の法則』は,ブリュッセル大学の気鋭の歴史学者が「戦争プロパガンダの真実」,すなわち「これまでに戦争当事国がメディアと結託して流した〈嘘〉を分析,歴史のなかでくり返されてきた情報操作の手口,正義が捏造される過程を」,題名『戦争プロパガンダ 10の法則』に則して「浮き彫りにする」と謳っていた。

 本書の目次は,こうなっている。

 第1章 「われわれは戦争をしたくはない」
 第2章 「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」

 第3章 「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
 第4章 「われわれは領土や覇権のためではなく,偉大な使命のために戦う」

 第5章 「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
 第6章 「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」

 第7章 「われわれの受けた被害は小さく,敵に与えた被害は甚大」
 第8章 「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」

 第9章 「われわれの大義は神聖なものである」
 第10章 「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

『戦争プロパガンダ 10の法則』目次

 「第1次大戦からアフガン空爆まで,あらゆる戦争に共通する情報操作・正義捏造の手口を,気鋭の歴史学者が読み解く,衝撃の書」であると宣伝された本書〔原書は2001年発行〕は,2003年3月のイラク戦争開始前後におけるアメリカ政府の「イラク侵攻の正当性」に関する説明の内容が,いかに虚偽と欺瞞に満ちていたかも,予測的に説明するものとなっていた。

 いまでは,2003年3月にイラク戦争を起こしたアメリカの立場に関して,わずかでも正しい要素あるいは理由があったと弁護できる人はいない。もしも,そう断言する人がいたとしてもただ1人,もうすぐ任期を迎えるブッシュ大統領(当時の本人)だけである。

 彼だっていまさら,イラク戦争をしかけたアメリカの説明が「当初より嘘」だったことを否定していない。イラクへの侵略戦争を始めた理由など,そんなことは,もうどうでもよいのである。ともかく,アメリカという国家の立場が抱く欲望・願望を達成しようと,がむしゃらに,開戦の理由をこじつけていたに過ぎない。

 2) アメリカの帝国主義的な政治行動

 あるホームページは,アメリカ帝国の行動類型をこう表現している。

  註記)以下は,「ブッシュはなぜ戦争を始めたのか」『永井俊哉講義録』第163号,最終更新日2004年2月1日,〔元の住所は開かないので,こちらで検索⇒〕http://www.asyura2.com/0401/war47/msg/603.html 参照。これは,本記述と重なる解説が詳細になされている。少し長い文章であるが,一読の価値あり。

 --戦争の口実を求めていたアメリカ政府が「2001年の9・11」に,なんらかのかたちでかかわっていた可能性はかなり高い。太平洋戦争のきっかけとなった真珠湾攻撃,ベトナム戦争のきっかけとなったトンキン湾事件,あるいは湾岸戦争のきっかけとなったイラクのクエート侵攻など,過去の事例をみればわかるように,工作活動によって戦争の大義名分を捏造することは,アメリカの常套手段である。

 アメリカが日本を真珠湾攻撃へと誘導したのは,戦争によって大恐慌以来のデフレを克服する必要があったからである。同じ説明は,今回の9・11にも使うことができる。すなわちアメリカは,ネットバブルの崩壊によって生じたデフレの危機から脱却するために戦争をする必要があった。だから9・11は,世論を戦争へ駆り立てるため,アメリカ政府が以前から起きることを望んでいたテロ活動だったと考えることができる。

 湾岸戦争がアメリカに繁栄の10年をもたらしたのに対して,日本には「失われた10年」しかもたらさなかった。それは,日本が日本のマネーを日本の繁栄のために使うことができなかったからである。湾岸戦争でアメリカが使った金は,約610億ドルで,そのうち9割近くは,他の国が拠出した。

 ちなみに,日本が拠出した金額は,合計135億ドル。この出費は国債の発行と増税で賄われた。湾岸戦争のおかげで,アメリカは1991年に,10年ぶりに経常収支を黒字にすることができた。そして,その後ネットバブルを発生させ,他の国からの資本フローによって,経常赤字の解消,つまり財政健全化を実現させていた。

 ★「筆者のコメント」:アメリカは当時,受けとって使った該当部署から領収書を出しておらず,具体的に会計報告もしなかった。どのように費消されたのか隠している。アメリカは,湾岸戦争のために日本が用立てした戦費をほかの用途に勝手にまわして使いこんでいた。

 ★「最近の話題」:岸田文雄政権は2023年度の国家予算から5年間かけて「防衛費(軍事費)」を倍増させると決めていたが,これはアメリカ政府から不当に高すぎる兵器・武器を直接調達するために,いきなり予算額を2倍にしたものであった。

 アメリカ政府が日本に売りつけるその兵器・武器の価格は,通常の2から3倍にまで,つまりベラボウに高い水準にまで膨らませているとみるのが妥当である。そうして日本からわれわれの血税がアメリカに収奪されている関係は,前段の『永井俊哉講義録』第163号,最終更新日2004年2月1日が的確に解説していた。

筆者コメント

 経常赤字の問題を解決したいのならアメリカは,戦争ビジネスで儲けるなどという邪道を捨て,先進国らしく国内にハイテク産業を育てればよい。しかし,画期的な新技術の多くは,軍需産業における採算を度外視した研究開発から生まれるものである。たとえば,1990年代のバブルでもてはやされたインターネットも,アメリカ政府による軍事技術への投資のなかから生まれてきたテクノロジーなのである。

 ★「筆者のコメント」:経営学に関する諸理論でもそのように,戦争の必要から生れたものが多い。たとえばOR〔オペレーション・リサーチ〕がそれである。経営戦略論の講義は軍事問題の戦略論から始まる。

筆者コメント

 アメリカは今後も,デフレになると他国の金を使って戦争し,リフレをおこない,インフレになると軍縮によって軍需技術を民間に移転し,経常黒字国からの投資でハイテク産業を育て,そしてバブルが崩壊し,再びデフレになると,工作活動によって戦争の口実を捏造・・・というサイクルを繰り返すことで,他国民を搾取しながらみずからの繁栄を維持していこうとする。

 

 ※-3 ビジネスとしての戦争 & 戦争としてのビジネス

 現在も進行中の〔ここでは当時の話題〕,ブッシュ・ジュニア〔息子〕大統領が起こした対イラク戦争は,ブッシュ・シニア〔パパ〕大統領のときの湾岸戦争とは違って,多くの国の理解をえられなかった。それでも,ネオコンが強引に戦争に踏みきったのは,他国から拠出金がえられなくても,イラクの石油で戦争資金を賄うことができると計算したからである。

 ネオコンが石油利権にこだわるのは,石油そのものが欲しいからではなく,戦争資金が欲しいからである。アメリカは,石油を媒介にした三角貿易で,経常赤字を解消しようとしているが,もしそれがうまくいかなければ,直接日本に資金拠出を迫ることになる。

 ★「筆者のコメント」:「戦争は経済でありビジネスである」からこそ,本ブログも関連するテーマをかかげてあれこれ議論している。ビジネスが綺麗ごとでないという核心部分は,それが戦争と密着するときもっとも鮮明に露呈することになる。

筆者コメント

 2001年9月14日,アメリカで「ただ1人,議会で大統領の武力行使容認決議案に賛成しなかった議員がいる。彼女の名はバーバラ・リー,民主党,カリフォルニア出身の黒人女性」であった。

 「この日から,彼女は生命の危険の脅かされ,護衛なしに外出できない状態になった」。結局,「戦争が終わるたびに,われわれは,自分が騙されていたことに気づく」のであった(モレリ『戦争プロパガンダ 10の法則』9頁)。

 ★「筆者の補足」:Barbara Lee(バーバラ・リー)は,2001年9月14日,アメリカ下院議会がブッシュ大統領に武力行使を認める決議を採択したさい,ただ1人反対票を投じており,こういう文句を含む演説をした。

  I believe that within the next century, future generations will look with dismay and great disappointment upon a Congress which is now about to make such a historic mistake.

筆者補足

 ただしこのような批判は,ブッシュ大統領などアメリカ・エスタブリッシュメントにとっては「屁とも思わぬ」ものであった。バイデンにも,トランプにも,オバマにも,そうした形容が当てはまる。

 

 ※-4 小 括

 以上のような戦争宣伝にまつわる出来事・背景事情は,けっしてアメリカ帝国に専売のものではない。ついこのあいだまで,どこかの大 ○ ○ 帝国の舞台でも,長らく演じられてきた「それ」でもある。

 われわれの住むこの国の場合であれば,「非国民」「国賊」「米英のスパイか!」という定型:お決まりの罵詈雑言が,戦争反対者を封じるための殺し文句であった。

 ところで,21世紀における日本国が,かつての「戦争の時代」に似た政治社会になっていることに気づいている人は,少ないのではないか。いわば「ハードな戦時社会体制」から「ソフトな有事社会体制」への変化が工夫され創造されているのである。(以上,再掲・復活した記述)


 ※-5 アメリカの舎弟,安倍晋三君

 1)「【主張】『壁に耳あり,障子に目あり』-共謀罪法案の危険性-」『東京保険医協会』2017年2月14日,https://www.hokeni.org/docs/2017021300079/ から引用する。

 ここでは当時,2017年での話題となる。

 --「共謀罪創設法案」(組織犯罪処罰法改正案)が今国会予算委員会などで論議されている。

 過去3回,廃案とされてきたこの共謀罪法案を政府は,テロ等組織犯罪準備罪と名称変更し(組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪),準備行為も要件にくわえたからこれは共謀罪ではないと主張しているが,その本質は変わらない。

 政府は,共謀罪法案が成立しなければ2020年の東京オリンピックに向けテロ対策強化ができず,オリンピックを開催できないとまで強弁している。一方,テロ対策は現行国内法で十分できていると日本弁護士連合会ほかは,いっており,逆にこの法律がもたらす危険性の大きさを警告している。

 補注)2020東京オリンピックは,新型コロナウイルス感染症の影響があって1年遅れで開催されたが,基本,無観客試合での実施となり,共謀罪のそうした意向とはなんら関係がないかっこうで実施されていた。

〔記事に戻る→〕 そもそも共謀とは二人以上のものが特定の犯罪の実行の合意をすることで,はっきりした書面や言葉でなされなくても黙示的行為,たとえば目配せやうなずきだけでも成立するとされている。なにをもって合意がなされたかを判定するのかについて,これまでの国会での審議過程でも,政府側の答弁は結局のところ「ケース バイ ケース」であった。

 日常的にもみられる目配せや,うなずきなどが共謀のサインかどうかは捜査当局が状況から判断するということである。準備行為についても,預金を下ろす,飛行機の切符を買うなどありふれた行為も場合によっては準備行為になりうるが,認定するのは捜査当局である。共謀も準備行為も最終的な判断は捜査当局の恣意にまかされているのだ。

 戦前,戦争に反対する人々の取り締まりに猛威を振るった治安維持法も,これと同じ性格をもっていた。故奥平康弘東大法学部教授は治安維持法について,つぎのように指摘していた。

 「権力に枠づけを与えるという本質が法律にあるはずだが,治安維持法にはなかった。適用できる場合とできない場合の区別がはっきりせず捜査当局に任せられた」

 捜査当局の恣意による捜査を可能にした治安維持法を駆使し,戦前,政府は戦争反対の声を封じこめていったのである。

 また,共謀罪を検挙するためには盗聴や監視カメラなどでの日常的な監視や,潜入捜査,密告等が利用される危険性も指摘されている。対象も組織犯罪集団に限るというが,一般市民が対象にならない保障はない。

 「壁に耳あり,障子に目あり」戦前頻用された言葉だというが,一般国民が監視の目を意識しながら生活していた様子をよくあらわしている。

 一般市民が日常的に監視され,話し合いや毎日のありふれた行為が罪に問われかねない社会,自由にものをいえない,戦前の日本を彷彿とさせる社会を共謀罪法案は日本にもたらそうとしている。

 (以上は『東京保険医新聞』2017年2月15日号掲載)

 2)「共謀罪法案対策本部 パンフレット『合意したら犯罪? 合意だけで処罰? -日弁連は共謀罪に反対します!!-」(五訂版)『日本弁護士協会』https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/complicity_secret/complicity/kokusai_keiji_c.html

 「共謀罪」とは,2人以上の者が,犯罪をおこなうことを話しあって合意することを処罰対象とする犯罪のことです。具体的な「行為」がないのに話しあっただけで処罰するのが共謀罪の特徴です。しかし,単なる「合意」というのは,「心の中で思ったこと」と紙一重の段階です。

 近代刑法は,犯罪意思(心の中で思ったこと)だけでは処罰せず,それが具体的な結果・被害として現われて初めて処罰対象になるとしています。「既遂」処罰が原則で,「未遂」は例外,それ以前の「予備」はきわめて例外,しかも,いずれも「行為」があって初めて犯罪が成立するというのが刑法の大原則です。

 共謀罪は,この「予備」よりもはるか以前の「合意」だけで,「行為」がなくても処罰するというものです。このように処罰時期を早めることは,犯罪とされる行為(構成要件)の明確性を失わせ,単に疑わしいとか悪い考えを抱いているというだけで人が処罰されるような事態を招きかねません。

 よって,日本弁護士連合会はこの法案の成立に反対してきました。

 日弁連は,2013年11月に本問題に関するパンフレットを改訂しましたが,この度,現在の情勢に合わせて内容を再改訂しました。ぜひこの問題を考えるさいのご参考としていただきたく,ご活用いただければ幸いです。

 ★ パンフレット「合意したら犯罪? 合意だけで処罰? -日弁連は共謀罪に反対します!!-」(五訂版2015年9月)(PDFファイル,1.2 MB,A3両面2つ折り)。以下の住所でこのパンフレット全面が読める。
 
 ⇒ https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/committee/list/kokusai_keiji/data/kyobozai_leaflet_5.pdf

 要は,アメリカ様のためにこそ存在する法律がこの共謀罪。その必要性そのものについて,全面からではなかったのもの,その前後関係というか必然的な意味あいを説明していたのが,この※-5の前段※-4までの記述であった。これ,属国日本の悲しい現実。

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