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企業広告における性分析の問題-なぜ人間は性的な宣伝に惹かれるのか

 ※-1「広告と性」の深いつながり  

 本記述はいまから7年前の2017年7月16日に一度公表されていた一文であった。だが,その間における「時間の経過」とはほとんど関係ない問題,すなわち,いまもなお陳腐化することのない「企業広告における性分析の問題-なぜ人間は性的な宣伝に惹かれるのか」という題名をかかげて,関連する議論をしていた。

 いままではいったん未公開の状態になっていた本記述であるが,最近は経営問題をとりあげる論題が少なくなっていたゆえ,ここで「性分析の対象となっていた広告」の問題をあらためてとりあげるのもよし,という気分になった。

 なんといっても,『人間の基本的欲求は「食欲(うまいモノを喰いたい)・性欲(イイ△△と寝たい)・活動欲(なにかして楽しみたい)」なので,とくに性欲につながる欲求に引っかけて関心を惹こうとする宣伝・広告がはやるのは,自然・当然のなるゆきであった。

 しかし時に,その訴求力を高めようとするあまり,露骨な表現・演技をさせる宣伝・広告にもなりがちであり,ひたすら下品になり,失敗をすることもあることもまた,当然かつ必然の顛末となりがちであった。

 

 ※-2「宮城PR,壇蜜さん動画が波紋 唇のアップ『面白い』『趣味悪い』」『朝日新聞』2017年7月15日朝刊

 タレントの壇蜜さんが出演する,宮城県の観光PR動画が議論を呼んでいる。〔7月〕4日に動画投稿サイトで公開されてから再生回数は115万回を超えたが,性的と受けとれる表現が含まれていることから,批判も起きている。14日には,仙台市議らが動画配信の即時停止を奥山恵美子市長に申し入れた。

【参考画像】 -さきに10年以上前の画像となる,つぎの壇密の写真をかかげておく-

壇密画像

 問題となっているのは宮城県や仙台市,JR東日本でつくる「仙台・宮城観光キャンペーン推進協議会」が作成した動画。先祖が仙台藩に仕えたという壇蜜さんが,宮城県内の名所を紹介する。壇蜜さんの唇のアップ(下掲の画像は動画から切りとった)や,性的な意味として受けとれるような言葉が多用されており,ネット上でも「面白い」「趣味が悪い」と賛否が分かれている。

 補注)その宮城県が観光用の動画のなかに「出演させた」「壇蜜のくちびる」画像はこれ。

これになにか(色気)を感じるかどうか(否か)は
受けてしだいなのでなんともいえないが


 村井嘉浩県知事は〔7月〕10日の会見で批判について問われ,「賛否両論はあるが,可もなく不可もなくでは関心を呼ばない」などと評価した。仙台市議らは「品位が感じられない」と反発している。

 --この記事に指示されている動画は,当時,同時並行して制作されていた『涼・宮城の夏』という宣伝動画(画面)の途中に記載されたリンクから入り,移ることができていた。

 当時,本ブログ筆者も実際にこれを視聴してみた〔が,2024年5月現在では以下のリンク先・住所は別物化しており,いまでは目的の視聴はかなわないので,念のため〕。

 註記1)http://www.ryogujo.jp/
 註記2)http://www.ryogujo.jp/?utm_source=yahoo&utm_medium=cpc&utm_campaign=ryogujo

 村井県知事のその率直な感想は,今回のその宣伝動画については,観方によってどのようにでも理解・解釈できそうだという〈いいぶん〉であった。つまり「広告と性分析」の観点に,いかほど意図的に引きつけて解釈・分析してみるかによって,抱かれる印象もだいぶ異なるのではないかという含意があった。

 本ブログ筆者はいままで,関連するつぎの4編を記述してきた。これらのうち◇-4だけは,復活・再掲してあった。この枠内記述の次段に,そのリンク先・住所をかかげてあるので,あとで目を通してもらえれば,と希望したい。

  ◇-1 2017年4月12日「企業広告と性分析の問題(続編)-2017年4月11日,日本製粉『REGALO スパゲッティ』」の新聞全面広告について」

  ◇-2 2016年6月11日「企業広告と性分析の問題-カロリーメイトゼリーの広告と女優清野菜名の立場・役割-」

  ◇-3 2014年10月26日「タペストリーと性分析」
  
  ◇-4 2014年8月25日「『広告と性』の関連分析」

これらのうち◇-4のみ( ↓ )はすでに
本ブログ内で再公開している


 今日,まずとりあげた「記事の見出し」は「宮城PR,壇蜜さん動画が波紋 唇のアップ『面白い』『趣味悪い』」であったが,本ブログ筆者はこの「趣味悪い」にある程度まで同感する。

 この宮城県の観光用の動画であるが,誰がどのようにして制作したのか,まだ不詳であったが,制作の意図・内容はたとえば,つぎのように解説されている。

  ☆ 宮城県が壇蜜さん起用のPR動画制作,                     夏の観光キャンペーンで豪華プレゼントも【動画】☆
    = 2017年7月6日カテゴリー:DMO・観光局, ニュース =  

 宮城県は,夏の観光促進キャンペーン「仙台・宮城【伊達な旅】夏キャンペーン2017」を開始した。キャンペーンは,夏でも涼しい仙台・宮城への来訪を呼びかけるため,浦島太郎の物語に登場する竜宮城に重ねて「涼・宮城(りょうぐうじょう)の夏」と題して展開。  

 イメージキャラクターには伊達家に由縁のあるタレントの壇蜜さんを起用し,クールで妖艶な雰囲気を活かしながら,村井知事や仙台・宮城の観光PRキャラクターのゆるキャラ「むすび丸」とともに夏の仙台・宮城への訪問を呼びかけるピーアール動画も制作した。  

 このほか,「プレミアム涼・宮城 玉手箱キャンペーン」と題したプレゼントキャンペーンも実施。特設サイトからの応募で,抽選で合計800名に,東京 / 仙台間の新幹線往復チケットと5000円宿泊券,または宮城県の「うまいもの」5000円分ギフトカタログ,伊達政宗公オリジナルデキャンタのいずれかをプレゼントする。  

 さらに東京都内に設置した「金のカメ」と一緒に撮影した写真を,仙台駅2階にある「仙台市観光情報センター」で見せた先着9200名に,伊達政宗公生誕450周年記念のむすび丸ミニタオルなどをプレゼントする。

註記)https://www.travelvoice.jp/20170706-92745

 本記述を本日 2024年5月24日に復活・再掲するさい,前述のように『朝日新聞』2017年7月15日朝刊に報道された記事を材料に,過去に論述してあったわけだが,この「宮城県が壇蜜を起用して制作したそのPR動画」については,当時『産経新聞』もとりあげ報道していた。その記事の中身がこれまた,かなり悪評気味であった。このサンケイのこの記事もつづけて,紹介することにした。

「上の乗ってもいいですか?」はいささかというか
若干なりにであっても意味深

 「〈ネットの話題〉『上に乗っていい?』 唇アップの壇蜜さん宮城観光動画に賛否 村井嘉浩知事『リスクは承知』」『産経新聞』2017年7月10日 13:58,https://www.sankei.com/article/20170710-EXHDOQXMFNMKHJLL75AJEHILTY/ (このリンク先・住所は今日:2024年5月の時点でも閲覧可であった)

 宮城県や仙台市などが展開する観光キャンペーン「仙台・宮城『伊達な旅』夏キャンペーン2017」のPR動画が賛否を呼んでいる。タレントの壇蜜さん(36歳)が出演するPR動画は,動画配信サイト「ユーチューブ」で閲覧数が36万を超えているが,高評価よりも低評価の方が多く,ツイッターなどのSNSでは「風俗店のようだ」という声も出ている。

 今月から始まったキャンペーンでは,夏でも涼しい県の魅力を発信しようと竜宮城にかけて「涼・宮城(りょうぐうじょう)の夏」を展開。PR動画は「浦島太郎」をモチーフにしており,壇蜜さん演じる「お蜜」が,仙台・宮城観光PRキャラクターの「むすび丸」を「竜宮城」ならぬ「涼・宮城」に連れていくという内容だ。

 動画のなかには,壇蜜さんの唇のアップとともに「宮城、いっちゃう」「肉汁トロットロ,牛のし・た」「え,おかわり? もう,欲しがりなんですから」などのせりふが使われている。また,亀のアニメーションの頭をなでて「上乗ってもいいですか」のせりふの後に亀が大きくなるといったような描写もある。最後は壇蜜さんの唇のアップと「あっという間にイケちゃう…」という言葉で締めくくられている。

 ユーチューブにはコメントができないようになっているが,「高く評価」よりも「低く評価」が上回っている。さらにSNSでは,「わらう」「ゆるさが新しい」といった評価の声もあるが,「18禁」「風俗店のよう」「宮城県民として恥ずかしい」「これをみて宮城にいこうと思わない」といった批判の声も多い。

 〔2017年7月〕10日の定例記者会見で賛否が分かれているとの質問を受けた村井嘉浩知事は「リスクを負ってでもみてもらおうということで賛否両論あって,すでに36万アクセス。賛否両論あるのが成功につながっているのではないか。あれをみて宮城にいかないとは思わないのではないか」と話した。

『産経新聞』2017年7月10日

【参考記事】 -前後の記述に関連するいくらか言及がなされていた『朝日新聞』2017年7月17日朝刊「オピニオン」欄を,画像資料にして,つぎの段落に紹介しておく。

 そこには,以上のここまでの記述を終えてから翌日(これを書いていた当時の2017年の7月17日のことであったが)の,この『朝日新聞』朝刊「オピニオン」欄にまさに,前日「16日に記述してあった本題の内容」にぴったりであった解説記事が,別個に出ていたのである。

 また,後段に登場する人物となるが,「元・大妻女子大学の田中東子准教授」も登場していた。(画面 クリックで 拡大・可)

『朝日新聞』2017年7月17日朝刊「オピニオン」


 ※-3 感 想-壇蜜・出演のスペシャルムービーについて-

 1)くちびると歯列
 ① の動画であるが,途中においていくつもささやかれている壇蜜の文句はひとまずおいても,壇蜜の口(これは「くちびる上・下」と〔開いたときの〕「とくによくみえる下の前歯」←前掲の画像資料)の様子は,かなりいただけなかった。

 口紅を中度半端に塗ったようにしかみえないそのくちびる(唇)は,〔本ブログ筆者の〕パソコン液晶でみるかぎり,あまり冴えていない色調に映っていた(そういう化粧:メイクだったのかもしれないが)。

 とりわけ,壇蜜は女優として歯並びの矯正をしていなかったのか,やや乱杭歯的に乱れているその歯並び(それもその下の歯列)が気になってしまい,観ているほうとしては「それ相応の清潔感」というか,あるいは彼女なりにもっていると思われる「魅力(色気?)」が感じられなかった。

 そういった点に関した感想は,その抱く印象を人によって相当に個人差をもたらすと認めてよいものだが,あえてそう断定してもかまわない。となれば,壇蜜の色気も「口と歯並び」の画像が出ているコマの場所では,やや興ざめになっていた。

 2)ぷっくり膨らんだ〈ずんだ〉,肉汁トロットロ,「壇蜜に寄り添われ,凭れかけられた伊達政宗「像」が「赤面」して喜ぶ場面など,この宣伝動画のなかで登場する「壇蜜の台詞(セリフ)としぐさ」

 それらの場面・台詞は,いずれも正直な感想をいうと「ダサイ」。壇蜜の「女性としての個性(妖艶さ)の発揮」にのみ,宣伝効果を期待しているかのようなところ(狙い?)が,面白みを欠いているというか,焦点ボケではないか感じた。

 補注)これもその感じ方に個人差が大きく生じる点かもしれないが,本ブログ筆者の場合は,壇密のそのくちびるに色気は99%感じなかった。これはもちろん,他人様に強要したい個人的な感想ではない。念のため。

 3)亀の関係

 壇蜜が,途中に登場してくる亀の顔をなでて「上,乗ってもイイですか……」という箇所がある。この場面にさらにつづくコマ(映像の展開)などが,いったいなにを意味するかを,精神分析的に推理するとしたら,どのような解釈が可能であるかという関心も抱いてみる。

 とくにこの 3)の指摘は,それこそ端的に解釈していえば,男女間の性交渉型でいえば「△▽位」を想像させる。それはともかく,全体的にこの「宮城PR,壇蜜さん動画」の印象は,だいぶ安っぽい造りであった。

 壇蜜の「色気」に100%以上に(も)依存したかったかのような,宣伝ビデオではなかったかという感想が否めなかった。画像の色調も淡い水色が基本になっているが,これが効果としては,なんとも安っぽい雰囲気。この宮城県「観光用」の宣伝用動画,評判になるほどのものでもない,という受けと方をしてみたくなった。

 

 ※-4「サントリーのビールPR動画,批判相次ぎ公開中止に 『都合のいい女性像を性的に表現』の声」『HUFFPOST』2017年7月7日,http://www.huffingtonpost.jp/2017/07/07/story_n_17428554.html

 本ブログ筆者は,前段に紹介してみたような宮城県の宣伝動画に接するより前に,このサントリー関連のある宣伝(広告)を観る機会があった。その宣伝用の動画は,つぎの註記から観ることができた。ただし,2017年7月の時点で検索・閲覧したつぎの2つのリンク先・住所は,本日(2024年5月24日)に確認してみたところ,削除されていたので,現在は視聴不可である。

 註記1)https://youtu.be/-yov_iXd3gw
 註記2)https://www.youtube.com/watch?v=-yov_iXd3gw&feature=youtu.be

 a) サントリービール株式会社が〔2017年〕7月7日,新発売したビールのPR動画の公開を中止した。動画は『絶頂うまい出張』と銘打たれ,全国各地を舞台に女性のアイドルやタレントがご当地グルメやビールを味わうという内容で,「下品で差別的」といった批判が相次いでいた。

 公開中止になった動画は,新商品ビール「頂(いただき)」のPR目的でつくられたもの。7月初旬にサントリーの公式サイトや Twitter で公開された。人気出張先である北海道・東京・神奈川・愛知・大阪・福岡の6都市を舞台に,女性たちがビールを飲み, “幸せの絶頂へ向かう” 様子を描くという内容だ。

 サントリーのプレスリリースには「人気の出張先で,ご当地グルメや方言を肴に,『頂〈いただき〉』の魅力を伝えます」と記されており,総集編の動画と,各都市ごとの動画6本が公開された。

 動画では出張先で女性と出会い,食事をともにする様子が “体感” できるように描かれており,出演した女性たちは「2人っきりになっちゃいましたね」「肉汁いっぱい出ました」といったセリフを口にしている。

 商品のおいしさを表わすために,とくに「コックゥ~ん」という表現を使い,動画の最後は「コックゥ~ん! しちゃった・・・ ♡ 」という言葉と女性の顔をアップにした映像で締めくくられている。

 b) この動画がサントリーの公式 Twitter アカウント〔現・『X』〕に投稿されると,「男性にとって都合がいい女性像を性的に表現している」「気持ち悪い」など,女性を差別的に扱っていると指摘するコメントが相次いで寄せられた。

 こうした意見を受けてサントリーは7月7日,公式サイトから動画を削除した。お詫びとして,「今回皆様からいただいたご意見を真摯に受けとめ,今後の宣伝活動に活かして参ります」とコメントした。

 観た人は,どう感じるのか? 男性の意見を聞いた。この動画には,女性に限らず男性からも不快感を示す声が挙がった。 “男性目線” で女性像が描かれているという点で非難が相次いだが,男性たちは,このPR動画についてどう感じるのか。『ハフポスト 日本版』は,21歳の一般男性(大学生)に意見を聞いた。

 ◆ このPR動画を観てどう感じましたか?

  ◇ 女性を出張先の「ご当地品」のように扱っているように感じ,下品な表現もあり,不快です。

 ◆ “男性目線“ でこの動画をみたとき,いいなと思いますか?

  ◇ いいな,とまったく思いません。とくに「女性の活躍を支援する」と謳っているサントリーが,女性を見下すような広告を作っているのはとても残念です。

 ◆ この動画はなぜ炎上してしまったのだと思いますか?

  ◇ 女性を「ご当地品」扱いし,バカっぽくし,(AVを連想させるような)下品なニュアンスを使う。これは制作者側の女性に対する蔑視や,あるいは無理解によるものではないでしょうか。どちらかといえば前者だとは思います。オムツCM(※)の「無知」による炎上とは違い,女性に対する蔑視が感じられます。

サントリーのまずった宣伝

 補注)ここで,前段引用中で(※)印を説明しておく。

 2017年5月に公開されたユニ・チャームのおむつブランド「ムーニー」の広告動画のこと。母親がひとりきりで子育てにとり組む「ワンオペ育児」を肯定的に扱っているのでは(?)と,批判が集まった。  

 ユニ・チャーム広報室の担当者は,ハフポストの取材に対し,「本来の意図はリアルな日常を描き,(ママたちを)応援したいという思いだった」として,とり下げなどは予定していないと回答した。 

 c) サントリーの動画の話題に戻るが,メディア文化論やジェンダー論を専門とする大妻女子大学の田中東子(名は「とうこ」と読む)准教授にも見解を聞く予定だ。田中准教授のコメントは,つぎの追記のとおりであった。

追記 2017/7/9 10:30】 大妻女子大学の田中東子・准教授はサントリーのPR動画について,「女性だけではなくて,男性のことも侮蔑しているように感じます。地方出張をした男性が,仕事とは別に『異性との出会い』も期待している,と想起させるような動画にもみえる」などとコメントした。田中氏の見解を以下の記事にまとめた。

 補記)なお,田中東子は2024年現在,東京大学大学院情報学環教育部文化・人間情報学コースに所属する教授。

 d) 実際に,このサントリーの宣伝用動画を視聴した者としては,実際,さらにどのように感じていたか? 

サントリーの宣伝に登場した女性1
サントリーの宣伝に登場した女性2

 
 出張した出先でだが,このような若くてぴちぴちした美女たちに〔男性が,オジサンたちが!〕会える機会が,このビール(サントリーの)を飲むことによってえられるとでも期待できるかのように,つまり,その種のはかない予定調和的なイメージ(意図?)であったのか,当該の宣伝が制作されていたらしい。

 しかし,女性からも男性からも不評である反応が寄せられ,事後において「公式サイトから動画を削除した」結果を生むに至っていた。という経緯が生じていたとなれば,その動画は,いったいどのような狙いをこめて制作されたのか,あらためて訊いてみたいところである。

 宣伝とはいえ,ずいぶん「想定外の」「いい気な場面(各地で美女に会えるそれ)」ばかりが展開されていた動画の展開であった。居酒屋で偶然出会った “みしらぬ・うら若き女性” (それもこの動画に登場するような美女)が,いきなり「1週間前にフラれてしまって」などと語る,そういった場面が,簡単にしかも偶然に浮上しうるものなのか?

 いくら宣伝とはいえ,そして非現実的な夢想の世界における出来事とはいえ,地方に出張したらこのように『美女たちから声がかかってくる』という筋書きになっていた,それもあくまで「宣伝のための動画」であった。

 サントリーのビールを飲めば「必らずこういったなりゆき……」になる,といったごとき筋書きではけっしてありえないけれども,はたして,その種の「ような “僥倖” 」が,そう簡単に起こるとはとうてい思いおよばない。

 この動画の「ほかのある部分」(登場する女性たちの文句)を,もう一度引用しておく。出演した女性たちはまた,「2人っきりになっちゃいましたね」とか「肉汁いっぱい出ました」といったセリフを口にしている。

 宣伝する商品のおいしさを表わすために「コックゥ~ん」という表現を使い,動画の最後は「コックゥ~ん! しちゃった・・・♡」という言葉と,そういっている女性たちの顔をアップにした映像で締めくくられていた。

 この宣伝動画を観た〔それも男性〔ないしはオジサンたち〕〕が,のどをゴックンとでもさせて(鳴らして),サントリーのビールを飲みたくなるという寸法だったのか? 

 そこに登場するしだいとなった,まことに “見目麗しい女性たち” に遭遇したとき,そのように同席することになれるらしかった彼女らに対して「コックゥ~ん! しちゃった・・・♡」という気分にさせえる,ということだったのか?

 e) 今回の「この動画の評判の悪かった理由」がよく分かるような気がする。

 問題は,こうした動画を制作したサントリー内の部署がどこであり,また担当した人材が誰であり,何人いて,どのような過程(発案⇒企画⇒制作⇒放映)を経て,広告として世の中に流されるに至ったのかという点である。多分,男性社員が中心になって企画,実現させた宣伝だと推理してよい。

 ということであれば,部長次元(最高経営層)での指導・監督は,この宣伝制作の舞台においては直接,入っていなかったのか? とくに,サントリーにも大勢いるはずの女性社員たちに事前に,この動画を試作段階で観てもらい,感想をもらっていなかったのか? 

 まさか,女性たちが制作した動画ではあるまい。そういうふうにしか理解するほかなかった。

 ここではサントリー社が人事・労務制度に関して公表していたつぎの統計を紹介しておきたい。最新の2023年12月31日現在における関係情報であったが,あまり芳しくない数値が並んでいた。

パートタイマーについて賃金差異(格差)が記入されていないのは
単に賃金差別がないから・・・

 f) サントリーは大昔から,宣伝・広告では画期的な方法を編み出してきた会社であるが,今回(2017年の時)は駄作(失敗策)をわざわざ公表してしまい,流通させていた。それも会社の評判を落とすだけの平凡な作品になっていたから,マーケティングの宣伝活動としては失点を喰らうはめになっていた。

 最後に参考にまで,『サントリー歴代傑作CM集【日本最高のセンス】』という評判をえるほど,サントリーは宣伝上手であった事実は,特筆大書しておくべきであった。

 その付近の宣伝に登場した人物の氏名を挙げておく。

 野坂昭如,黒澤 明,大原麗子,ペンギン,井上陽水,和久井映見,山口智子,永瀬正敏,田中裕子,トミー・リー・ジョーンズなどなどが,サントリー流の「見事な時代感覚」でもって宣伝に登場させられていた。

 最近は矢沢永吉も登場させていた。

 また,つぎの関連する記述がたいそう参考になるが,ただし,サントリーにきびしい批評をくわえる要素は,いっさい言及していない。この文章を書こうとした動機が訳ありであって,その種のその付近に留まる筆致に終始していた。


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