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岸田文雄は首相として東電福島第1原発事故の汚染水(処理水)問題を永遠に理解できないのか

 ※-1「世襲3代目の政治屋」の無神経・無感覚とその横柄・傲岸ぶり


 汚染水処理問題でも鉄面皮ではないかとたっぷり思わせるほど「政治屋としての人間性」を疑わせつづけている「理性不感症的な岸田文雄の『首相としての采配・行為』」は,国民たちを頭ごなしに完全に愚弄しており,その「反国家的・非民主的な精神」を剥き出しにしたままの状態で,われわれの前に実在している。

【参考記事】

  
 つぎの『ツイート』(X)における日本共産党書記長小池 晃の発言を聞いてみれば分かるように,東電福島第1原発事故現場のある福島県にまで出張っていったにもかかわらず,この原発事故の悪影響を受けてからすでに12年半も経っているいまにおいて,福島漁連(福島県漁業協同組合連合会)の関係者には出向いて合うことをしなかった。

どうしてここまで人間としての感覚がにぶいのか?

 もしかするとこの首相は,原発事故の被害者の一群である漁連の関係者に「合う」という機会を,「遭う」ととらえているのかもしれない。あの安倍晋三という「世襲3代目の政治屋」も,非常に悪質な政治家失格の「それ,ダメ」国会議員であった。だが,この岸田文雄という首相も,安倍晋三以上かあるいは未満に政治家としては中身がカラッポでありながら,徹底的に国民たちという存在を無視する行動を重ねてきている。

 本日(2023年8月23日)の新聞朝刊は,本ブログ筆者の購読する『毎日新聞』と『日本経済新聞』であるが,両紙はきわめて対照的な報道をしていた。『毎日新聞』は批判的な論調をまだ維持しているが,『日本経済新聞』は「これで原子力村の人びとは,ひとまず安心」みたいな論調であった。

 『毎日新聞』朝刊の1面の記事だけを画像資料にしてつぎにかかげておく。

「忍従」とは「屈従」であり「排除」であり
「無視」であり「差別」を意味する

 だいたいにおいて,処理水という名の汚染水が太平洋に放出する(排出処分される)ことが,そもそも東電福島第1原発の廃炉につながるのだというリクツの立て方が理解できかねる。それは相当に「粗雑な論理」でしかありえない「現実離れ」のいいぶんである。

 以上の指摘はさらに,以下の記述にように説明していく論点になる。

 基本として順序は逆であった。廃炉工程の手順じたいが今後においてその見通しが立てられる可能性があるのであれば,そのあとにつづく問題,すなわち随伴している汚染水発生の問題も,追って解決の見通しが着く期待が持てないわけではない,という段取りがひとまず想定できる。

 しかしそうはいっても,10年単位ないしは半世紀・1世紀単位でもって,なんとか今後における「廃炉の作業」への見通しが展望しうるのかどうか,という程度の進展しか,実際には期待できないとして思えないのに,

 汚染水(処理水)を海洋放出すれば,まるで東電福島第1原発事故現場の後始末に明るい見通しが抱けるかのように,それはだから,まさしく〈妄想〉としか形容できない,しかも奇妙な報道がなされている。

【参考画像資料】-『東京新聞』から-

「♫ 融けて流れりゃみな同じ 🎧」
約束はみごとに破った
こんどの選挙では自民党を壊滅させねばなるまい


 ※-2 『毎日新聞』朝刊の「社説」の引用・紹介をもってする掘り下げた議論

 つぎは本日(2023年8月23日)『毎日新聞』朝刊の「社説」であるが,処理水という名で呼ぶところの汚染水,およびトリチウムの理解に関していうと,毎日新聞の編集委員たちの勉強不足(取材不全)が気になる。

 以下にこの社説を参照しつつ批評もくわえて記述する。

   ★〈社説〉処理水あす海洋放出へ 誠意欠いた政治の無責任 ★
        =『毎日新聞』2023年8月23日朝刊=

 東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水について,政府は24日に海洋放出を始めると決めた。「関係者の理解なしに,いかなる処分も行わない」と約束しながら,誠意ある対応を尽くしたとはいいがたい。

 補注)この岸田文雄が首相の立場としての国民たちに対して示した基本の態度は,不埒で無礼千万である。最初に触れたように,この首相は福島県にいっても,原発事故の大きな被害を受けている現地の漁連や全漁連の代表者に会おうとしなかった。多分,合ったとしたらまともに対話が不成立になること必定であったというふうにとらえておけばよいのか,などと想像してもみる。

 なにせ,この首相は自分の口から出す「首相としての基本的な発言」のすべてが,ここ3ヵ月ほどかけて『週刊文春』の集中砲火を受けている木原誠二官房副長や国家官僚たちの説明・解説を,ただオウム返しに発言することしかできていなかった。

 いわば「無能・無策」である事実において,「政治家としての専任的な知恵」を基本的にもちあわせない,つまりは総理の仕事をおこなうにしても,森羅万象に関して無知だらけなのが,現在の総理大臣であった。

 要するに,岸田文雄が政治家としての「信条や理念や定見」というものをいっさい備えていない日本の首相であった事実は,この「世襲3代目の政治屋」が2021年10月4日に首相の座に就いてからというもの,ますます明快になっていた。

 「こんな人」になぜ,現状のごとき「落ち目行路」を突きすすんでいる日本国の運営が任されているのかという事実が,そもそも,国家の為政全般に対して恐怖心を惹起させてやまない。 

〔記事:社説に戻る→〕 除去できない放射性物質トリチウムの濃度を,国の基準の40分の1未満になるまで海水で薄めた後,海底トンネル経由で1キロ沖合に放出する。

トリチウムの放射線は紙1枚でさえぎることができ,体内に取りこんでも水分として排出される。雨や川,水道水などにも含まれており,環境や生態への影響は確認されていない。

 補注)トリチウムに関したこの理解は,その反極に位置する有害説が科学的に説明されてもいるゆえ,このように楽観的な解釈だけを述べる「社説」は,事実の伝え方として「間違えている」。

 トリチウムの有害性について本ブログは,昨日(2023年8月22日)の記述で触れていたが,本ブログ内でトリチウムの問題は5回に分けて詳論していた。

 それらは,つぎの記述であった。いずれも長文なので,読まれる人は「覚悟」のうえ,クリックをお願いするしだい……。

 ①「東電福島原発事故現場から湧出する汚染水が処理水に加工されても,放射性物質に実質汚染された状態に変わりなし」
  2023年7月10日,https://note.com/brainy_turntable/n/nfd339d55fdd3

 「東電福島第1原発事故現場の汚染水問題,トリチウムが人間・生物に危険であるその害悪性(1)」
  2023年6月2日, https://note.com/brainy_turntable/n/n19e09824cd28

 「東電福島第1原発事故現場の汚染水問題,トリチウムが人間・生物に危険であるその害悪性(2)」
  2023年6月3日,https://note.com/brainy_turntable/n/na59c46ef764d

 「東電福島第1原発事故現場の汚染水問題,トリチウムが人間・生物に危険であるその害悪性(3)」
  2023年6月4日, https://note.com/brainy_turntable/n/n1e4f0d36bc7b

 「東電福島第1原発事故現場の汚染水問題,トリチウムが人間・生物に危険であるその害悪性(4)」
  2023年6月5日,https://note.com/brainy_turntable/n/n557089a30a9b

〔記事に戻る→〕 東電は原子力規制委員会が認めた方法に従って放出し,政府とともに水質を監視する。国際原子力機関(IAEA)の職員も原発内に常駐し,透明性を確保する。

 補注)この国際原子力機関(IAEA)は,広い視野で観れば「世界規模の原子力村」による自主的な監視機関であるといった基本性格に鑑みれば,過大な期待をこれに寄せることはできない。日本はIAEAに対してけっこうな金額を分担している。

 まだ『毎日新聞』社説の引用中だが,韓国紙『ハンギョレ』がつぎのごとく説明していたので,日本側としてはこれをどのように受けとめるべきか,という問題意識をもって読んでみたい。

   ★ 日本のメディアも「IAEAの中立性に疑問…
             資金提供に『配慮』働いた可能性も」★

    =『ハンギョレ』2023-07-10 06:12,更新 07-10 12:44 =
    = https://japan.hani.co.kr/arti/international/47253.html

 東京新聞「日本,以前から巨額の分担金や拠出金を支出」

 ラファエル・グロッシ国際原子力機関(IAEA)事務局長は〔7月〕4日午後,東京の首相官邸を訪れ,岸田文雄首相に汚染水海洋放出の安全性などを検討した最終報告書を提出した。(東京/ロイター・聯合ニュース)

 日本でも国際原子力機関(IAEA)が福島第1原発の汚染水放出の安全性を評価できる中立的な機構なのかに疑問を呈する声があがっている。原発拡大をめざすIAEAの性格や日本の高い分担金などが理由として挙げられる。

 東京新聞は〔7月〕8日付で,「かねて日本政府は,IAEAに巨額の分担金や拠出金を支出してきた」とし,「IAEAのお墨付きは中立的な立場から出たと受け止めるべきか」という問題を提起した。同紙は「資金提供する組織に評価を求めれば『配慮』が働く恐れがある」と強調した。

 IAEAが汚染水の海洋放出の安全性を判断するのに適した組織ではないと主張する背景には,日本政府の高い分担金の支出がある。IAEAの正規予算分担率(2021年基準)によると,日本は8.32%で,米国(25.25%),中国(11.15%)に次いで3番目に多い。日本政府は分担金とは別に「拠出金」も相当な額を出している。2021年には拠出金(約11億4000万円)を分担金38億6000万円の30%水準も支出した。

 東京新聞が今〔2023〕年度予算を計算したところ,拠出金は外務省だけでなく日本原子力規制委員会事務局である原子力規制庁(約2億9千万円),文部科学省(約8千万円),経済産業省(約4億4千万円),環境省(約3千万円)も出していることが分かった。

 IAEAに派遣した職員の人件費などが拠出金に含まれるという。文部省の担当者は同紙に対し「(日本)政府全体としてもIAEAにたくさんお金を出しているので,職員をたくさん送り,存在感を確保するということ。日本の利益のためというよりは,国際貢献のためだ」と語った。

 IAEAは原発を持続的に拡大するため,汚染水の放出を安全だと判断せざるをえなかったという主張も出た。日本政府やIAEAは,一般の原発から出ないセシウム137やストロンチウム90など人体に致命的なほかの放射性物質は基準値以下に除去されるとし,トリチウムのみを争点とした

 トリチウムは韓国や米国,中国など原発爆発事故がなかった一般の原発からも出てくる放射性物質。東京新聞は「IAEAが福島でトリチウムの海洋放出に『待った』をかけると,世界の原発でトリチウムの放出に『待った』がかかる。原発を稼働させる国はトリチウムの処分に困ることになる。裏を返せば原発が稼働できなくなる」と強調した。

 日本政府と東京電力の利益だけに焦点を合わせた偏向性も問題として指摘された。福島大学の後藤 忍教授は,同紙とのインタビューで「表向きは福島を尊重するという形だったが,地元の漁業者などの声はIAEAから軽視された。その点はもっと指摘されるべきだ」と批判した。

 補注)この『ハンギョレ』紙の『東京新聞』を参照しての指摘は,このとおりに今回,岸田文雄が福島県民たちに対して示した「国民無視」の態度にも露骨に発露されていた。

 IAEAが4月,汚染水の海洋放出が「国際安全基準に合致する」との結論を出したのに続き,日本原子力規制委員会は〔7月〕7日,最後の行政手続きである汚染水放流設備「使用前検査」と関連し,東京電力に終了証を出した。日本の漁業者たちと市民社会,周辺国の懸念にもかかわらず,来月海洋放出に踏み切ることが有力視されている。

IAEAは原子力村の付属機関か

〔以下は,記事(『毎日新聞』社説)に戻る ↓ 〕

 △ 風評被害対策の徹底を △

 しかし,風評被害などの懸念は払拭(ふっしょく)されないままだ。放出に反対する全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は,岸田文雄首相に面会後,「約束は破られていないが,果たされてもいない。科学的な安全性への理解は深まったが,社会的な安心とは異なる」と述べた。

 補注)この風評被害はまるで「風に乗って舞うだけの〈被害感〉」という調子(理解?)で語られている。だが,風評を生む原発事故「現場(いわば基盤)」そのものの処理に関しては,こう理解しておく必要があった。

 溶融して破壊された原子炉3基から,いかにしたらデブリの取り出しができるのかといった問題は,この事故原発が廃炉工程に入れる以前の超難関として立ちはだかっている。ともかく,過去の12年と5ヵ月はそうであった。つまり,廃炉「以前」の後始末が,もっとも重要な先決問題として厳然たる事実として介在している。だが,それがいまだに手つかずの状態にある。

 「汚染水⇔処理水の問題」は,この事故原発の廃炉によって同時に解決しうるものゆえ,モノゴトの順序としては「廃炉⇒汚染水(処理水)」なのであって,汚染水を太平洋に流しこむことが決めたからといって「事故原発の廃炉が可能になる」「その条件がそろう」みたいな,そもそも「最初からボタンを故意にかけ間違えた」ごとき説明は,話にもならない完全なる謬説・であった。

 それは,文字どおり逆立ちした説明であり,水は低いところから高いところへ流れるといったたぐいの説明とまったく同じに,根本からどうにかしている。

〔記事に戻る→〕 国民の声に耳を傾け,丁寧に合意形成を図るのが,政治の役割だ。しかし,放出決定に至る過程では,不誠実さが目に付いた。

 安倍晋三元首相は2013年9月,東京オリンピックの招致演説で汚染水の状況を「コントロール下にある(under control)」だと,強調した。保管タンクからの漏出が相次ぐなか,現実からかけ離れた発言だった。

 安倍政権と東電が2015年に「関係者の理解」を処分の前提条件に据えたものの,2021年に菅義偉政権が地元の反対を押し切る形で海洋放出の方針を決めた。

 補注)安倍晋三の場合,そのアンダーコントロール発言に代表されるように,原発問題に関してはこれまた完全に,大ウソをつきつづけてきた。そしてその後,そのまま他界していった。

 いま,岸田文雄がまた「処理水(汚染水)の海洋放出(垂れ流しとしての排出)」が可能となれば,これにしたがい事故原発の廃炉も促進しうるみたいに,お話にもなりえない,いうなれば東電福島第1原発事故現場の実情(科学的にその本質的な状態・状況を理解すること)とからは,はるかに離れた絵空事を口にしていた。

〔記事に戻る→〕 安全性を検証したIAEAの包括報告書が提出されたのち,地元での説明に当たったのは西村康稔経済産業相ら閣僚だった。岸田首相は〔8月〕20日に福島県を訪れたが,第1原発で東電関係者に指示を出しただけで,地元の漁業関係者らに面会さえしなかった。

 処理水を放出すれば風評被害が広がる恐れがある。一方,保管が長引けば復興の足かせになり,住民の帰還が遅れかねない。地元はジレンマに苦しみつづけている。

 にもかかわらず,政治が福島の人たちの思いに寄り添う場面はほとんどみられなかった。むしろ,放出の決定をめぐり,漁業関係者に「踏み絵」を迫るような構図が続いてきた。

 補注)この岸田文雄の姿勢は,かつてにおける日本公害史の初期段階を彷彿させる。国民(人民・市民・庶民)など,まさに虫けら同然のあつかいをいまどきに平然とおこなっている。この首相,何様か?

〔記事に戻る→〕 現在,タンクの容量全体の98%が使用されている。処理水はいまも日々90トンずつ増えており,このままでは廃炉作業の支障になりかねないのは事実だ。政府・東電には,計画を安全に遂行する重い責任がある。

 ただし,東電は,過去に汚染水の漏出などのトラブルをたびたび起こしてきた。

 2018年まで,トリチウム以外の放射性物質が除去し切れていない水がタンクの8割を占めているという事実を公表していなかった。情報公開に対する消極的な姿勢も含め,東電への不信感は根強い。

 △ 廃炉の見通し示さねば △

 放出は少なくとも30年間は続く見通しだ。その間,風評被害のリスクは残り続ける。政府は水産品の値崩れが起きないように買い支え,損害が生じれば東電が賠償する。漁業の継続を可能にする支援策も実施される。

 だが,そもそも海洋放出の安全性にかかわる情報について,政府が丁寧に説明し,理解を深める努力を十分にしてきたとはいえない。被害を生じさせない息の長い取り組みが求められる。

 処理水の放出は,「廃炉」というさらに大がかりな事業のプロセスの一つに過ぎない。

 補注)『毎日新聞』の社説もこのように処理水の問題は,廃炉工程の一部分に過ぎないと説明している。間違っても,処理水(汚染水)の問題解決が,ただちに廃炉につながるという理解は妥当しうる議論ではなかった。

〔記事に戻る→〕 原子炉内で溶け落ちた燃料デブリは880トンと推定され,取り出し開始のめどすら立っていない。「2051年ごろ」とする廃炉完了をめざす工程表は事実上,破綻している。きびしい現実を直視しなければならない。

 補注)「3・11」から12年と5ヵ月が経過した現時点まで,東電が取り出せたデブリは耳かき一杯分であった。それも試験的に試みてえられた結果であり,これからいつごろになったら,その2杯目が取り出せるのかといった話題に留まっている。

 したがって,まともな専門家であれば,原子力工学を専攻しない研究者であっても,その2051年というくぎりでもって,廃炉が完了するなどといった展望は,以前から,画餅である点は容易に予測がついていた。われわれのように素人の人間でも自分なりに勉強していれば,その程度の将来は既知に属する知見であった。

 「2051年-2023年=28年」という年数になるが,この期限で東電福島第1原発事故現場の廃炉工程が完了するなどと思うのは,白日夢でなければ薬中の人間の精神状態でなければありえない。

 たとえば,米スリーマイル島原発2基のうち,1979年に圧力容器内での溶融事故を起こした2号機は,1号機の営業運転がを終了してから同時に廃炉作業に取りかかることになった。その運転終了を受け手,このあと60年かけて廃炉作業に取り組むと報道されていたのは,2019年9月21日であった(『朝日新聞』https://www.asahi.com/articles/ASM9P2FPVM9PUHBI00C.html)

スリーマイル島原発事故は圧力容器内で溶融が
収まっていたが,東電福島第1原発事故は格納容器からさらに
建屋の基礎まで溶融しているかもしれない
いまだにより正確な情報はえられていないが・・・

 スリーマイル島原発の廃炉・後始末関係について,ウィキペディアはこう解説している。

 〔事故を起こした〕2号炉は1979年8月から1993年12月にかけて約10億ドルの費用をかけて除染が実施され,溶融した燃料もほとんどが除去されたが,汚染水によって放射能汚染された建屋のコンクリートを除染するには実用的ではなかったことから,時間経過による放射能レベルの減少を待つこととなり,建屋と冷却塔は残されている。

 一方残った1号炉はその後も営業運転がおこなわれ,2034年までの運転許可を取得していたが,2017年に保有していたエクセロン社が,再生可能エネルギーの普及やシェールガスによるエネルギー価格の低下と,福島第1原子力発電所原発事後の運営コスト上昇による採算性の悪化を主な理由に,2019年9月に閉鎖することを発表し,2019年9月20日に営業運転を終了した。

 今後1号炉は2079年まで延べ60年間に渡って廃炉作業がおこなわれる予定であり,残されていた2号炉の建屋・冷却塔も2041年に解体を開始し,2053年に解体を終了する予定である。

スリーマイル島原発の廃炉

 事故を起こしていない原発であっても,前述した程度で「廃炉の期間」を設定・予想するのは,どうにかしている。なお,スリーマイル島原発の事故は,国際原子力事象評価尺度(INES)においてレベル5の事例とされた。東電福島第1原発事故は,その最高のレベル7であった。

INES

 以上の説明だけでも分かるはずである。これから23年間で,東電福島第1原発事故現場の廃炉(後始末)ができるはずなどありえない。1世紀かけてようやく終わる程度であると予測するほかない。チェルノブイリ原発事故の跡をみればよい。こちらは廃炉作業ができたのではなくて,石棺工事をすでに2度までおこない密閉状態にしてあっただけである。

 したがって,東電福島第1原発事故現場に関して廃炉というコトバをもちだしてなにをいっても,現在のところはムダ・ムリである。その状況のなかで,岸田文雄が原発のなにをどのくらい理解できたつもりなのか,つぎのように騙れる境地については,奇怪どころが怪奇小説並みに謎解きが必要かもしれない。

 東電福島第1原発事故現場に関する報告を聞いてきた経験にもとづいていえば,「廃炉の完了」に関した〈みこみの話〉は,これをもちだすたびに,「再び」どころか「なんどでも」「約束をないがしろにするような事態」を事後にもたらすことになる。

 岸田文雄があと何年,政治家として現役の活動をできるかわからぬが,無責任な発言しかしようとしない,まさに「世襲3代目の政治屋」の発言は,なにひとつ信頼できない。無責任にも,放言にしかなりえない発言はたいがいにすべきである。

 思いおこすとあの安倍晋三の場合,「アンダーコントロール」という発言をしたあと,この発言をほんのわずかでも反省したことがあるか? なかった。岸田文雄は,このアベの背中をみながらとなるが,実はトボトボと,そしてなにやらブツブツつぶやきながら歩いている「御仁」に過ぎない。

〔記事に戻る→〕 岸田首相は「今後数十年の長期にわたろうとも,処理水の処分が完了するまで政府として責任をもって取り組む」と明言した。再び約束をないがしろにするようなことがあってはならない。

 処理水の放出を,被災地の復興にどのようにつなげるのか。世界最悪レベルの原発事故を起こした国のトップとして,道筋を内外に示す責任がある。(引用終わり)
 

 ※-3 原発・事故・廃炉の現実問題はどのように議論したらよいのか

 以上,岸田文雄の福島行きに合わせた議論をしてみた。本日(2023年8月22日)の新聞朝刊には,以上に取り上げ議論した記事以外にも,関連した多くの報道がなされている。

 しかし,それをすべて参照しつつ批評していたらきりがないので,もっとも基本的な論点についてとくに「汚染水・処理水問題」をめぐる観方に関する議論になっていたが,その核心の問題点だけは指摘し,批判もくわえてみた。

 いま世界中で利用されている原発はおよそ450基ほど(近く)とみられるが,このなかの1基でも今後において大規模な事故を起こすことじたい,絶対に許されない地球「側」の絶対的な条件である。

 『日本経済新聞』は,原発推進派の立場から本日(2023年8月23日)の紙面を構成していたが,日本原子力村のなかでは言論界での有力な1社であるとはいえ,そのいいぶんのひとつひとつが眉ツバものばかりであった。

 ましてや,現状においてチョボチョボ再稼働をしはじめ,それもオンボロ原発を60年期限まで(休止中のその期間はその期限に算入しないでよいなどと,これまた工学的見地からして非常識を担保にして)稼働させてよい事例となれば,いくら保守・点検・整備などをしっかり実施していても,事故が発生する確率は確実に上昇していく。この事実は工学の基本知識である。

 信頼性工学を小バカにしきったような原発稼働期間延長策は,愚の骨頂である。また痛い目に会うかのように,原発の大事故がどこかの国の原発で発生したりしたら,地球環境には最悪の事態となる。

 ちまたではSL観光が以前からブームになっているが,この蒸気機関車のなかにはほとんど新造と同等なくらい補修・改良工事をくわえているものもある。原発の場合は別口であって,特別視できるのだなど高慢に固執していたら,そのうち強烈なしっぺ返しを受ける。

 しかも,原発の場合は放射性物質の関与があって,その保守・点検・整備の作業に格別の困難が伴うことはいうまでもない。しかし,なぜか原発だけは特別あつかい中である。

 《悪魔の火》を焚いてヤカンの水を沸騰させてタービンをまわし,電力を生産する原理に過ぎないが,それでも一度大事故を起こしたぶんには,もう取り返しのつかない深刻かつ重大な被害を,必らず発生させる。

 リメンバー,けっして忘れるな! 「3・1の東電福島第1原発事故」はなかったのか? いっておくが,その後始末をみるに,その廃炉工程の領域では99.99999%(くらい)が未了である。

原発事故の場合だけはとくに絶対に,「喉元過ぎれば熱さを忘れる」わけにはいかない。その熱さ=放射性物質の〈悪魔的な有害性〉は,どのみち半永久的に残る。

 いま現在でもまだ,福島はそのために苦しんでいる地域があるではないか? これがなくなるという見通しはもてない。森林地帯では,放射性物質による汚染がひどい地域がいくらでもある。福島県だけの被害ではない。

岸田文雄君よ,自分にできもしないことを請け合うのは,たいがいにしておくべきである。

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【参考記述】

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