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原子力発電所が不要の時代に「原発の新増設」を決めた首相岸田文雄は無知と愚鈍の「世襲3代目政治屋」

 原子力発電にいまだに固執する「無主体性もなはだしい首相:岸田文雄」は,経産省「原発推進派」の盲目的な手先なのか? 「世襲3代目の政治屋」としてなんら自身の理念や発想すらもたない自堕落な精神構造によって,この国を真っ逆さまに奈落の底に向けて誘導中であるこの総理大臣だが,自分の立場を関するそのの事実じたいに気づかぬほどにうつけであるのか。

 ※-1 原発の「安全神話」は破綻・崩壊・霧消済み

 久米三四郎『科学としての反原発』七つ森書館,2010年は,いまから45年も前の出来事,それも「伊方原発行政訴訟」に関してであったが,地域「住民が暴きだしてた “安全神話” のからくり」を門前払いし,「権力の手先」の立場に立ったかのような判決を下した「裁判所・判事たち」を批判しつつ,こう書いていた。

 「伊方原発の設置に躍起となっていた人たちから,『近代科学を理解しない馬鹿者』とののしられ続けた一握りの田舎者が,多数の専門家を要した強大な権力と金力とを相手に,法廷という正規戦の場で4年8ヵ月にわたって戦いつづけてきた。なにがその原動力であったのか,また,強大な相手をたじろがせた要因はなにか,そしてえられたものはなんだったかを,その経過の中から明らかにしたい」(75頁)。

久米三四郎『科学としての反原発』七つ森書館,2010年

 いまから45年も前といったら1978年(昭和53年)のことであった。そのときに裁判所が判決を出した原発訴訟についての話題が,前段に引用した文章に描かれていた。その後においても原発裁判に関しては,同様な判決がなんどでも下されてきた。

 その1978年よりもさらに24年前の1954年(昭和29年)であった。現在もむろん,原発推進の立場・イデオロギーを社是とする読売新聞社は,みずからがつぎの本の編者になって,書名を『ついに太陽をとらえた-原子力は人を幸福にするか-』と称した〈原子力の啓蒙書〉を公刊していた。この本の校閲者には,東大助教授・理学博士中村誠太郎の姓名も記載されていた。

読売新聞社編『ついに太陽をとらえた』1954年

 2011年3月11午後2時46分,東日本大震災が発生した。この大地震が発生してから約25分後,15時01分には岩手県に到達し,その後,北海道から千葉県・房総半島までの広い範囲に大津波が押し寄せた。
 

 ※-2「文藝春秋」編集部「『福島第1原発は津波が来る前に壊れていた』元東電社員 “炉心専門家” が決意の実名告発--文藝春秋特選記事 事故検証結果は『津波が原因』」。しかし,それは間違っていた……」『文春オンライン』2019/09/25,https://bunshun.jp/articles/-/14271

 『文春オンライン』にほうに,その骨子が紹介されていた『文藝春秋』〔2019〕9月号の特選記事が,以下に引用する一文である。(初公開,2019年8月13日)

 a) 福島第1原発事故から8年

 大事故を受けて,一時は「稼働中の原発はゼロ」という状態にもなったが,新しい安全基準(「新規制基準」)が定められ,現在(2019年8月当時のこと),国内で7基の原発が稼働中だ(玄海原発4号機,川内原発1・2号機,大飯原発4号機,高浜原発3・4号機,伊方原発3号機)。

 補注)2023年3月時点では,以下の図解どおり,国内で10基の原発が稼働していた。

10基の原発が稼働,2023年3月現在

 2013年に定められた「新規制基準」について,電気事業連合会はこう説明している。

 「東京電力(株)福島第1原子力発電所の事故では地震のあとに襲来した津波の影響により,非常用ディーゼル発電機・配電盤・バッテリーなど重要な設備が被害を受け,非常用を含めたすべての電源が使用できなくなり,原子炉を冷却する機能を喪失しました。

 この結果,炉心溶融とそれに続く水素爆発による原子炉建屋の破損などにつながり,環境への重大な放射性物質の放出に至りました。こうした事故の検証を通じて得られた教訓が,新規制基準に反映されています」

原子力発電所・新規制基準について

 b) 元東電社員が突き止めた本当の事故原因

 要するに,「津波で電源を喪失し,冷却機能を失ってメルトダウンが起こり,重大事故が発生した」ということだ。

 この点に関して,津波の規模が「予見可能だったか,想定外だったか」という議論がなされてきた。しかし双方とも「津波が事故原因」という点では一致し,多くの国民もそう理解している。

 ところが,「津波が原因」ではなかったのだ。

 福島第1原発は,津波の襲来前に,地震動で壊れたのであって,事故原因は「津波」ではなく「地震」だった-- “執念” ともいえる莫大な労力を費やして,そのことを明らかにしたのは,元東電「炉心専門家」の木村俊雄氏(55歳,当時)だ。

木村俊雄,元東電社員

 d) 〔木村俊雄いわく〕メルトダウンのような事故を検証するには,『炉心の状態』を示すデータが不可欠となるのに,4つの事故調は,いずれもこうしたデータにもとづいた検証をおこなっていないのです。

 ただ,それもそのはず。そもそも東電が調査委員会に,そうしたデータを開示していなかったからです。そこで私は東電にデータの開示を求めました。これを分析して,驚きました。

 実は『津波』が来る前からすでに,『地震動』により福島第1原発の原子炉は危機的状況に陥っていたことが分かったのです」

 7基もの原発が稼働中の現在,このことは重大な意味をもつ。「津波が原因」なら,「津波対策を施せば,安全に再稼働できる」ことになるが,そうではないのだ。

 〔以上の〕木村俊雄氏が事故原因を徹底究明した「福島第1原発は津波の前に壊れた」の全文は,『文藝春秋』〔2019年〕9月号に掲載されている。(引用終わり)

 木村俊雄の分析は,東電福島第1原発事故の真因は「地震発生中に求められる」と判断していた。しかし,前段に出ていた『国会事故調』『政府事故調』『民間事故調』『東電事故調』といった4つ事故調査委員会は,そのすべてが木村の結論とは無縁だったようで,なにも認定していない。

 要は,福島第1原発は「津波の襲来前に,地震動で壊れた」のであって,事故原因は「津波」ではなく,それ以前に発生していた,そもそも「地震」だったとすれば,これまで,大津波の襲来に備える必要が強調されていた「原発事故」の発生原因は,地震の揺れそのものにあるという推定になる。

 木村俊雄が分析し,以上のごときに指摘した以外にも,原子力工学の専門家,それも反原発の立場に立つ識者〔だから,そう理解・主張しているというわけではないが〕からは,「津波が襲来する以前に原発はすでに破壊されていた」という意見は,とくに珍しい推定ではなく,工学的な観点からはしごく自然な理解であった。

 ところで,地震国である日本は世界中で発生する地震の約10%が分布する国土である。それゆえ,原発という装置・機械そのものをこの国土の上に建造するという「設計思想」からして,もともと強く批判されるべき由来をもっていた。

 それに原発という装置・機械そのものは,大地震程度で「損傷を受け破壊される造りではない」と主張することじたいは,いままでどおりに原発が維持・保全されねばまずい「原子力ムラの技術イデオロギー観(感?)」の立場からすると,もちろん無条件に正しい解釈だとされねばならず,絶対的な大前提でもあった。

 仮にでも,原発の大事故を発生させた原因(真因)が地震そのものであったと,もしも認識があらためられる事態になるとしたら,日本という国土に原発を立地させたエネルギー政策じたいの基本的な誤謬は,全面的に肯定されるほかなくなる。

 要は,原発そのものが「無条件に《危険物》」であって,本質的に「《悪魔の火》を焚いて電力を生産する〈狂気・凶器〉の電力生産方式」である事実を踏まえるまでもなく,日本の国土に原発を50基以上も建設し,電力を獲得するために稼働させてきたごとき「エネルギー事情」は,ありのままにとらていえばまったくに「気違い沙汰」なのであった。

ところが,現在の日本国首相岸田文雄は,2021年10月4日に自政権を発足させてから2022年8月下旬になると,それも経済産業省官僚のいいなりになって,原発の「再稼働のみならず新増設」まで決めた。

 21世紀になって自民党が排出(輩出にあらず)させた「亡国の首相」は,小泉純一郎(いまは反原発のポーズを採っているが)から安倍晋三と菅 義偉を経て,この岸田文雄まで連綿と続いてきた。

 だが,とくに岸田文雄に向かい詰問しておくべき現実的な杞憂は,つぎのように表現される。

 原発,止めますか? それとも人類・人間,止めますか?

 岸田文雄という「世襲3代目の政治屋」がすでに1年と7ヶ月,首相の座に就いてきた。だが,この甘々:ボンボンの政治屋は,自身の政治理念として原発問題をどのように理解しているのか,この肝心な問題が国民たちのところまで,なにも伝わってこない。

 「聞く力」をウンヌンしたこの首相であったが,その政治家としての実力の不在は,すでに実証済みであった。ただ,なんでも「異次元的のナントカ」とだけ語るしか能のない岸田文雄であっった。

 なにごとにおいても,自分なりの説明が不足しているなどという前に,この総理大臣は「説明するために必要最低限の思考回路」じたいを,もちあわせていない政治屋である事実だけが,いまとなっては鮮明になった。

 とりわけ,肝心な政策問題に関しての発言が,たびたび 180度変化させていながら,当人にはその自覚症状すらない。

 だから,彼のことをユーレイみたいだと,本ブログ筆者は形容してみた。だが,このユーレイは背後に,その有象無象になる「さらなる亡霊的にかつ吸血的なる原子力ムラの構成員たち」を蝟集させる磁場を提供していた。そうだとなれば,21世紀におけるこの日本政治の原子力ムラ風の餓鬼的な光景は,まことに殺伐かつ荒涼たる実相を表現する。

 その,いまふうの日本国内の様子を『日刊ゲンダイ』紙が,つぎのように描いていた。

 ※-3「暴政加速,景気には無策 浮かれる連休,破局の前の最後の宴」『日刊ゲンダイ』2023/05/01 17:00,更新 2023/05/01 17:06,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/322423

 ★-1 岸田文雄は “原発好き” か?〔ここの小見出しだけは引用者が入れた〕
世間はGWの真っただなか。岸田首相もアフリカ4カ国とシンガポール歴訪の外交パフォーマンスに明け暮れているが,国会ではかつてないほどの「暴政」がエスカレートしている。

 統一地方選と衆参5補欠選挙が終わった途端,政権側は案の定のやりたい放題。GW直前には衆院で「天下の悪法」がつぎつぎとスピード可決し,今国会の成立が確実視されている。「最長9連休」などといって浮かれている場合ではない。

 政府・与党はなし崩し的に成立させようとしているが,いずれも国民生活や日本社会に悪影響を及ぼす法案だ。4月27日の衆院本会議で可決された「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」は,脱炭素推進に名を借りた「原発推進」そのものだ。

 補注)もっとも,原発にグリーンという色あいはもっとも不適であった。適マークをもらえる色あいは,黄色・黒色・灰色あたりのみ,である。

 法案は,原子力規制や再生可能エネルギーに関する5法を束ねてあらためる。原発の活用を「国の責務」として原子力基本法に明記。原発の運転期間を「原則40年・最長60年」に制限する現在の規定は事実上撤廃され,70年超の老朽化原発の稼働にも道筋をつける。

 既存原発の活用にとどまらず,新規建設を含め原発を最大限活用。「原発回帰」どころか,将来にわたり「固定・永続化」。福島原発事故の被害はいまだ収束していないのに,被災者の苦しみや事故の教訓をないがしろにし,多くの国民が望む「原発ゼロ」への願いを踏みにじる内容だ。

 補注)原子力緊急事態宣言は2011年「3・11」に発令されてから,いまもなお解除されていない。つぎの宣言は伊達や酔狂で布告されたものではあるまい。

原子力緊急事態宣言

 岸田政権は堂々と「もう,フクシマは忘れた」と宣言したも同然で,原発の復権を許す重大な法案が,1カ月足らずの審議で衆院を通過してしまったのだ。それだけでも暗澹としてくるが,スピード可決した悪の法案は,まだまだある。

 ★-2 皆保険は崩れ,国を挙げて「死の商人」に

 同じく〔4月〕27日に衆院を通過したマイナンバー関連法改正案は,現行の健康保険証の廃止を盛りこみ,「マイナ保険証」に一本化。医療を “人質” に取り,カード取得を強制するものだ。

 本来,国民に保険証を届けることは国の義務なのに,あくまで政府は「取得は任意」の建前を崩さない。個人情報流出などのトラブルが起きたさい,責任を負いたくないからだろう。

 任意ならなにが起きても自己責任という理屈で,取得申請が困難な重い病気などの人びとは度外視。その結果,取得困難者は保険から排除され,世界に誇る日本の「国民皆保険」制度の大原則が,音を立てて崩れかねない。

 さらに,同日には衆院安全保障委員会で防衛産業強化法案が可決された。国内の軍需産業を強化するための財政支援措置を盛りこみ,助成金交付などで武器輸出を後押し。

 殺傷能力のある武器の輸出解禁を念頭に,自民・公明両党で始まった「防衛装備移転三原則」の見直しに向けた実務者協議とセットで,国を挙げて「死の商人」とならんとする危険な法案だ。

 〔2023年4月〕28日の衆院法務委員会では怒号が飛び交うなか,入管難民法改正案が可決。2年前に廃案となった法案とほぼ同内容で,日本の入管制度における人権侵害という恥ずべき国際問題は棚上げ。

 長期収容の解消を名目に,内戦や差別から逃れてきた難民申請者の本国への強制送還を促すシロモノだ。本来なら,外国人の技能実習制度を今後どう見直すのか,移民政策はどうするのかといった課題と合わせて熟議すべきテーマではないか。

 どれもこれも1国会,2国会かけて徹底的に議論を尽くす必要のある重要な法案ばかり。それなのに,政府・与党は審議が不十分なまま,つぎからつぎへ通してしまう。国民無視の暴走がまかり通るのも,悪政に手を貸す勢力が存在するためだ。

 ★-3 どっちが与党に近いかを張り合う補完勢力

 これまで列挙した法案は,衆院本会議や各委員会で自公与党にくわえ,日本維新の会と国民民主党も賛成した。

 安倍政権は重要法案の強行採決を連発。数頼みの強権政治は批判を浴びたが,国会の現状は当時よりも危うい。いくら危険な法案でも,維新と国民民主がホイホイ乗っかれば,政府・与党は楽チンだ。少なくとも2つの野党が賛成に回れば,批判覚悟で強行採決する必要もなくなる。

 そもそも,維新と国民民主は本当に「野党」といえるのかさえ,疑わしい。維新のルーツは大阪府議会の会派「自由民主党・維新の会」。2010年4月に当時の橋下徹府知事と大阪自民の地方議員が「大阪維新の会」を結成するが,当初は多くの議員が自民党員のままだった。

 そして維新代表も務めた橋下に松井前代表と,安倍元首相に菅前首相との会食が,暮れの恒例行事となり,維新は陰に陽に安倍・菅両政権と握ってきた。自称「改革政党」は政権の補完勢力。逆に野党勢力とみる方が維新に失礼なくらいだ。

 国民民主も2022年度予算案と補正予算案に賛成した時点で,野党を名乗る資格ナシ。2023年度予算案に反対したのは,目前に迫っていた統一地方選向けに「野党のふり」をしたポーズに過ぎない。

 政界引退後も維新に影響力を残す結党メンバーの橋下や松井が菅と強固なパイプを持つのに対し,国民民主の玉木代表らは,麻生副総裁や茂木幹事長を窓口に政権入りを模索しているとされる。

 まるで「どっちが与党に近いか」を競い合っているような状況だ。むしろ,万年野党の地位に甘んじるくらいなら,いつ政権側に組みこまれても構わないと思っているフシすらうかがえる。

 ★-4 諦め顔は翼賛体制に手を貸すのと同じ

 野党のままでは上がり目なし,あわよくば重要ポストが回ってくるかもとの下心を抱き,政権にくみする維新と国民民主。

 こんな連中との「共闘」を求め,野党第1党の立憲民主の泉代表は秋波を送り,統一選で共産党は除名問題でミソをつけ,国政政党からマトモな野党は消えつつある。

 野党不在の国会は事実上,戦前・戦中の大政翼賛会に逆戻り。政権はますます図に乗り,国民無視の暴政が加速するだけだ。

 「岸田首相の『聞く力』なんて大嘘。野党不在まで重なれば生活苦にあえぐ国民の声は,政権の耳に届きません」と語るのは,経済評論家の斎藤 満氏だ。こう続ける。

 「いまの政権には米バイデン政権と産業界の要請こそ“天の声”。5年間で43兆円の軍事費拡大は米国の,為替の円安維持は産業界の,それぞれ利益に従ったものです。そのためなら増税や物価高騰もいとわない。

 増税の対象も産業界の嫌がる法人税は聖域で,個人に押し付ける。マイナス金利の長期化に耐え切れず金融機関は振込手数料を大幅アップ。預金者にしわ寄せが及ぼうが,日銀の植田新体制はかたくなに緩和策維持です。

 少子化対策の財源も社会保険料の引き上げだけでは不公平といって,後期高齢者にも負担を求める。長生きリスクは増加の一途で,政権側は『年寄りは早く死んでくれ』と考えているとしか思えない。

 国民の生活実感に寄り添う批判勢力が消滅すれば,経済無策にブレーキはかからない。政権側は国民生活に目もくれず,貯蓄ゼロ世帯や年金生活者など経済弱者の暮らしは,どん底に沈んでしまいます」

年寄りは早く死ね

 ★-5 やまない暴政,経済無策の先に待ち受けるのは,国民生活の破綻だ。

 「この政権は軍事費増大にマイナンバー強要など軍事国家,監視国家を目指して一直線。メディアが批判精神を失っているせいで,国民の危機感は薄いままとはいえ,気づけば身動きが取れなくなってしまう。

 政権交代の現実的な可能性がほとんどないと有権者まで諦め顔では『自公維国』に手を貸すのと一緒です。衆参5補選も自民は薄氷の勝利。政治が変わる余地は十分にある。野党内の健全勢力も権力と決して妥協せず,戦う姿勢を示すべきです」(立正大名誉教授・金子 勝氏=憲法)

 翼賛体制を黙認すれば,この連休は恐らく破局の前の最後の宴になるだろう。国民は本当にそれでいいのか。 (『日刊ゲンダイ』引用・終わり)

 ※-4 蓄電池の普及を遅らす原子力ムラの悪影響

 この※-4は,つぎの『日本経済新聞』2023年4月30日朝刊の記事「蓄電池,世界で普及期に 今年87%増,5年で10倍 再エネ拡大でなお不足」を紙面で紹介する。問題点は,画像のなかに記入するかたちで説明してみた。なお,クリックで拡大・可。記事のなかに提示さえている図表2点は,さきに参照用としてかかげておいた。

蓄電池市場,米中欧が牽引
乾電池価格は低落してきた
蓄電池体制の整備・拡大

 ※-5 「青野由利(客員編集委員)の『時を駆ける科学』」「〈経済プレミアム〉『脱原発のドイツ』はフランスから電力輸入は本当か」『毎日新聞』2023年5月6日,
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20230502/biz/00m/020/008000c 

 a) ここは書かないわけにはいかない。ドイツが4月15日に脱原発を達成した。「とうとうその日がきたのか」と感慨深い。思い出すのは2015年,ドイツに「エネルギーベンデ(大転換)」の取材に出かけた時のことだ。国内最大の電力会社「エーオン」のエネルギー政策担当者が淡々と語っていた。

 「個人的には原発はクリーンなエネルギーとして優れていると思います。でも,そういう意見をいう段階は過ぎたのです」。誰が政権を取ろうと脱原発は変わらない。電力業界の諦めにも似た認識が覆されることはなかったわけだ。

 補注)このドイツ側関係者のいいぶん「原発はクリーンなエネルギーとして優れている」という意見は,トンデモない間違いである。原発ほどダーティなエネルギーはないと断定するのが当然なのに,このように逆立ちした意見を披露するというのは,なにか特別の事情でもあるのか? 

 東京電力の福島第1原発事故をきっかけに業界がなんといおうと脱原発を進めたドイツ。事故の当事者でありながら開きなおりのように「原発回帰」にかじを切る日本の政府。いったいなにが違うのだろうか。

 b)「日本でも原発事故防げなかった」

 そもそもドイツの脱原発の方針は20年以上前にさかのぼる。1986年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに原発を支持してきた国民の意見が変わった。その意向を反映した社会民主党と緑の党の連立政権が2000年に電力会社と脱原発で基本合意し,2002年に脱原発法を制定したのだ。

 ただ,2010年には一時,中道保守のメルケル政権が原発延命を決定した。そこに起きたのが福島の原発事故だ。

 ここで有名な政府の「倫理委員会」が開かれる。工学者や経済学者だけでなく,哲学者や宗教界の代表者らで構成され,原発事故のリスクや廃棄物,他のエネルギー源との比較などを検討。原発よりリスクの少ない代替手段はあり,「脱原発が妥当」と結論づけた。

 これとは別に原発の専門家による「原子炉安全委員会」が「ドイツの原発は安全」と報告したが,メルケル首相は倫理委の判断を尊重した。「日本のような技術の高い国で原発事故が防げないなら,ドイツでも起こりうる」との認識からだ。

 補注)ここで「直前の2段分の記述」に相当する日本側の議論はきわめて低調である。原子力ムラ側の主張ばかりが大手を振って歩きまわるだけで,原発批判を吟味するためにする議論は初めから逃げていた。

〔記事に戻る→〕 ドイツの原発廃絶を結論させるに当たっては,哲学や宗教学の専門家までが参加して議論しているが,日本の場合はそのような関連する学問・科学を幅広くおこなうといった条件がなかった。

 安全神話は無になっていたにもかかわらず,いまだに原子力ムラ的な利害・イデオロギーがのさばっている現状にある。これにきわだった変化がないまま,原発は必要,「重要(主要)な電源」として有用などと,なお,性懲りもなく復唱されている。

 そのような原発安全神話中毒症がまだ脳細胞から消えていない関係者は,自分たちの利害得失の観点からのみ原発推進の立場を保持しているだけなのであって,多分,本心ではまずいとは思っているはずだと推察する。

〔記事に戻る→〕 2022年までに国内の全原発17基を停止する計画は,ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機で延期を余儀なくされた。それでも脱原発の方針は揺るがなかった。

 c) 日本でみかける誤解

 もちろん,原発さえやめれば「バラ色」というわけではない。当然課題はあるが,誤解もある。たとえば日本でよくみかける「ドイツが脱原発できるのは原発大国フランスから電力を輸入しているからだ」との論調があるが,事実はどうか。

 2008~21年のドイツと各国間の電力取引総量をみると,輸出量が輸入量を上回り,ドイツは電力輸出国となっている。フランスとの取引の収支でも2020年,2021年とドイツの輸出超過。つまり,輸入しているのはフランスの方なのだ(原典は「Monitoringbericht 2022」)

 フランスが電力輸入に転じた背景には,昨〔2022年〕夏,配管の腐食や点検で全原発の半数以上が停止したことや,熱波の影響で一部の原発が出力を抑えざるをえなかったことがある。

 補注)日本では原発を60年以上も稼働させると決めた。だが,この段落で出ていた問題「配管の腐食や点検」という点は,いっさいと形容していいくらい触れないまま,そう決めこんでいた。地震がこの「配管の腐食や点検」という技術的な難点や問題とどのように関係してくるかは,いうまでもなく非常に慎重な検討・吟味を要するはずである。

〔記事に戻る→〕 「ドイツは褐炭(低品質で安価な石炭)の依存度が高く,気候変動対策に逆行する」という指摘も聞く。

 確かに,2022年のドイツの電源構成は風力,太陽光などの再生エネルギーが4割を超える一方で,石炭火力も3割を占める。ただ,2010年に比べると3割減。この10年で原発とともに化石燃料も大幅に減らしてきたことがわかる。

 ショルツ政権は2030年までに石炭火力を廃止し,自然エネルギーを80%に引き上げる目標を立てている。褐炭・石炭をフェーズアウトさせるための具体的なシナリオや対策,明確なスケジュールも示されている。

 簡単ではないが,目標を定め,道筋を示すことで,新たな技術や仕組みも開発されるはずだ。

 d) 短期的利益優先でよいのか

 このところ電力価格高騰への不安から,世論が原発維持に傾いていることも指摘される。だが,原発数基を再稼働したからといって,一気に価格を抑えられるみこみがあるわけではない。電力価格の高騰にはさまざまな要因がある。

 ひとたび事故が起きれば,これではすまない。核のゴミの問題も解決はむずかしい。こうした原発依存のリスクは今後もなくならない。

 翻って日本はどうか。福島の事故からわずか12年で原発回帰へとかじを切った岸田政権。最大の問題は長期的ビジョンをもたず,短期的利益が優先され,原発事故前からの業界の既得権益を守る方向に傾くことだ。

 先日も,関西電力や九州電力など大手電力会社が新電力の顧客情報を不正に閲覧し,公正な競争を妨害した。こうした事件が起きるのも,政府が原発を守ろうとする姿勢への便乗ではないだろうか。(引用終わり)

 さて, 核燃料サイクル不成立のまま何十年も来た原子力ムラは,当面したその代替用途であるプルサーマル燃料(MOX)転用が不調である。この問題を最後にとりあげてみたい。

 ※-6「〈科学の森〉迷走プルトニウム プルサーマル燃料確保できず」『毎日新聞』2023年5月4日朝刊「科学・医療」

 この解説記事は長文であるが,あえて全文を引用しておく。

 核燃料サイクル(高速増殖炉運転)の商用化利用どころか,その実用化の以前に実験段階でさえ,まだろくに進捗していない段階のところで,その一時的な代替案として考え出されたのが,このMOX燃料方式であった。だが,これを原発の核燃料として転用する見通しには,不透明(不安)が鮮明になったという話題である。

 a) プルトニウムを原発で利用するプルサーマル発電で,フランス南東部の燃料加工工場「メロックス工場」で不良品が相次いでいる影響が国内で尾をひいている。

 〔2023年〕2月に電力各社が公表した計画によると,2024年度はプルサーマルに使う新燃料をまったく確保できなかった。2025年度以降には利用計画があるものの,製造の具体的な開始時期が不透明なままだ。

関西電力高浜原発,2022年1月22日

 プルサーマル発電は,核燃料の有効利用が目的とされる。具体的には,使用済み核燃料を再処理(化学処理)し,核物質のプルトニウムを分離する。これにウランを混ぜたものを固めて粒状(ペレット)にし,ペレットをいくつも入れた金属製の筒を束ね燃料集合体を作る。

 こうしてできたウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)を,原発で燃やす。MOX燃料加工施設は国内では稼働しておらず,製造はメロックス工場に委託している。

MOX核燃料の生産量低下

 しかし,プルトニウムとウランを均一に混ぜるのはむずかしい。同工場では,プルトニウムの塊ができる不良品が続出した。不均質な燃料を燃やすと,部分的に高温になって燃料が壊れやすくなる危険性がある。同工場のMOX燃料集合体の2021年生産量は2015年の36%の106体にまで落ちこんだ。

MOX核燃料棒

  ★ ★

 b)「電力各社の計画直撃」 こうした状況が,2023年2月公表の電力各社のプルトニウム利用計画に反映された。それによると,2023年度 0.7トン,2024年度 0トン,205年度 1.4トンで,いずれも関西電力の利用分になっている。

 2023年度分は,高浜原発3号機(福井県高浜町)で使う予定のもの。2024年度は,1年前発表の計画では 0.7トンだったが,なくなった格好だ。関電は「最新の運転計画やMOX燃料の製造状況を踏まえた」と説明し,2024年度に充てる在庫がないとしている。

 2025年度分は,3年前の2020年1月に製造契約をしていた分をみこむが,製造開始の時期はまだ決まっていない。関電は同工場での製造について「できるだけ早期に開始したい」としている。

 現状で,関電以外にプルサーマルを実施しているのは九州電力と四国電力だが,いずれもMOX燃料の在庫がない。両電力とも,他社がフランスに有しているプルトニウムを名義交換で取得して同工場でMOX燃料を製造するという。

 利用開始時期は,九電は玄海原発3号機(佐賀県玄海町)で「早くて2026年度から」としている。伊方原発3号機(愛媛県伊方町)で計画する四電は1年前に「早くても5~6年後(2027~28年)」としていたのを「2028年度以降」と説明している。

 c)「仏工場見通し不透明」 しかし,両者ともプルトニウムの調達先,同工場での製造開始時期とも決まっておらず,見通しは不透明だ。では,同工場での不良品多発問題はどうなっているのだろうか。

 フランスの放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の報告書によると,不良品の原因は,プルトニウムとウランを混ぜるさい,ウラン側(ウラン酸化物)の粉末があまりにも細かくなり,均質に混合するのがむずかしくなったためという。

 従来,ウラン粉末は「湿式」の製法でおこなわれていたが,施設が老朽化して,新しく「乾式」の製法を採用したところ,粒子が細かくなる問題が生じた。このため,メロックス工場を運営するオラノ社は,同工場とは別の場所に,新たに「湿式」によるウラン粉末の製造ラインを建設しているという。

 かつて日本がMOX燃料の製造を委託していた英国では,製造のむずかしさから検査データの捏造(ねつぞう)が発覚したすえ,工場が閉鎖された。フランスでは,MOX燃料工法が二転三転している。国内では青森県六ケ所村にMOX燃料加工工場(事業費約2.4兆円)を建設中だが,原子力の先輩格の英仏で難航する製造が簡単にいくとは考えにくい。
 【大島秀利】(引用終わり)

 以上のごときMOXの核燃料としての準備・生産でモタモタしているようならば,さっさと再生可能エネルギーのほうにその時間と労力と経費を向けたほうが,よほど前向きかつ生産的な電力問題への取り組みになりそうだと,誰しも思うはずである。

 原発から吐き出されつづけているプルトニウムであるゆえ,原発が稼働すればするほどこれからも,どんどん溜まりつづける。だが,MOXとして原子炉で焚く核燃料の用途に,そのプルトニウムを降り向けるにしても,なかなか消費できないでいた。

 さらには,通常のウランだけを使う核燃料よりも「その製造⇒消費」の技術管理工程では,要らぬ困難が伴っており,苦肉の策であるがための負的な特徴が発生している。この種の不利な条件は,さらなる苦労の種を提供してきた。

 ともかく,日本の保有するプルトニウム(46トン)は核兵器の用途に向けて消費していないと,なおさらのこと溜まっていく一方である。

 最近,「プーチンのロシア」によるウクライナ侵略戦争では,イギリスが劣化ウラン弾をウクライナに提供するといいだした。

 1991年の湾岸戦争では劣化ウラン弾が,戦車砲弾や航空機の機銃弾として使用されていた。しかも,劣化ウランの放射性物質としての有害性は,当時からすでに問題なっていた。

 兵器・武器の砲弾・銃弾として利用される劣化ウラン弾だけに,またもやその環境や人体,自然などに与える有害性が,こんどは,ウクライナの戦場において撒かれる可能性が出てきた。

 「劣化ウラン弾による被害の実態と人体影響について」は,つぎの住所(アドレス)の解説を参照されたい。


【参考動画記事】
-日本が核燃料サイクル(高速増殖炉への取り組みを止めない理由」など)- 

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