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父占い
これまでに手相を見てもらったことが2回ある。
最初は20代半ばのころだろうか。
友達の付き添いで行ったはずであるが、いつの間にか占い師さんに手のひらを見せている私がいた。
派手な化粧の占い師さんに「働く環境が大きく変わりそうね。」と言われてビックリした。
ちょうど転職を考えているときだった。
隣にいる友達をジロリと見る。
(あんた、占い師さんに転職のこと喋ったね?)
私よりも驚いた顔をしている友達のことを見たら、占い師さんに言いつけていないことは一目瞭然であった。
また「今つきあってる恋人がいるみたいね。でもこれ、あまり良い人じゃないね。」と言われた。
ブッブー❌ハズレである。
当時の恋人は「あまり良い人じゃない」ではなく「完全無欠のろくでなし」であった。
私は再び友達をジロリと睨むが、またも友達からの情報流出では無さそうであった。
そして最後に「あなた90歳まで働くわよ。」と恐ろしいことを告げられた。
聞き間違いかと思ったがもう一度「90歳まで現役。」と言われた。
運命線やら生命線やらは聞いたことかあるが「90まで働く線」など聞いたことない。
そんな線は毎日コンシーラーで塗りつぶさねばなるまい。
隣で友達は手を叩き爆笑していた。
2度目は38歳のときだ。
その日、私は両親と商業施設で買い物をしていた。
一角に列をなしている場所があり、並んでいる人に何の行列か尋ねると「よく当たる占い師さんらしいです」とのことである。
ようし、久々にみてもらおうじゃないか。
両親を近くのベンチに座らせ、私は行列に並んだ。並ぶのは好きではないがよく当たる占いとなれば別だ。
ようやく私の番が来た。
おや、男性の占い師さんだ。
おじいちゃんだし何だか雰囲気もある。
椅子に座ると、まっ白な画用紙ほどの大きさの紙に名前と生年月日を書くように言われた。
私は(ははーん…きっと文字の大きさやバランス、文字を書く位置から性格傾向を探るのだろうな)と推測した。これは精神科看護師という職業病であろう。
当ててほしいが当てられたくない。
謎の負けず嫌いが発動した。
その年の運勢や、もって生まれた宿命みたいな話のあとにおじいちゃん占い師は言った。
「それとね、90歳までは現役で働くね。」と。
…ん?あんだって??
2回しかやったことがない占いで2回とも「90歳まで働く」と告げられた。
そんなことあるだろうか。
一体どこにその線があるんだ。
そんな線いっそヤスリで削ってしまいたい。
そしておじいちゃんは穏やかな口調で「あなたまだ結婚してないねえ。ちょっと…なかなかしないかもしれないねえ。」とも言った。
えー😩少しガッカリしていると占い師さんは
「あなたの恋愛や結婚だけどね、あなたのお父さんが邪魔してるというかね、簡単にいうとね、イヤみたいね。」と言った。
イヤみたいとは?
……あのクソ親父めが!!!!
占いの途中であることを忘れ、ベンチで待つ父のもとへと思わず文句を言いに走って行きそうになった。
90歳まで働くわ恋愛も結婚もしないわ…という占いの結果に軽くめまいを覚え、その後どんなことを言われたのかあまり覚えていない。
占いが終わりベンチで待つ両親のもとへ行くと「どうだった?幸せな人生ですねー、最高ですねー、て言われただろ?」と父が無邪気に尋ねてきた。
その無邪気でマヌケな笑顔を見て、私も思わず「うん。そんな感じだった。」と答えた。
父は「だろ!占いなんかしなくたってお父さんには分かるんだよ。」と満足そうに笑い「あっちにサーテーワンがあったからアイス食べよう」と立ち上がった。
今のところ精神科看護師として働き続けており、恋愛も結婚もしていないため、このままいくと占いは当たるのかもしれない。
しかし結果的に、父の言う「幸せな人生」というのが今のところ1番当たっているように思う。
占い師さんも良いが、父に尋ねてみるのが1番良いのかもしれない。