見出し画像

「人民」という言葉をもっと積極的に使おう!

立憲民主党所属の参議院議員である石垣のりこ氏が「人民」という言葉を使ったとかで「小児右翼(ネトウヨ)」——「小児右翼」という言葉は、昔からの友人が案出した言葉で、あまりに見事なのでいつも使わせてもらっている——、つまるところ、この国の多数派の思考回路を最も端的に示した人の形をしたクズどもが切れまくっているらしいが、いったい何の問題があるのか。どうせ「○○人民共和国」と名乗っている共産党もしくはそれに類する政党が一党独裁を行っているということだけを根拠にして「サヨクがー」と吠えたいだけのだろうけど、「人民」という語は明治時代にも体制側によって用いられていたし、第二次世界大戦後に後の自民党の一部を成すことになる政党の政権によっても「人民」という言葉は用いられていた。また、小児右翼にとってのご主人様たるアメリカ共和党所属の大統領がゲティスバーグで行った例の演説の翻訳でも「人民」という言葉が今に至るまでずっと用いられていて、すっかり人口に膾炙しているではないか。もっと言えば、小児右翼にとっての永遠の親分たる岸信介や安倍晋三や麻生太郎も国会で「人民」という言葉を用いていたではないか。この程度のことはちょっと頭の良い中学生でさえもちょっと調べたりすればすぐに分かることだというのに、本当に愚かとしか言いようがない。まあ、知性や倫理や美の三者に敵意を剥き出しにして、阿諛追従を唯一の道徳律として生きているこうした連中を指すのに最も相応わしいのは、「奴隷」や「家畜」という言葉であろう(「臣民」でさえももったいない)。こうやって日々愚民教育の見事な成果物を見せつけられ続けて、わたしはもううんざりしている。

(こんな愚かな連中がこの国において多数派を占めているからこそ、言葉が日々破壊され続けているのであり、その結果としてまともな言葉で書かれたまともな本が売れなくなるのだ。もっと個人的なことを言えば、ローゼンの『古典派音楽の様式』(音楽之友社)の印税が切ない額にしかならないのである。ガッデム! 今度の印税額は去年よりも切ないものになりそうな悪寒がしている。というわけで、まだお買い上げではない方は、是非とも新本で買っていただけるととても嬉しい m(_ _)m 単行本としては確かに高いのだが、飲み会や新しい服や靴や鞄やデパコスを少し我慢するだけで余裕で買えるはずだとだけ申し上げておく。買って損はしない面白い本なので、西洋芸術音楽に深い関心があるという方には強くおすすめする。)

閑話休題。

「人民」という言葉の何が良いかと言えば、人が特定の属性によって排除されなくなる点だと思う。「国民」だと特定の国籍を持っていない人間が排除されてしまうし(このことについては、日本共産党の関係者にはしつこいぐらいに文句を言い続けたい。「人民の苦難軽減」の方がはるかにいいと思うのだがな。もったいない)、「市民」だと都市部の中流階級以上の社会階層を意味してしまって、それ以外の人間が排除されてしまう。だから、やはりある特定の土地に住んでいるかどうかも度外視し、社会階層や国籍も度外視して地球に住んでいる人間全員を平等に指す言葉としては、「人民 people」が一番良いではないか。

というわけで、これからは「人民」という言葉を積極的に使ってゆこうではないか。あと、個人的には、「労働者」という言葉も積極的に使ってゆこうと思う。この言葉も「人民」と同様に色眼鏡で見られがちだが、言葉の元の意味を考えれば実におかしな話である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?