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目に見えないからこそ願うことが大切なんだ、とあの日彼は言いました。 私と母は二人でア…
私は夜な夜な巡回する。 一日の終わりにいつものようにベッドに寝転がりスマホを操作する…
世の中に魔法はある。 あると早速断定してしまったが、実際にあるのだからしょうがない。…
幸雄は誰かと親密になれなかった。 例えばクラスでたまたま席が隣になったり、同じバイト…
老人は今日も絵画を見つめていた。 平日の美術館は閑散としており、午前中は来館者の足音…
目が覚めてもまだ心の中に昨日の鬱屈した靄を引きずっていることに気づき、清美はそんな自分…
卒業式が終わってしばらく経っても、多くの卒業生が名残惜しんで校舎前の桜の木の周辺に集まっていた。それぞれが友人や保護者と記念写真を撮影したり高校三年間の思い出話に花を咲かせたりして、それはこの時間を慈しむかのようであった。 親友がお手洗いに行ったタイミングでそこにただ一人残された私はボンヤリと皆の姿を眺めていた。高校生活から解放された喜びと春からの生活に期待を膨らませる皆の表情を見ている内に、なんだかこの光景は生涯で忘れることがないような気がすると感じていた。 そのとき
国道六号線を自転車で北上する。 この道は十一年半の時を経てやっと全線が通行できるよう…
いつものように家で夫の哲志と晩御飯を食べていると、その日はたまたま会話の流れから私たち…
深夜の公園の駐車場は誰もおらず閑散として闇に包まれており、まるで自分の心の裡を表してい…
紗里は理解できなかった。 ある日父親が家に帰って来なくなった時も、中学二年の途中で自…
お元気ですか? 今朝SNSで君が結婚したことを知って、当時君が一番好きだと教えてくれたレ…
「そのとき誰かの声が聞こえて振り返ったら、背中のスレスレの位置を車が猛スピードで過ぎてっ…
あ、また答えを求められてる。 高校時代の友人の結婚式に出席するため、ご祝儀袋にお金を包んで裏側にひっくり返したとき、久美はまた漠然とした何かから答えを求められているのを感じて胸が苦しくなった。 子供の頃から分からない問題に直面すると回答を求められ急かされているような気がした。友達にこんなことを言ってはいけない、先生の前でこうゆう行為をしてはいけない、母親が不機嫌なときに自分はどう立ち振る舞うべきか等、久美の日常は様々な問題出題の連続だった。歳を重ねるにつれて問題の傾向と