詩はなんの役にたつか

詩はなんの役にたつか、と考えれば、いくつかの答は出てくると思います。人それぞれに違うのかもしれません。

ぼくにとっては、なによりも、「生きていく支えになった」ということでした。

高校生の時だったか、普通は10代後半というのは、溌剌と生きているものなんですけど、ぼくはそうではなくて、けっこう暗かったんです。

当時から猫背だったし、若いということがむしろ邪魔でさえありました。

これといって人に秀でるものもなかったし、かと言って勉強家でもなかった。劣等感のかまたりで、それで、それなりの成績で入った高校でも、どんどん成績が落ちていって、3年生の頃には完全に劣等生になってしまったんです。

そんな時に思っていたのは、「ぼくには詩がある」っていうことだったんです。

当時から暇があれば詩ばかり書いていたんです。

でも、「ぼくには詩がある」といっても、別に勝手に書いているだけのことだったんです。それがどれほどのものなのかなんてわからないんですけど、ただ逃げ場として、「少なくとも自分には詩がある」と思えば、不思議と心の一部が明るんで、なんとかその日を生きてゆけたんです。

それって、学生時代のことだけではありませんでした。会社員になってからも同じようなもので、仕事でミスをしたり、いやなことがあったり、気分が落ち込むと、密かに「自分には詩があるんだ」って、思うんです。

そうするとそっちに気持ちが逃げていって、少し楽になるというか、「そうだ、自分にはこれからも書いて行ける詩があるんだ」と思って、安らかに眠れるんです。

そういうことを繰り返して、これまで人生を歩んできたような気がするんです。

ですから、ぼくのように、生きて行くことに自信のない人は、詩に逃げてしまってもいいのかなと、思うんです。

必ずしも自分の詩が、今生きてきる人たちに認められなくても、自分だけの世界で自己満足で書いているだけでも、そんなのかまわないと思うんです。

詩を書くことが、生きて行く支えになるのなら、それ以上に詩に望むことはありません。

「自分には詩がある」と思えば、誰に迷惑をかけることもなく、明日も生きてみようと思えるんです。

もしかしたら、明日こそは、これまで書き続けたご褒美として、自分の晴れやかな代表作が、書けるかもしれないのですから。

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