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#村上喜代子

俳句を読む 32 村上喜代子 林檎もぎ空にさざなみ立たせけり

林檎もぎ空にさざなみ立たせけり 村上喜代子

対象そのものにではなく、対象が無くなった「跡」に視線を向けるという行為は、俳句では珍しくないようです。およそ観察の目は、あらゆる角度や局面に行き渡っているようです。句の意味は明解です。林檎をもぐために差し上げた腕の動きや、林檎が枝から離れてゆく動きの余波が、空の広がりに移って行くというものです。現実にはありえない情景ですが、空を水に置き換えたイメ

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