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俳句を読む 21 伏見清美 紙風船紙の音してふくらみぬ

紙風船紙の音してふくらみぬ   伏見清美

紙風船といえば、まず思い浮かべるのは、掌ではねて幾度も空へ打ち上げられる図です。その図から、未来への希望や願い事、あるいは空の大きさへと連想はつながります。この句が新鮮に感じられるのは、そういった誰しもが持つ感覚ではなく、もっと手前の視点から風船を描いているからです。季語は風船、やわらかく膨らむ春です。作者は、空に打ち上げられる前の段階に目を留めます。三

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