初任給引上で誰が割を食うのか?
巷では初任給引上げのニュースが話題となっております。
初任給引上げ自体は決して悪い話ではありません。
物価高騰や最低賃金引上げ等の一連の流れから妥当な話だなと思いますし、企業の人材確保の観点からも必要な対応でしょう。
ただ、その一方で弊害も懸念されます。
その一つが「給与の逆転現象」です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまで急激に初任給が引き上げられる場合、既に入社している若手社員との給与の逆転が発生する可能性があります。
当然そのままストレートに逆転したら弊害どころの騒ぎではなく大問題になるのは誰の目にも明らかですので、初任給引き上げ幅に合わせて企業は全体のベースアップを検討するのでしょう。
ただ、従業員の給与は見方を変えたら人件費というコストです。利益を追求する企業として「はいはい」と簡単には引上げできません。
ならどうするのか?
企業サイドとしては、極力総人件費が上がらない様に引き上げ幅を調整するでしょう。
具体的に言えば、
新入社員:25万円 → 30万円(+5万円)
若手社員:28万円 → 32万円(+4万円)
係長職 :33万円 → 35万円(+2万円)
課長職 :40万円 → 40万円(+0万円)
職位間の給与が逆転しない程度に各職位で引き上げをするのです。
初任給を引き上げして、給与の逆転も起きず、全体のベースアップは抑える事ができ一石三鳥です。
ただ、そこで問題になってくるのが、係長職・課長職の人達です。この世代を占めるのは40歳~50歳のいわゆる氷河期世代と言われる世代。
・厳しい就職戦線を勝ち残った末に手にした職では初任給20万円未満。
・パワハラ・セクハラが当たり前の時代を過ごした若手時代。
・会社を去る者も多い中、しがみついた先に得た管理職の席にあったものは、働き方改革の時代の中で手が回らず残されたプレイヤー業務。
そんな不遇の世代ですが、前述のとおり初任給を引上げしベースアップが実施されても、簡単には給与引き上げの恩恵を受けられない状況が待っています。
「どこまでも不幸な世代だな…」
多くの人はそう感じるかもしれません。
確かに幸せではないかもしれませんが、この世代はもういい年した分別のつく大人です。
こうなることはあらかた予想できますし、その上で自分がどう行動するべきが考える頭もあります。
そんな中、今回の初任給引上げで、個人的に氷河期世代以上に不幸になる可能性がある世代があると思っています。
それは、初任給引上後に入社する「未来の新入社員」です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一例として、私が勤める金融機関では、資格取得状況や勤務状況等によって定期的に昇給の判定が行われます。私が新入社員の頃は、3年目のタイミングで約+5万円/月の昇給がありました。
同期含めて特段高尚なモチベーションもありませんでしたが、若いながらに5万円の昇給の魅力は大きく、皆一応にそれに向けて資格試験や業務に励んでいました。(業務の方はパワハラに近い強制力もありましたが…)
それはひとえに「5万円というアメ」と「パワハラというムチ」の効果でした。
ただ初任給引上げによって昇給幅は少額となり、アメは入社後にもらうのではなく最初から与えられた状態になります。
そんなアメを最初から与えられて、かつムチも飛んでこない状況で果たしてどれだけの新入社員が自律し自己啓発に励めるのか…
「少なくとも自分には出来ないな」と冷めた感情を持ちつつ、一方で「その世代をどう指導していくのか?」という新しい悩みが発生する日々。
これを「自己責任の時代」というのかもしれませんが、あまりにも厳しい時代です。
だからまず、新入社員・若手社員はこの事実を知って欲しい。おそらくあなたの上司は教えてくれない事実だから。
「参考になった」「ためになった」等と思われた方はスキ!を押していただいたり、X等で拡散していただけたらとてもうれしいです!!