PBR改善に向けた取り組み ー 8つ+1つの取り組み

本日、四季報秋号のデータが更新されました。私は明日からの3連休で四季報での銘柄チェックと周辺情報収集の予定です。株式投資環境に関しましては、海外のマネーが日本の市場に向かっており、大型以外の銘柄への投資も引き続き増えるような感じですね。個人的にはPBR1倍割れの中小型銘柄が投資の絶好のチャンスかなと思っています。こういう銘柄の中でアクティビストの対象になりそうな銘柄をじっくり探すこともありかなと。

さて、少し前にTwitterにも紹介しましたが、東証の市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の第11回が8月29日に開催され、今年の4月に東証が要請した株価を意識した経営に関する企業の取組みのサマリーが記載されていました。念のため事務局資料は以下のとおりです。

https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/jr4eth0000000zq6.pdf

この中で興味深いのは、株式価値向上に向けた取組みで、企業が取り上げた取り組みとして次の8つの取り組みがあげられています。

  1. 成長投資

  2. 事業ポートフォリオ見直し

  3. 人的資本投資

  4. サステナビリティ対応

  5. IRの強化

  6. 株主還元の強化

  7. ガバナンスの向上

  8. 政策保有株の縮減

特に驚く内容ではないですが、この中で、意外に理解されていないのは「4.サステナビリティ対応」と「5.IRの強化」です。
この2つは株主資本コストの低減に寄与します。つまり、サステナビリティ対応は、企業の成長の不確実性を低下させ、これが株主資本コストの低下に繋がり、結果として、株式価値の向上に寄与します。「サステナビリティ対応をなんでやっているのかな?」と思ったら、それは株主資本コストを下げるために取り組んでいるのです。大事なことです。

一方、この8つの取り組みに含まれておらず「あれっ」と思ったのは、ROEの向上、特に利益率向上の取組みがないことです。
PBRの向上にはROEの向上と株主資本コストの低減が重要かと思いますが、ROEの向上、つまり利益率の向上をあげていない企業が多いのが意外でした。機関投資家は、PBR向上のためには、ROEが最低8%を超えること、そのためにはROEの構成要素である利益率を上げることが必須と考えています。一番大事な利益率向上施策を企業が取り組みとして掲げていないのは、好ましくないです。

今回の東証の資料の前提となったのは、7月中旬時点のコーポレートガバナンス報告書ですが、開示企業数も少ないので、今後は利益率の向上を取り組みにあげる企業も出てくる可能性はありますが。

いずれにせよ、個人投資家の方には、この8つの取り組み+ROEの向上の取り組み(利益率の向上)は参考になるはずですので、自身の投資先企業のコーポレートガバナンス報告書で確認した上で、投資先企業のIR部門に各取り組みについて質問すると良いかと思います。