株価を意識した経営の開示はPBR1倍以上の企業も当然必要です ー 投資先企業への質問の視点

東証が本年3月31日に上場企業各社に株価を意識した経営を開示することを求めていることを前回書きましたが、これについて本日は少し補足いたします。

PBR1倍割れの企業は株価が割安と言えますので、当然ながら株価を意識した経営について開示する必要がありますが、この東証の要請は1倍割れ企業だけに求めるものではありません。この点、大和総研のレポートに分かりやすい記載があります。

そもそもPBR1倍に企業は満足して良いかというと違いますよね。1倍は合格・不合格ラインと言えるのであり、合格しても株価を上げること上場企業の経営トップの宿命です。そもそも1倍をわずかに上回る程度では、試験に合格して晴れて志望校に入れたもの、低空飛行の成績の生徒のようなものですね。

株主はリターンを得るために株式投資をしているのです。リタ―ンとは株価の値上がり益と配当です。このリターンが株主資本コストであり、これが日本企業全体でみるとおおよそ8%ということです。リターンとは投資額に対する儲けですね。だから、自分の投資先銘柄はPBR1倍以上あるから合格点なんだなどと安易に考えずに、この東証の要請に対して、資本収益性をいかにして更に上げるか、成長戦略をどう考えるのかを個人投資家は投資先企業に質問することが大事です。

ちなみに、既にコーポレートガバナンス報告書で株価向上施策が記載されている場合、方針・目標が開示されているわけですから株主は何を質問するか迷われるかと思います。これは各社の開示を見ないと具体的なところは何とも言えませんが、次のような点が質問事項になるかと考えます。

  1. 資本収益性や市場評価について改善・目標の根拠

  2. ROEは3つに分解して(売上高利益率、総資産回転率、財務レバレッジ)、どこをどう改善するのか

  3. それらについて取締役会でどういう議論がなされたか

  4. 社外取締役からはどんな意見があったか など

是非、個人投資家・個人株主の方はこれらの視点から、投資先企業に質問をして、その回答が納得いくものかどうか確かめると良いかと思います。