ブラザー工業がローランドへのTOB価格を引き上げず ー プレスリリースを公表
ブラザー工業が事実上の買収断念
今週から企業の通期決算発表が本格しましたね。半ば以降には各社の決算説明会が開催されますので、来週からは、業務時間中もスキマ時間を見つけては、色々な企業の決算説明会資料のチェックにあけくれる予定です。
さて、前にブラザー工業がローランドDGに同意なき買収をしていることを記事に書きましたが(最後に再掲しております)、今般、ブラザーはTOB価格の引き上げをせず、買収を事実上断念した旨の報道が次のとおりありました。
5月9日にブラザー工業が次のとおりプレスリリースを公表しています。
https://download.brother.com/pub/jp/news/2024/20240509.pdf
今回の断念に対する怒りが文章に表れていますね。何か所かプレスリリースから抜粋します。
対象者とはローランドDGのことです。ブラザーの買収提案を真摯に検討してこなかったことを批判しているようですね。もし、ブラザーの言うとおりということであれば、ローランドの対応は批判される行動であるかも知れません。MBOを検討中に、突如「買収するぞ!」と言われたら、ローランドとしては頭にくるとは思いますが、株主にプラスになる提案があれば、それを真摯に検討することは買収対象会社の経営陣には求められているのですから。
「信頼関係を構築することは今後見込めない」とあります。結局、同意なき買収の肝はこの点のような気がします。
ブラザーはTOB価格のアップを提示すればTOBは成立したかも知れません。けど、結局、対象会社の経営陣と信頼関係が構築できない、つまり一緒に企業価値を高めることの方向性が一致していないのであれば、買収後の統合作業は成功しません。買収後に、言うことを聞かない対象会社の経営陣をクビにすることも勿論可能ですが、言うことを聞かない経営陣が多すぎる場合には難しいですよね。そういう点では、同意なき買収を成功させるには、事前に対象会社の数名の経営陣に内密にコンタクトをして、買収後のポジションなどを約束させることも考えられますが。
いずれにせよ、信頼関係が構築できないと買収のシナジーを発揮できず、高い買い物になり、今度はブラザーが自社の株主から買収は失敗だったのでは?と批判されるリスクがあるのです。
(関連記事再掲)ブラザー工業の同意なき買収
これまで2回記事を書いておりますので再掲します。