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ブラザー工業が同意なき買収提案(TOB) ー 上場企業の経営陣はざっくりでも良いので買収提案時のシミュレーションが大事ですね


同意なき買収は徐々に増えていますね

本日の新聞によれば、ブラザー工業が業務用プリンターなどを手がけるローランドディージーに同意なきTOBをしかけるようですね。以下の新聞報道です。

ローランドは米投資ファンドと組み、経営陣による自社株買収(MBO)を完了させる予定となっていたようですが、そのような中での突然のTOBのようです。私は、不勉強のためこのローランドという会社を良く分かっておらず、またMBOの内容の詳細も見てはいませんが、この手の同意なき買収ですが、やはり予想どおり増えていますね。

最近では、日本製鉄による東京製綱への買収、ニデックによるTAKISAWAの買収、第一生命によるべネワンに対する買収などの同意なき買収提案が着実に増えています。これらは、国内企業による同意なき買収ですが、今後は海外企業による日本企業への同意なき買収も増えてくるのではないでしょうか。

この同意なき買収の増加の背景の1つには、経産省の策定した「企業買収における行動指針」ですが、海外勢もこの指針は読み込んでいるはずです。

国内企業同士での同意なき買収の案件数が増え、日本でも馴染んできたところで海外企業も日本に攻める気がします。つまり、今は同意なき買収提案が日本の環境に浸透してきているか様子見をしており、ある程度案件が増え、十分に浸透してきた段階で海外勢も日本企業の買収に乗り出すような気がなんとなくします。私の勝手な想像ですが。

上場企業の経営者は万一の買収提案を想定したシミュレーションをすることが大事です

何度かブログでも記事を書いておりますが、同意なき買収提案の際に企業がすべきことがこの「企業買収における行動指針指針」に書かれておりますが、この指針で一番大事なことは、取締役会は会社に提案された買収内容の真摯な検討をしなければならないことです。

水面下で執行サイドが提案を受けた買収について、取締役会がうやむやにしてはならないということです。ここで、取締役会が検討すべき事項として3つあります。

  1. 提示される買収価格等の条件は軽視されてはならない。株価水準より高 い買収価格の場合、十分に検討すること

  2. 提示された買収価格・企業価値向上施策と現経営陣の下での企業価値向上施策を定量的観点から十分に比較考量すること

  3. 買収提案への諾否の合理性は、説明責任を果たせるようにすべき

要するに、買収提案の内容を最初から否定するのではなく、真摯に公正な加点から株主の利益に資するか否かの観点から検討せよということです。これってとても大事です。勿論、これは指針ですので、強制力のない、いわゆるソフトローですが、この指針によるプラクティスが増えてきておりこの指針を遵守することは事実上の義務になってきています。

株価が低迷している上場企業は、この経産省の指針をしっかりと読み込み、明日にでも急遽、国内・海外の事業会社が同意なき買収提案をしてきた場合にどういう流れになるか、自社で何をすることになるのかシミュレーションしておくことが大事かなと思います。準備万端である時とそうでない時では、有事の際の対応の差に雲泥の差が出ると思います。
何も知らないままですと、買収防衛アドバイザーの言うがままに対応することになり、業者費用だけで数億円かかるなどということにもなりかねません。企画部門などスタッフ部門が中心になり指針をしっかり読み込み、経営層にはざっくりベースで情報はインプットし、一方、関係する部門の実務メンバー間で予行演習をしておくことが大事かなと思っています。

(ご参考:過去記事)企業買収における行動指針、企業がなすべきこと

過去に同様の記事を掲載しておりますので、念のため再掲させて頂きます。ご関心のある方はご覧頂ければと思います