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株主資本コストを下げるメリット&下げるにはどうすればよいか(②)? ー 投資家の期待と信頼を高めるのが肝です


株主資本コストを下げるための要素

本年も残すところわずかです。最近の日経新聞に連載されている「数字でみる2023年」は面白いですね。資本市場の大きな動き、アクティビストに関する情報などがざくっと紹介されており、この記事に掲載の数値は暗記しておくと便利かと思います。こういった大きな数値を暗記しておいて、社内外の方との会話の中でそれとなく触れると「お!こいつ良く知っているな」という印象を与えることになります。
さて、本題ですが、少し前に株主資本コストを下げる大きな意義について、ROEを下げること、株価向上に繋がることを書きました。詳細は以下のとおりです。

前回から少し日が経過してしまいましたが、続きとして、株主資本コストをいかに下げるかについて本日は紹介したいと思います。

株主資本コスト=株主が投資で期待するリターンであり、ハイリスク・ハイリターンです。つまり、その企業の将来のキャッシュフローのブレが大きい場合には、投資家は高いリターンを求め、ブレが小さい場合には、それほど高いリターンを求めるものではないということです。リスクの高いものに投資するなら高いリターンを求めるという人間の行動と同じです。
この株主資本コストは、企業の将来に対する投資家の期待と信頼が高まる場合には、下がると言えます。では、どういう場合に、期待と信頼は高まるのでしょうか?

大きく次の4つに対する期待と信頼かと思います:①企業の成長性 ②企業の収益性 ③将来の予見可能性 ④経営者トップの経営能力(これは、ある著名な機関投資家のファンドマネジャーが以前に何かの書籍で同じようなことを言っていました)。この4つの言葉ですが、私も社内の会議や機関投資家との対話でもちょくちょく使用しています。

経営トップの経営能力は結構大事な気がします

企業が成長し、かつ、その成長が収益性(ROA、ROEの向上)を伴うものであり(収益を伴う成長ですね)、またそれが予見できることが大事であり、これが企業の成長性、企業の収益性、将来の予見可能性と言えます。

そして、意外に見落とされがちなのですが、個人的には結構大事かなと思うのは、4つ目の経営者トップの経営能力だと思います。これは、事業環境の変化の中において、迅速で果断な意思決定が出来る能力、中計の達成能力、合理的な判断が出来る能力など経営トップとして期待される能力です。

企業の将来性にはどうしても不確実性が伴います。世の中の規制が変われば企業業績は大きな影響を受けます。また、今回のダイハツ工業のような品質検査の不正問題が突然発生すると取引企業は大きな打撃を受けます。コロナ等の自然災害もそうです。いずれもまず予見できない事象です。こういう突然の出来事で企業業績は大きなマイナス影響を受けるのであり、要するに一寸先は闇なのです。

そういう不確実な経営環境の中で、投資家が最終的に信頼するのは、企業の経営トップの経営能力なのだと多います。「この社長に賭けてみよう」という心証を機関投資家が持つか否かなのだと思います。

どのように機関投資家に理解して貰うか

株主資本コストを下げるための要素は上記のとおりですが、それを機関投資家に理解して貰う必要がありますが、どうすれば良いでしょうか?

決算説明会資料や統合報告書で経営トップのメッセージを発信することが1つ考えられます。統合報告書が媒体としては適切かも知れません。ただ、問題は、紙に書けることには限界があるという点です。書面になると、どうしてもつまらない内容になったり、迫力にかける場合が多いです。文字として外に出るとなると躊躇してしまうのは、サラリーマン社長であれば、やむをえないところかも知れません。

ということを考えると、メッセージを発信するには、経営トップが機関投資家と直接対話をすることが大事になります。直接機関投資家と会話をして、その一連のやりとりの中で投資家が「経営トップの経営能力」の判断をするのだと思います。
足元の業績が必ずしも良くない企業の場合には、投資家からすると先行きはやはり不安なところが大きいのであり、そのような中において、投資家がその企業に期待と信頼を持つのは、経営トップとの会話なのです。
経営トップの語り口調がしどろもどろだったり、会話が弾まない、投資家の少しひねった変化球の質問に自信を持って応えられないような場合には投資家は不安になるものです。そういう点では、経営トップには、高いプレゼン能力も必須なのだと思います。