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議決権行使助言会社のグラスルイスが2024年の議決権行使助言方針を公表

今年のお正月は世の中は大きな出来事がありました。東京では地震の影響はありませんでしたが、被災された地方は本当に大変であったかと思います。北陸に事業所や工場のある東京の企業などは、地震関連で危機管理部のような部署が対応に追われたのではと想像します。危機管理部門の方はこういう時に活躍するのが仕事ですが(普段は定常業務はないと思うので)、元旦から情報収集及び経営トップへの報告等で大変であったかとは思います。
本題ですが、本日の新聞報道にもありましたが、議決権行使助言会社のグラスルイスが2024年の株主総会での議決権行使助言方針を改定したようです。
英文になりますが、以下が全文です(まだ日本語訳は公表されていないようですね)

https://www.glasslewis.com/wp-content/uploads/2023/12/2024-Japan-Benchmark-Policy-Guidelines-Glass-Lewis.pdf?hsCtaTracking=5fd72125-ea29-4c33-8a95-834b1546d5c4%7C385ced03-070a-431f-b720-88968561d6a7

改定事項はいくつかありますが、企業への影響が大きいと思われるのはジェンダー・ダイバーシティと政策保有株式かなと思います。

ジェンダー・ダイバーシティ

従前、プライム上場会社の取締役会に占める多様な性別の取締役を10%以上求める方針としていましたが、これまでは例外規定を設けていました。例外規定は、ダイバーシティ促進に関する企業の開示情報を精査し、現状の不十分性に関する十分な説明、今後の改善計画などが開示情報において確認できる場合には、反対投票推奨を控えることもあるという内容でした。

この例外規定が2024年から停止されるようです。つまり、取締役会に占める女性取締役の比率が10%未満の場合には、監査役会設置会社と監査等委員会設置会社では取締役会議長、指名委員会等設置会社では指名委員会の委員長の選任に反対投票が推奨されるということです。

10%未満の企業で「人選どうしよう」とお悩みの場合は、ひとまず弁護士、会計士、税理士あたりの専門業者から適当な女性を探して、本年の株主総会で社外取締役に起用しておくのもありかと思います(ただし、ビジネスの門外漢でありながら、空気を読めずに取締役会で頑張りすぎる人を選ばないことが肝要です)。

政策保有株式

これまでは、政策保有株式が連結純資産の10%以上の場合、原則、取締役会議長に反対推奨するが、例外的に①明確な縮減目標値と期日を含む縮減計画が開示されている場合又は②政策保有株式の保有比率が、対連結純資産の10%以上 20%未満のときには、当該企業の過去5年間のROEの平均値が 5%以上である場合には、反対推奨を控えるとしていました。

2024年からは、反対推奨を控える基準が次の2つに改訂されます:①5年以内に 20%以下に縮減することが明確に開示されている場合又は②政策保有株式の保有比率が対連結純資産の10%以上20%未満のときには、当該企業の過去5年間のROEの平均値が8%以上である場合、または直近のROEが8%以上である場合。ROEの基準が従来の5%から8%に大きく上げていますね。世の中の動きを考えると特に違和感はありません。

これでISSとグラスルイスの助言方針が公表されましたので、海外機関投資家比率の高い企業で、経営トップ等の賛成率を高めたい企業は、助言方針にそうような開示や人選を検討することが必要になります。なお、ISSの議決権行使助言方針は以前に掲載した記事を再掲いたします。