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未だに株主総会の準備に相当力を入れている会社って意外に多いです ー けど株主総会の出席者は誰かを良く考えましょう


株主総会の準備にそんなに力を入れなくても

いよいよ来週からは多くの企業で定時株主総会が開催されますね。多くの企業では、社長以下取締役は総会の準備としてQ&Aの準備・読み込みに相当な時間をかけるのだと思います。けど、個人株主しか発言しない総会の準備にそこまで時間をかける必要はあるのでしょうか?

プロである機関投資家との経営トップのスモールミーティングでもそこまで対話の準備はしないのに、総会リハーサルにめちゃくちゃ頑張っている会社ってありますよね。証券会社に在籍していた時からそういう会社って結構見てきました。けどこれってとっても不思議です。

株主総会に出席するのは誰?

多くの会社員の方はご存じないかも知れませんが、株主総会に出席するのは取引先などのいわゆる安定株主と個人株主が主です。取引先は総会で質問をすることは99%ありません。質問者のほぼ100%が個人株主です。

総会屋(30代以下の方はこの言葉を知らない方も多いかも知れませんが)が重箱の隅をつつく質問をした20年前以上前であれば、総会リハーサルに力を入れるのも良く分かります。だって、当時は、総会屋は開示物のとても細かな表現を総会で指摘して、議長や取締役に質問するのですから、その前提で総会Q&Aも非常に細かい内容を準備し、総会当日の回答のお作法まで弁護士を交えて綿密に準備する必要があったのです。本当に細かい準備をしました。でも今はそんな時代ではないです。

世の中が大きく変化したにも関わらず、未だに非常に細かい総会Q&Aを作成し、なんちゃって総会屋のような個人株主も総会に出たことがないのに、リハーサルを頑張っている企業を見ると「正直、株主総会の準備にここまで時間をかけなくても良いのに」と思ってしまいます。勿論、不祥事などがあり、株主総会での厳しい質問が予想されるような特殊なケースは別ですが。

そもそも個人株主の質問は、細かい数値の準備の点を除けば、会社の役員であれば誰でも回答できるような初歩的なレベルのものなのです。

株主総会の準備などは最低限の労力をかければ足ります

不祥事もない会社が大変細かい総会Q&Aを準備して、そのリハーサルに相当の時間をかけているとしたら、それは少し考え直した方がよいかも知れません。総会を担当しているのは総務部であることが多いですが、地味な総務部が存在をアピールできる場が株主総会ですので、自分たちの存在を社長以下に示したいという思惑もあるのでしょうが・・。そんな話を証券会社時代に取引会社から聞いたことがあります。

けど、総会準備としてQ&Aの作成・準備・リハーサルに多大な時間を割くことは、金と時間の無駄かなと思います。だって、Q&Aは部長・課長以下の社員が作成をするのであり、そのコストも馬鹿になりません。その上で、社長以下の取締役がそれを読み込み、その上で修正したりして相当な時間がかかります。トータルで見ると相当な金を費やしていることになります。

総会は年1回の役員の勉強の意味もあるという声も聞きます。けど、総会Q&Aを作成した方はご存じだと思いますが、基本的に総会のQ&Aの回答は「多くを株主には語らない」「仮に語るとしても差しさわりのない回答にとどめる」というスタンスになっています。とすると、総会Q&Aの回答を作成したところで、取締役の勉強にはあまりならないのかなと思います。

個人株主がもっとも知りたい話題は企業の不祥事、株価、ROE、役員報酬、企業の先行きあたりでしょうから、このあたりの総会Q&Aをさくっと準備しておくなどの最低限のQA準備さえしておけばよいのです。

それより大事なのは、紋切型の演説口調の回答ではなく、自分の言葉で語り、株主がその会社の将来に期待して株式の買い増しや保有継続をしたいと思わせることかなと思います。総会の些末なQ&Aなど準備する必要はないのであり、社長や取締役が常々考えていることをゆっくりと総会の場で自分の言葉で語りかければ良いのです。