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「市場の『ピラニア』と対峙を」 - 安定株主の「ピラニア」化と安定株主に頼らない企業経営


「市場の『ピラニア』と対峙を」

先日の日経新聞で次の記事がありました。

資本市場にもピラニアに象徴される「緊張感」が必要であり、新しい株主は経営に牙をむくピラニアにもなるし、会社を守る水槽の仕切りにもなるという内容です。非常に分かりやすい記事であり、上場企業の経営者の方に是非しっかりと目を通して頂きたい内容です。

上場企業では「政策保有株主がいなくなる」「安定株主がいなくなる」ということで大騒ぎしているところもあるかと思います。アクティビスト(物言う株主)が跋扈したり、買収者が出現する時代、過度に心配している企業は多いのではないでしょうか?

でも、そんなことで騒ぐのはナンセンスかなと思います。安定株主神話は既に崩れさっているのですから。

安定株主の「ピラニア化」

先日、このnoteの「ビジネス書を中心に書評を書いています」で『関西スーパー争奪 ドキュメント混迷の200日』(日本経済新聞社)について記事を投稿いたしました。

関西スーパーの安定株主であった伊藤忠商品が「伊藤忠食品の乱」を起こし、関西スーパーを巡る争奪戦の行方は混迷を深めていきました。これは数年前の出来事です。安定定株主が企業の経営に口を挟まず、株主総会の議案に盲目的に賛成票を投じるという「シャンシャン議決権行使」の時代は終わりつつあるのです。

安定株主の最たる企業に生命保険会社(生保)があります。現時点において、生保が投資先企業の会社提案に反対するケースは少ないですが、生保は結構気合を入れて議決権行使基準を策定し、基準に抵触する企業には積極的に対話を申し入れています。ちなみに、日本生命の議決権行使基準は次のとおりです。

https://www.nissay.co.jp/kaisha/csr/shisan_unyou/ssc/pdf/youryou2024.pdf

もっとも現状に関していえば、生保は厳しい基準はあるが運用は緩いというのが現状です。しかし、この緩い運用が今後も続くかと言うと違います。

恐らく、数年後には生保の議決権行使の運用も厳しくなり、何度対話をしても低ROEが続く企業などには、総会で議案に反対する時代も近いのだと思います。つまり、これまでの安定株主もピラニア化しつつあるのです。

安定株主がいなくて本当に困るか?

安定株主が保有する株式を市場で売却するとなると、売却株数が多い場合には機関投資家がその株を取得することになります。機関投資家は伝統的な安定株主でないので、機関投資家に保有されることで不安になる会社も多いと思います。スチュワードシップ・コードにより、最近の機関投資家は合理的な議決権行使をするので、ピラニアと同じであるということです。

しかし、ここで上場企業の経営トップの方にご理解頂きたいのは、資本市場が求めている最低限のことが出来ていれば、機関投資家は正直それほど厳しい行動は起こさないということです。この数年のコーポレートガバナンス改革で企業に求められている最低限を超える以上のことを企業には求めていないのです。

「当社はROE1%台が継続しており、機関投資家が厳しいのだけど」という会社も中にはあると思います。けど、そもそもROE向上がこれだけ強く言われている時代に、ROE1%が3年連続続いているような中で、それでも社長に賛成してくれということは今の時代、あまりに都合の良い話です。

ということで資本市場の求めに応じてた企業経営をして、きちんと利益を出している会社であれば、安定株主などいなくても何ら恐れることはないのです。そもそも業績が悪くても、株価が低迷していても何も言わない株主がいるとすれば、それは自身の権利を理解していない不勉強な株主ということになります。

ここをしっかりと理解する必要があります。このあたりは以前に次の記事を書いておりますので、ご興味のある方はご覧頂ければと思います。

以上になります。記事を読まれてお気づきのことやご質問、ご感想など何かありましたら、コメント又はnoteのトップページの一番下の「クリエイターにお問い合わせ」からご遠慮なくご連絡頂ければと思います。