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「鳥越製粉にアクティビスト(物言う株主)が株主提案」との報道 ー スタンダード上場の地方企業もターゲットに


鳥越製粉(コード2009)に株主提案

あと少しで2月です。3月期決算企業の3Q決算が来週あたりから本格化します。3Q決算に通期の業績予想の達成の確からしさがクリアーになるのが3Qですので、株価の変化の動きも色々と出てくると思います。
これとともに、6月の定時株主総会に向けてアクティビスト(物言う株主)の行動も活発化するタイミングです。報道等がされた株主提案などをnoteでも時々拾い、解説なども加えたいと思います。
さて、先日、ヤフーニュースに次の記事がありました。

鳥越製粉は福岡市に本社を置く製粉の中堅で東証のスタンダード市場に上場している企業です。報道によれば、アクティビストは香港の投資会社であるリム・アドバイザーズのようです。著名な投資ファンドですね。

鳥越製粉の平時導入型の買収防衛策

鳥越製粉のホームページを見たところ株主提案の内容はまだ出ていませんが、上記の報道によれば、鳥越製粉が買収防衛策を導入している点についても投資ファンドは問題視しているようです。ということで、鳥越製粉のホームページで見たところ2021年2月の株主総会で平時導入型の買収防衛策を継続更新しています。プレスリリースは次のとおりです。

http://www.the-torigoe.co.jp/tousi/pdf/kabusiki2021.pdf

ざっと眺めた限りですが、対抗措置の発動については、独立委員会の勧告を受けて取締役会会決議で発動する場合と株主意思確認総会に諮る場合のスキームになっています。買収防衛策のスキームは多くの企業で大きな差はないので、スキーム自体はなんらおかしなものではないかと思います。

ただ、機関投資家の目線から見た場合には、事前警告型の買収防衛策を導入しておくこと自体の批判が強く、それがPBR1倍割れの場合で、かつROEが低迷している場合には、批判は「倍増」です。これはほとんどの機関投資家に共通した考えです。

私自身、過去10年以上にわたり事前警告型の買収防衛策の導入・更新の実務に関与してきて、多くの機関投資家とも毎年、買収防衛策について会話をしていますが、特に近年は有事導入型の買収防衛策の有効性が明確になったこともあり、事前警告型への批判は強いです。この数年で買収防衛策を廃止する企業が大きく増加していますが、それは株主総会で機関投資家の賛同を得るのが難しいため廃止しているのが理由です。

鳥越製粉はPBR1倍割れであり、ROEも低いですね。株主資本コストがどの程度かは分かりませんが、コストを下回るROEかと思われます。恐らく機関投資家の保有比率が高くないこともあって、買収防衛策を継続更新が出来ていたのだと推測します。
昨今のアクティビストの事例を見ると、株式の大量取得行為を進めるため買収防衛策の廃止の株主提案をするケースは多いです。鳥越製粉の現時点の株主構成で、国内外の機関投資家比率が高い場合、仮に買収防衛策の廃止の株主提案をした場合、それに賛成する投資家は結構多いように私は思います。

大株主(総合商社、都銀・地銀等)も合理性のある判断が求められます

鳥越製粉の2023年3月の有価証券報告書で大株主を見ると22年12月31日現在で、三井物産、福岡銀行、三菱UFJ銀行、広島銀行、佐賀銀行、損害保険ジャパン、三井住友信託銀行などが名を連ねています。

このご時世、金融機関がこれだけ安定株主として岩盤として株式を保有しているのもどうかなとは個人的には思いますが、それはさておき、これらの事業会社はいわゆる安定株主になりますが、各社とも上場企業のため、漫然と株主提案に反対するようなことは難しいと思います。

それは、自社の株主に対する説明責任があるし、そもそもコーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株式に対する議決権行使は適切にされることが求められています。機関投資家と会話をすると、「百歩譲って政策保有株式を持つとしても、その企業の総会議案に対して自社の株主に合理的に説明できるように適切に議決権を行使していますか?」という質問を頻繁に受けます。ということで、今後の投資ファンドと鳥越製粉との攻防では、大株主である安定株主がどういう判断をするかも注意深く見たいと思います。

なお、鳥越製粉の財務内容は良好であり、コーポレートガバナンス上も色々な検討が出来る面白い題材でもあると思い、ヤフーの記事を見て、私も即座に鳥越製粉の株式を一定数購入しました。ということで株主としての立場としても(株価が自分の損得にも大きく関わるので・・)、鳥越製粉の状況を今後、細かく分析して行きたいと思います。