見出し画像

健康マインド(可愛さの誘惑🌸②)短歌は心のお守りです。東直子氏

生意気ですが私が紹介させていだきます。

こすれあうものみな白し谷の抱く海にしずかに足さしいれる
(海の椅子)

生きている指を重ねて感じあう地の底をゆく電車一輛
(燃えるみずうみ)

あのときはやさしかったし吹く風になにか千切ってやまないこころ (海のロビンソン)

ちり紙にくるんだお金てのひらにぬくめて帰るふゆのゆふやみ
(雨が降りさうで)

水田に緋鯉は甘く泳ぎ去りわたしは淡くとりのこされる
(緋鯉)


俳句現代2000年9月号掲載(緋鯉)

身のうちの水の迷路が震えだす八ミリフィルムに再生されて
(水の迷路)

掻きこわす皮膚よりあおい汁垂れてこどもよごらんあたらしい絵を (こどもの時間)

靴下はさびしいかたち片方がなくなりそうなさびしいかたち
(人形の笑窪)

おねがいねって渡されているこの鍵をわたしは失くしてしまう気がする  (ひやしん)

森の中に出かけてゆくのわたしたちアーモンド・グリコを分けあいながら  (森の中に)

思い出を汚してもいい きつくきつく編んだみつあみゆうやけのドア (草かんむりの訪問者)

雲を見て飲むあついお茶 わたしたちなんにも持たずここに来ちゃった (ハルノシモン)

ぎこちない抱擁がありぎこちない悲しみがある あさのつめたさ  (わたしたちのかたち)

萌える野にさみしい父と母がいて重ね合わせるうすいハンカチ
(わたしの鈴)

どの作品も私には、その可愛さに足を止めて、屈み込んで見る、路地の花です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?