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映画『夜明けのすべて』を見て、泣いた。

情報解禁されてからずっと楽しみにしていた映画のひとつだった『夜明けのすべて』。朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で共演した松村北斗くんと上白石萌音ちゃんが共演すること、瀬尾まいこ先生の小説が原作であること、『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱監督の作品であること、すべての要素がわたしをドキドキさせた。

公開日にさっそく映画館に足を運んだ。ついに映画が始まった。スクリーン上に映る16mmフィルムで撮影された映像は、全体的にザラザラしているけど、どこか温かみのあるものだった。

正直言うと、冒頭部分からずっと泣きそうになっていた。PMS(月経前症候群)に苦しむ藤沢さんの姿に、自分を少しだけ重ねてしまったからだろうか。

わたしの月経はそれほど重いほうではない。生理が始まると便秘になったり、お腹が張って終始苦しかったり、腰が痛くなるので長時間座り続けることができなくなったりする。でも動けなくなるほどの生理痛やめまい、吐き気はこれまでの人生で体験したことが1〜2回程度で、基本的にはない。

ただPMSと診断されるほど深刻ではないものの、生理前はちょっとしたことでイライラしてしまう。ご飯を食べている咀嚼音がうるさい、ちょっとした言動が気になる、字が綺麗に書けない、タイプミスが増える……。日常のちょっとしたことが、わたしを「イラッ」とさせてしまうのだ。

家の外ではなるべくこうした「イラッ」を飲み込んでやり過ごしているものの、気がゆるんでいる家の中だと、どうしても家族に当たってしまうときがある。きっと生活をともしている家族も、こうした異変に気がついているのだろう。

そんな中で、わたしにはどうしても許せない思い出があるのだ。高校生か大学生のころ、わたしはいつもどおり朝ご飯を食べていたが、その日はちょっとしたことがきっかけで父親と口論になった。しばらく言い合いになったが、埒が明かないと感じたのか、父親が「なにイライラしているの?生理前?」とぽつんと言い放った。続けて隣に座っていた母親も「そうよ、生理前だからイライラしているの?」と応戦してきた。

この瞬間にわたしの中でなにかが切れてしまった。人生で感じたことがない激しい怒りとともに、「そんな言葉にわたしが傷つかないとでも思って、発しているのか?」と戸惑い、父親だけではなく母親までも同じような言葉を口にしていることに深く失望した。それ以来、両親と意見がぶつかったり、口論になりかけるたびに、同じような言葉をかけられるのではないかと、心のどこかでビクビクしてしまうのだ。

「自分の体なのに、自分の思い通りにならないこと」「周りに迷惑をかけてしまっている自分が情けなく思えること」。映画の中で藤沢さんや、パニック障害を患っている山添くんが感じているであろうこれらの感情は、わたしも人生のどこかで感じたことがあるものだった。映画を見ながら「わたしも同じようなこと感じたことある」と思うと、涙が止まらなかった。

映画『夜明けのすべて』では、藤沢さんと山添くんはお互いの理解者となっていく。この2人の関係性はステキで、「同志がいることはきっと心強いだろうな」と何度も思わされた。さらに2人が務めている栗田科学の栗田社長や社員さんたち、山添くんの前職での上司、周囲の人たちも本当にステキだった。直接口にすることは少ないけど、彼らのことを温かく見守り、そして受け入れていることがよく伝わってきた。「世界がこんな人たちであふれていたらいいのに」映画を見ながら、何度も感じた。同時に「わたしもこういう人間になりたい」と強く思った。

これからは夜空を見上げるたびに、きっとこの映画の温かい気持ちを思い出すんだろうな。そういう思うと、少しだけ気持ちが軽くなる気がする。

映画『夜明けのすべて』に出会えてよかった。


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