おススメ漫画『Shrink~精神科医ヨワイ~』
みなさんにとって安心できる物事ってなんでしょうか。私はYouTubeを見たり好きなゲームをしたり、執筆活動だったりがそれにあたります。
そして私はもともと心理関係の学部に入って今も障碍を抱える児童さんたちのサポートを仕事として行っています。しかし、同時に私は大学生時代に勉強をした内容からこのように思ったんです。
「私に心理士やカウンセラーは無理だ」
これは私のストレス耐性だったりコミュニケーション能力だったりでした。そしてこの仕事を始めてもなおその思いはあったのですが、その思いが少し変わったきっかけがありました。それが表題の漫画『Shrink~精神科医ヨワイ~』です。
今回はそんな漫画をご紹介するとともに、私はそれを受けてどのように気持ちが変化をしたのかをお話しできればなと思います。
①漫画概要
当漫画は2019年より連載を開始、初の単行本は2020年1月に出版されました。
新宿ひだまりクリニックを開業した主人公、弱井幸之助。そして彼と二人三脚で働く看護師雨宮有里。彼を中心として様々な『悩み』を抱えた人たちが彼らのもとに訪れ、悩みを小さくしていく物語、これが簡単な概要です。
個人的には主人公である弱井より、看護師の雨宮にカメラを合わせて読んでいくとすんなりと読みやすくなるかなと思います。雨宮が狂言回し的な役回りをしており読者の疑問などを訪ねてくれたりしますからね。
さて、先ほどの概要、少し違和感を持たれた方もいるかもしれません。『悩み』を抱えた……? 悩みを小さく? と。
これはあえて書かせていただいたものであり、私がこの漫画を通して重要に思えた部分がこの二点だったのであえて強調した書き方をさせていただきました。それはどういった意味か。それを詳しく解説させていただたく思います。
②Shrinkとは
漫画の冒頭にて伝えられる部分ですが縮む、小さくなるといった意味合いを持つこの英単語『Shrink』。
米国では精神科医をShrinkと呼ぶそうです。諸説はあるそうですが、妄想で大きくなった患者の脳を小さくしてくれる仕事だからとのこと。
さて、脳を小さくというと違和感を感じますが個人的には悩みを小さくするという意味合いで受け取っています。もちろん、漫画内には様々な障害の名前が出てきます。パニック障害、自閉症スペクトラム、アルコール依存症……。それらはしっかりと病名として存在しますがその病気を治療する、というよりはそれらによって引き起こされた日常生活における不安を取り除き小さくしていくお手伝いをこの人たちはしているんだと思えたんです。だからこそ、小さくするという風に書かせていただきました。
もちろんのことですが、薬を使った治療も行っています。町のクリニックですのでここでは難しい場合は大きな病院を紹介することもあります。しかし、そういった患者さんたちすべてに寄り添うその様子を描かれています。
③患者の悩み
先にも上げましたが病名としてつけられている名前があります。そして治療方法を考え施しています。ただ……風邪や骨折といったものとは明確的に違うなと持ったのが『完治』という部分が見えにくいところです。
パニック発作が起こらなければ完治なのか、そもそも自閉症は完治できるものでもないし……。そういったことを改めて考えた際にそもそもなぜ彼らは苦しんでいるのかを考えると、それらによって日常生活で困っているからだと思うんです。
たとえ話ですが、お薬や機械によって抑うつ傾向をなくしたり、パニック発作を起こらなくさせられる、そんなものが開発されたとして。それらがあるから絶対大丈夫なのか、といえばそうではないと思います。もし、それらが発症していたことによってお仕事をなくしていたら? 人間関係のトラブルを抱えていたら? それらを使い続けるランニングコストは? いくつもの疑問が出来てしまう……。それは果たして本当に完治をしたといえるのだろうかと。
だからこそ、彼らに向き合いそれらとどのように接していければいいのか、苦しいのであればどのようにすれば苦しくなくなっていくのか、そして日常生活での困りごとを少なく、小さくしていくことが重要なんだと思うんです。だから私はあえて『小さくする』という書き方を行いました。
④私が出来る事
先にも触れました通り私はカウンセラーなどにはなれないと思っています。そしてそれは今もなお変わりません。しかし、この漫画を読んで思えたのはたとえカウンセラーなどでなくても人をさせられるそんな存在になれるのではないのかな、ということです。
この漫画内ではもちろんですが主人公である二人も映されますがそれ以上に様々な悩みを抱えた患者さんたちの姿も映されます。その中には確かな友人らがいる人もいますが、逆に親から圧をかけられていたり、家族に見放されてしまった人もいます。しかしながら、同時に彼らを支えようとする人たちもいるんです。
例えば摂食障害編で出てきた自助グループ、例えば産後鬱編では産後ケア施設等……。医者やカウンセラーだけでなく助けようとする存在というのはたくさんありました。私は残念ながらまだそういったグループへは参加をしたことはありませんが、そんな大層な存在でなくても、道端の花のように見つけられれたらホッと安らげれるような存在になれれば素敵だなと真に思っています。それもまた一つの支えかたである、と。
精神病なんて、そんな風に思われる方はいまだ多くいます。そして、残念ながら偏見もまたつきものです。自傷行為、パニック発作、過呼吸……。それらを全くの偏見なく見るのはもしかしたら難しいことかもしれません。私の中にも偏見というものは存在します。それは人である以上仕方のないこと。
だからこそ、それらを受け入れ自分が出来る範囲で困っている人を支える、そんなことが出来たらどれだけ素敵なんだろうか、それがこの漫画を受けて私が出来る事ではないかと思えたんです。
⑤まとめ
この漫画ですが、もちろん医療漫画として読んでも楽しめると思います。様々な病に対してどのような治療が行われているのかを知るきっかけにもなると思います。また、人間ドラマとしてみるのも面白いでしょう。アルコール依存症編ではメインとなる患者さんが抱える人間関係の複雑な様子がうかがえます。一つの漫画として純粋に楽しむことはできると思います。私はそういった方面からもこの漫画を楽しんでいます。そして同時に弱井先生のような存在は一つのモデルだと私は思いました。
ただ、同時に……私は絶対に彼らのようにはなれません。もちろん、私は私であり他のだれかではありませんから当たり前です。だからこそ、私個人が出来る何かを行えれば……それが私が出したAnswerです。
さて、そんな私ですがいつかやってみたいことがあります。それは自助グループへの参加、いえ立ち上げです。何の自助グループか、それは大人の発達障害についてです。その中でも特にグレー的な存在がふらりとやってこれるそんな場所を立ち上げるのが夢です。ただ、今現在、私にはそう言った専門的な知識も少ないですし何よりお仕事の方が頑張り時ですのでそちらに集中をしたいんですよね。なのでこの夢は後回し、今できることをしっかりと行うつもりです。
最後になりますがこの漫画、医療として読んでもよし、物語として読んでもよし、心の支えとして読んでもよし。ぜひとも一度見ていただければと思います。
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