熊の野郎

熊の野郎は、以前働いた職場での一応先輩だった。
俺が最初に配属されたのは、夏のシーズン物の部署だった。
ここで熊はもうベテランらしく、アルバイトのくせに威張りまくっていた。
俺は当然バイトの熊の部下では無い。だが、そこの部署の課長が、便利使い出来るから、熊を持ち上げて、手駒に使っていた。
その為、増長した熊は、威張っていたのである。

3年後、俺が統括している部署が、繁忙期だった。
そこで、他部署のバイトを招集して、仕事をさせていた。
そこには熊もいた。
熊は俺が責任者なのに、新入社員の時のままみたいに、偉そうにしやがった。
俺は熊を怒鳴りつけ、そこはそうやるんじゃ無いと、教育的指導をしたのだった。
勿論熊は面白くなく、俺とは前に3ヶ月仕事してて、顔見知りなのにひと言も話さなかったw

それから5年。
俺はとある総合病院の歯科に通っていた。町の歯医者では出来ない奥歯の根を断ち切るとかの治療をしていたから。
そこで支払いの為に待ってると、「熊さん」と聞いたことある名前が、呼ばれたのだった。ここでは熊と書いたが、あまり聞かない苗字だったから、へぇ、熊と同じ苗字の人がいるんだ、と見たんだ。
するとそこにはかなり老け込んだ熊が、足を引きづりながらいたのだった。
熊のバイトしていた部署は、現場作業である。重いものを持たなくてはならない。
その時見た老け込んだ熊では、もう働けなくなってるだろうな、と思った。
熊も俺に気づいたみたいだが、互いに話しかけもしなかった。
俺は歯の治療終わってからは、その総合病院には行っていない。
だから、熊とはそれっきりだったよ。
熊はまだ生きてるかな?

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