社長のスピード違反

俺は経理の仕事をしていたから、普段から社長や常務とか役員から個人的に用事を頼まれていた。主に銀行での個人的引き出しや納付だったが、買い物頼まれたりする事もあった。厳密に言えば、業務では無いのだが、ただの歯車の会社員に拒否権は無いからw
それに銀行での引き出しは、実際には俺は指示出すだけで銀行行くのは毎日銀行業務してる部下だったから。
買い物は流石に部下にやらせたら、パワハラになるから自分で行っていた。

ある朝、内線電話で社長室に呼ばれた。
行くと、「これ支払って来てくれ」と振り込み用紙渡された。それについて尋ねたりしたら、自分のためにならない。だから二つ返事で引き受けた。ここでぐずぐずして社長の気を損ねたら、報復人事で他の都市の現場に人事異動で飛ばされる事もあるから。実際に社長に対抗して社長の座を狙っていた常務は、取締役を外されてただの常務になり、部下なしの新設部署に1人だけ配属となった。また常務の懐刀は、地方の支部の現場に飛ばされていたから。
ま、ぐずぐずしてるくらいではそこまではされないけど、心象悪くしたら、次の定期人事異動でほぼ会社の中心部の経理から本社勤務でも他の部署の現場に移動される可能性はあったからね。
実際、そう言う人も見てるから。俺が入社した時の上司の課長は、常務派だったので、常務失脚と同時に営業部の課長から地方の課長に飛ばされたのだった。移動してから仕事で俺に電話してくる時は、昔は横柄だったのに敬語で話して来たから、その待遇が悲惨だったのは想像に難く無い。

話を戻す。
社長に頼まれたのは、交通違反の反則金の納付だった。スピード違反である。20キロオーバーで、8000円だったかな?
俺はこれは自分で行ったほうが良いのか悩んだが、他の支払いなんかと一緒に銀行周りしてる部下にやらせた。
その部下は、飲みに行った時、「もう少しスピード出して、免停になってたら、前社長の運転手が社長の運転手になったんですかね?」と笑っていた。
前社長は、新規事業に狂い、メインバンクからもこのままだとヤバいと言われ、株主サイドからも匙を投げられ、現社長が関連会社から引き抜かれて、新社長となったのだった。
新社長である現社長は、車は自分で運転するかのが好きだったから、元の社長の運転手は、普段は総務部の下働きしてて、前社長は役員としては残っていたので、その出かける時に運転手をしていた。
その人に車の運転を任すしかなかったろうね、免停になっていたら。

個人的には、スピード違反なんて恥を自ら晒す形で、社員に納付させたのは、訳分からんかったな。

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