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サッカー部のイケメンが、嫌われ者になったのはなぜ?


中学時代はモテモテだった吉田くん

中学時代、勉強ができて、女子に人気のあるサッカー部員・吉田くん(仮名)がいた。私はクラスが違ったので面識はなかったが、同じクラスの女子・恵子さん(仮名)が、
「かっこいい!好き!」
と騒いでいたので、存在は認識していた。
勝手な印象だが、性格も悪くはなさそうだった。勉強もサッカーもできて、さらに女子にも人気があって、気持ちに余裕があったのであろう。陽キャ男子のグループの中で、やや物静かに大人っぽいふるまいをしている印象だった。

吉田くんとは同じ高校に進学した。高校では、特別に勉強ができるとか、かっこいいと騒がれているとか、そういう目立つ存在ではなかった。これは進学校あるあるで、中学時代の優等生も、進学校に入るとただの人になるのはよくあることである。私は彼とはクラスも違うので、存在すら意識することはなかった。

高校2年のある日、街でばったり恵子さんに会った。それほど仲良くなかったのに、後ろから名前を呼ばれ、呼び止められた。
恵子さん「吉田くんと同じ高校だよね?」
「ええ、まあ…」
恵子さん「吉田くん、女子と話してる?」
「ああ、クラス違うからわからないけど…話してるかな?」
恵子さん「その女子、美人だった?」
「うーん…ごめん、本当にわからないの。女子と話してるかもしれないし、話してないかもしれない」

私と恵子さんと同じクラスで、彼女が「吉田くんが好き」と騒いでいたのは、中学1年の頃である。そこから高校2年まで吉田くんにこだわっているのはびっくりしたが、彼女にとってはそれだけ魅力的な男子だったのだろう。何か情報があれば教えてあげたいが、本当にないから仕方ない(苦笑)。
吉田くんは、そのくらい「かっこいい男子」だったのだ。


吉田くんが嫌われ者に転落した理由

高校3年でも吉田くんとは同じクラスにならず、相変わらず存在すら意識することはなかったが、卒業間近で彼の噂を耳にする機会があった。
残念ながら、かっこいいとか、頭がいいとか、そういう話題ではない。
「言動のヤバい嫌われ者グループの一員」として、彼の名前は女子の間で憎々しげに語られていた。
吉田くんは、恵子さんが心配するような彼女や女友達の影はまったくなく、男子2人といつもつるんでいた。男子同士でつるむのは悪いことではないが、この3人組はとてもタチが悪かった。つるんで女子の悪口を言っているのだ。直接言うのではなく、聞えよがしにひそひそ話をして、当事者が近くを通るとニヤニヤしている。当然、女子からはものすごく嫌われる。この3人のユニット名まであったくらいだ。

私が思ったのは、
「今後、また恵子さんに会って、吉田くんの近況を聞かれても、とても本当のことは言えないよなあ」
ということだった。
中学時代に憧れていて、高校に入っても動向が気になるようなかっこいいヒーローが、高校では「つるんで女子の悪口を言う学年有数の嫌われ者」になっているなんて、あまりにも悲しすぎる。
その後、恵子さんに会うことはない。今後どこかで会う機会があり、吉田くんの高校時代のエピソードや近況を聞かれたら、
「同じクラスになったことはないし、同窓会にも来ないから、吉田くんのことはわからないなあ」
と無難なことを言うしかないであろう。
高校卒業後のことは本当に知らないし。彼は中学の同窓会にも、高校の同窓会にも顔を出さない。高校時代については「顔を出せない」であろう。


夢中になれるものが「女子の悪口」だった悲しさ

かなり推測が入るが、高校時代の吉田くんは、成績は良くなかったと思う。サッカー部にも入っていなかったはずだ。それでもいつもつるむ友達がいたのだから、それなりに楽しかったのではないかと思う。ただ、その仲間とつるんで「女子の悪口」で盛り上がっていたのがヤバかった。
進学校でひどい成績をとってしまうのはよくあることで、私も経験がある。中学時代にやっていた部活を続けられないこともあるだろう。できないなりに必死に勉強や部活に取り組めば道は開けるものだが、それが嫌なら、友達とつるんでゲームセンターに行ったり、麻雀をしたり、こっそりバイトをしたり、同じ高校の女子とは話しにくいのであれば他校の彼女を作ってみたり、もっとマシなレジャーはたくさんあるはずだ。吉田くんだったら、中学の同級生の女子に声をかけたら、大喜びで付き合ってくれる人はいたと思う。
だが、彼はそういう建設的な選択をせず、進学校の底辺で他人の悪口を言い、女子全員を敵に回すという「青春の無駄遣い」をしてしまった。中学時代のモテ男の矜持はないのか、と言ってやりたい。

人生はいつでも好調とは限らない。特に人生経験の少ない若い頃に困難に直面したら、どう対処したらいいかわからない。そのときに、必死にもがくことなく、他人の批判をすることで現実逃避し、その癖から早めに抜け出すことができなければ、人生はかなり悲惨なものになる。
高校時代にこの癖がついてしまえば、大学受験、就活で苦戦する。女子の悪口を言うのが癖になっている男がモテるはずはなく、恋愛、婚活もうまくいかないであろう。運よく会社に入れたとしても、そんな性格では同僚やクライアントとうまくいくはずがない。ヘイトを募らせ、ネットに悪口を書き込み、名誉棄損で訴えられる未来まで予測できてしまう。
そうならないためには、他人の批判をしていても自分の人生が好転するはずはないということを肝に銘じるしかないだろう。





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