相方にはスマホを捨ててほしい【心は全裸で #12】

皆さんごきげんうるわしゅう。
カイキエンというお笑いコンビで活動しているイチジョウコウタです。ひとつよしなに。

先日私は夜遅くの静まったスーパーの鮮魚コーナーにて、量は少ないけど高級なサーモンと安くて沢山入ったサーモンを交互に見つめていた。

「絶対こっちのがいいよ」

知らないおじさんに高級なサーモンをオススメされた。
私は安くて沢山入ったサーモンを買って帰った。
美味しかった。

お前の価値観で他人のサーモン決めんな。人には人のサーモン。

深夜のスーパーはどこか現実と非現実が入り混じった浮遊感があって好きです。何を買って帰ってやろうかという無敵感も好きです。ひんやりスーパー。

突然ですが、私には相方がいます。
名前はトシキ BIG a.k.a. シートシ。

TKGと相方

彼と私は高校のクラスメイトで、第一印象は背が高くてカッコいい奴。それとスカした奴。

しかしある日、昼休みに一緒に弁当を食べていた時、顔の前に両手を魚の口の様に構えてひとこと言い放った。

【クエ】

これは魚のクエとご飯を食え！という意味をかけたものである。そう、高校1年生が考えつく訳が無い高度な言葉遊びだ。否、遊びの域を超え神の領域。

この時コイツは只者じゃあないと思った。

今思い返すと面白くないけど。

そんな彼はいつでも一本気な漢だ。

何かひとつの事をしている時はそれに集中する。
猪突猛進というかアホイノシシというか。

何が言いたいか。

あいつスマホいじってる時、俺の話を全く聞いてない！！

いや気持ちもわかるけど。スマホって凄いもんね。世界中の情報から身近な人とのコミュニケーションまで。その小さな箱に万物が詰まってるもんね。

俺も分かってるつもりだよ。

それにしても聞いてない！聞けや！
脳みそに届きそうなインパクトのある言葉も、聞きやすい短い文章も試してみたけどダメだった。

スマホつえぇ！！

高校から今までずっとお前の耳にスリーポイントでナイスボイスをお届けしてきた俺もスマホの前じゃ無力か。

悲しいよ。
実家で飼ってたミニチュアダックスフンドがふざけたイチジョウに顔の前で刺身食われた時くらい悲しい。

ほんとごめんなカーレッジ。

ある日のライブ終わり、2人で近所の居酒屋に行った。
一杯目のビールを注文し、その日披露したネタの反省をしていた時。そして、その瞬間は突然に訪れた。

「スマホの電池切れたわ」

ほーん。そうなんだ。
平静を装った私は極めて素っ気ない返事をした。

さぁ、どう出る。

スマホを失った今、お前は俺とどう会話する？

口につけたジョッキの上から覗く私の目はさながらスナイパーだったろう。近所のさびれた居酒屋にスナイパーが出現してしまった。それもこれもお前のせいだぞトシキ。お前が始めた物語だろ、お前が終わらせろ。

結局、

めちゃくちゃ俺の話聞いてくれた。すっごくいいリアクションしてくれた。

なぁ相方、改まって言うことじゃないんだけどさ。

スマホを捨ててくれないか？

◆執筆中に聴いていたグッドミュージック◆
ロトのように /  VaVa

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カイキエンの売れるまで