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3-D Matrix 2023年4月期 中間決算感想 (欧州)

さて、23年4月期の決算も発表され、株主の反応は総じて厳しいものでした。20日に説明会動画が公開された後も、今一つ盛り上がりに欠けているように感じますが、その中、私は今回の決算にかなり高い評価を与えています。

いつものお花畑と言われそうなので、その理由を述べさせて頂きたいと思います。

では、まず最初に欧州から。


Q1 で大きな失望が拡がった理由の一つが、その数字から、社長が「カスケード・ダウン」と呼んでいる、販売対象を点から面へと拡げる事で一気に売上を伸ばす動きが読み取れなかった事です。そのため、今期の欧州売上目標である 1,950百万の達成はとうてい不可能という空気が拡がりました。

そして、この Q2 においても 欧州売上は 274百万。四半期としては過去最高とはいえ、Q1 の 217百万と比べても、大きな伸びを示したとは言えませんでした。

しかし、決算説明会資料において、英国における数字が発表され、少なくとも、英国においてはカスケード・ダウンが順調なスタートを切っており、売上の大きな伸びを見せている事が明らかになりました。


英国売上本数の推移

今期6月に英国で販売された PuraStat の本数が390本。対して、その5ヶ月後の 11月に販売された本数が 671本。その増加率は実に 72% という高い数字になります。(容量が不明ですので売上の伸びは判りませんが、差は小さいと思われます)

前年同月の販売本数は明らかにされませんでしたが、社長の発言では、「前年と比べれば2倍は確実に超える」との事。このまま順調に売上が伸びれば、英国での PuraStat の最終売上も、前期比で2倍を大きく超える事が予想されます。

極めて当たり前の事ですが、もともと大きな売上を上げている地域ほど、さらに売上を大きく拡大するのは困難になります。英国は、ドイツと並ぶ PuraStat の最大市場です。その英国で2倍以上の売上達成が見えて来たことは、欧州全体でのカスケード・ダウンの成功を予感させるには十分な情報です。


次に、個人的には最も大きな不安を抱いていた、ドイツでの販売の状況ですが。

11月の半ば、古参ホルダーにとって大きな衝撃を与える情報が開示されました。欧州で最も古くから PuraStat の販売を担当していたドイツの代理店 Nicolai Medizintechnik 社との販売提携を解消。新たに FujiFilm  Europe がドイツにおける販売を担当することとなったというのです。

古参ホルダーにとって、欧州での売上が伸び悩んでいたときに販売契約を結び、初めて一定水準以上の売上を出して、PuraStat の製品としての可能性を見せてくれた販売代理店であり、一種の恩人とも言える会社です。

その Nicolai の経営者が変わってから、PuraStat に対する営業努力が、以前と比べて見られなくなったという社長の言葉に驚くと共に、何とか以前の積極的営業方針に戻って欲しいと願っていた中での、販売提携契約の終了の開示でした。

ここでまず心配したのは、Nicolai が発注を手控える可能性です。Nicolai はエージェントではなく、ディストリビューターですので、3-D Matrix はドイツにおいては、医療機関ではなく Nicolai に対して販売を行っている事になります。

以前、同様の出来事が豪州で Maquet との間で起きたとき、Maquet は在庫を減らすために、製品の発注を大きく絞りこんだために、豪州における売上が落ち込んだという事がありました。

それと同じことが、欧州の最大市場であるドイツで起きた場合、その影響は当時の豪州よりはるかに大きなものとなります。前期の Nicolai への売上は 210, 877千円。本来は、この数字を元に2倍以上の売上が期待されていたのです。その売上が2倍どころか、逆に前期より減少するような事があれば、欧州の予算達成は完全に不可能となります。


今回の決算説明会に期待したのは、このドイツの現状の詳細な説明でした。

欧州担当取締役の三木氏からの説明は次のようなものでした。

・ドイツにおける販売に関しては、消化器内視鏡領域とその他の領域の全てにおいて、Nicolai との提携を解消する。

・2月末日以降、 消化器内視鏡領域は FujiFilm Europe が担当し、それ以外の領域は 3-D Matrix が直販を行う。

これだけであれば、懸念材料が現実化する可能性が高かったのですが、それを払拭する2つの情報が、会社側から発表されたのです。

まず、FujiFilm との提携によって、売上ポテンシャルが 10倍に拡大するというものでした。


FujiFilm Europe vs. Nicolai 

Nicolai がこれまでターゲットとしていた医療機関は、比較的小規模なところが中心で、医療機関の数こそ多いものの、勤務する医師の数も少なく、また出血を伴うような手術の件数も少ない。その結果、月あたりの販売本数は 1,200本が上限となっていました。

それに対して、FujiFilm がターゲットとする医療機関は有力医療機関が中心であり、勤務医の数も手術数も多く、ポテンシャルは最大で、月 12,000本に達すると言うのです。

FujiFilm に販売会社を変更する事で、売上ポテンシャルが 10倍にアップする。これなら、一時的に売上が大きくへこんだとしても、来期にはそれを補って余りある売上が期待できます。

この情報に加えて、もう一つ、三木取締役の方から情報がもたらされました。

Nicolai との契約終了に先立って、3-D Matrix が自ら有力医療機関に営業を行った結果、ドイツにおける11月の売上が過去最高の数字を記録したというのです。

これなら、仮に Nicolai が契約が終了する2月まで発注を手控えたとしても、売上が大きく予定を下回るという事はないでしょうし、非公式にであれ、FujiFilm も営業を開始しているとすれば、3月以降、FujiFilm による販売はかなりスムーズに進む事が期待できます。

この直販と FujiFilm との連携が上手くいくようであれば、下期にドイツでも 、英国同様のカスケード・ダウンが成功する可能性もあり、そうなれば欧州の予算達成が見えてきます。


それ以外にも、フランスでの、心臓血管外科領域での進捗や、実質臓器(肝臓)手術への PuraBond の使用例等、ポジティブな情報ももたらされました。

数字の面では不満も残る欧州の売上でしたが、全体を見て評価すれば、個人的には十分に合格点を与えられる決算と考えています。

Q3 の数字へ期待を持てる事が、何よりもその事を証明していると思います。

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