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ヤマノケ

これは、私がまだ8歳の夏休みの頃のことである。

私には田舎の祖父母がおり、夏休みになると決まって祖父母の家に数日間泊まりに行く。

祖父母はとても優しく、いつも美味しいご飯をたくさん用意してくれたり、田舎の綺麗な景色を見せに行ってくれたり、私を楽しませようと常に気を遣ってくれていた。私はそんな祖父母のことが大好きだった。

だが、今年はなにか様子がちがうような気がした。

祖父の様子が変だった。

変、といっても何か明確におかしな言動をしているわけではない。ただ、何かわからないがいつもと少し違うような気がした。

まあ気のせいだろうと自分の中で片付けて、私はいつものように祖父母の田舎を楽しんだ。

ただ、今年は祖父に山にだけは近づいては行けないよと言われていた。と言っても私は今まで山になど近づいたことはなかったので特に気にも止めずに過ごしていた。

しかし、私がこの田舎に来てから数日経った頃、部屋の襖の向こうで祖父が一人で何かをぶつぶつと呟いていた。

私は祖父を驚かせてやろうと思い、襖をばっと開けて「ばあ!」と大きな声で言った。

すると、祖父はうわぁっといいその場で転げた。

私はケラケラと笑い、祖父の方に目をやると、祖父の首元に何か黒い毛むくじゃらのものがあるのを見つけた。

ぐっと目を凝らすと、もう無くなっていた。

気のせいだったのだろう。そう思い忘れることにした。

そして、ある日、私は茹だるような暑さで、真夜中に目が覚めしまった。

居間で水を飲もうと、足を向けると、真っ暗の居間で祖父が一人何かを呟いている。

私はそれを陰から見ようと隠れた。

何を言っているのだろう。

 テン、、、、ソウ、、、メッ、、、

なに?てんそうめつ?

 テン、、、、、ソウ、、、、、、メッ、、、

何を言ってるんだ?

 テン、、、、、ソウ、、、、、メッ、、、

怖くなってきた。
耳を凝らしてよく聞いてみると、なにやらよく聞こえてきた。

 テン、、、、、ソウ、、、、、メッ、、、


 テン、、、、ソウ、、、メッ、、、


 テント、、、ソウトウ、、、、メッ、、、


 テントウ、、、ソウトウ、、、メッチ、、、、


 テントウムシソウトウオオキイカラメッチャムカツク



てんとう虫相当大きいから
めっちゃムカつく

相当大きいてんとう虫


私は部屋に戻り、頭まで布団を被り震えながら一夜を過ごした。

あれは一体なんだったのだろう。
今思い出しても震えが止まりません。

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