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野に咲く花の様に

娘の保育園のベテラン先生は、とにかく歌が好きだった。しかも、少し古い歌が好きで、親世代が聴いて懐かしいなと思う様な歌を子供達と歌っていた。

いつだったか発表会で、「野に咲く花の様に」を子供たちが歌ってくれた。昔のドラマの「裸の大将」の主題歌としか思っていなかったが、子供達の無邪気に「野に咲く花の様に」を歌うと、心が洗われる気がした。

娘のクラスのお母さん達皆んな、このベテラン先生が大好きだった。そのせいか、親同士の団結力もあり保育園の割に皆んな仲が良く、休日、みんなで花見に行ったり、誰かの会社の保養所に泊まりに行ったり家族ぐるみの付き合いをしていた。

保育園ママの良いところは、働いてるだけあって計画立案が早く、分担作業でささっと事が運んだ。泊まりに行っても、料理も片付けも早く一緒にいて気持ちよく過ごせた。

年中の時だけ何故か担任を交代したが、年長で戻って本当にホッとした。
何故なら先生の醍醐味は、発表会の出し物。2歳の時から楽しませてくれたので、年長さんともなれば高精度の音楽劇をしてくれるだろうと期待した。

その願いは叶い、幼稚園の年長とは思えないほどの、楽しい劇を披露してくれた。娘は格好いい役で、見ている親も満足のいくものだった。しかも、何故か全体の司会者にも抜擢され、ビデオを撮るのに、また早く並びいい場所を確保した。

ビデオを撮っていると娘の異変に気付いた。劇も司会も上手くこなしているのに、ずっと目をぱちぱちしている。チック症状が出ていた。

帰って娘と話すと、先生について行くのが大変だった事がわかった。高精度の劇を見せる裏側は、子供達の努力もあったんだとその時思った。
チックは、その後も暫く続いて不安だったけれど、卒園式を目の前に自然に治った。

卒園式が近づき卒園式の後、ベテラン先生を労う謝恩会を、保護者と計画した。場所は、大吾のコネを使い、おしゃれなカフェダイニングの営業前の時間を貸切にしてもらう事にした。

先生の為に思い出DVDを作成し流す事や、子供達のためのゲームなど話し合う中、ふと、「野に咲く花の様に」が脳裏に浮かんだ。
オープニングは、先生の為に保護者で「野にさくはなのように」を楽器で演奏して、子供達が歌う中入場してもらわないか提案してみた。結果皆んな了承してくれた。

それぞれ家にある楽器を練習する事になった。鍵盤ハーモニカや、縦笛、ハーモニカ、すずなどそれぞれに合わせた楽譜を作り皆に配り親子で練習してもらった。(こう言う努力はついしてしまう笑)

謝恩会本番、ほぼ、ぶっつけ本番の演奏会、上手く行くか誰もわからない中、先生が入り口から入ってきた。せーのの合図で親子の演奏会が始まった。
先生は驚いて泣いていた。そして一緒に歌ってくれた。

娘の保育園生活、ベテラン先生に受け持ってくれて本当に良かったと思いながら卒園の日を迎える事ができた。娘も同じ気持ちかと思いきや、保育園大っ嫌いだったと言っている。


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