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ミャンマー国軍、支配力低下するか 次の一手は?

3年前のクーデター以後、混乱が続くミャンマー。最近になり国軍は国境沿いでの武装勢力との戦いで相次いで負け、支配権を失っています。ミンアウンフライン最高司令官は権力の座を維持できるのか。軍政はこれからどうなるのか。ガーディアン紙のフォーカス記事を訳しました。

元記事:Myanmar: is the junta’s grip on power weakening and what next for its leadership?

ミャンマー国軍、支配力低下するか 次の一手は?

ミャンマー国軍は、タイと国境を接する貿易の要衝カレン州ミャワディを失いつつある。軍政に抵抗する武装勢力によると、先週は国軍兵士らが投降した。

国軍は、武装勢力との戦いで中国とインド国境の重要拠点や西部ラカイン州の重要拠点など相次いで失っている。敗退は国軍に経済的・戦略的打撃を与えているだけではなく、幹部らの間で屈辱感が広がっており、ミンアウンフライン最高司令官の責任問題が浮上している。

■なぜ武装勢力は国軍と戦っているのか

国軍は3年前、民主政権をクーデターにより追放し、アウンサンスーチー氏らを拘束した。市民はクーデターに抗議したが、軍はこれを弾圧した。

その後、市民武装組織が発生したが、武器とリソースが不足していることも多い。このため、独立を求め長年軍と戦ってきた経験がある少数民族の武装勢力から支援を受ける組織もある。

軍政と各地で戦っている組織の目的や組織間の協力の程度はさまざまだが、きわめて数が多く、軍にとって負担となっている。軍は人手不足から最近になり徴兵制を導入したため、若者は軍の支配が及んでいない地域に逃れている。

■国軍は失脚するのか

国軍はヤンゴンやマンダレー、ネピドーといった主要都市を掌握しているものの、失った国境沿いの重要拠点ですぐに奪還できそうな地域は少ない。

国際危機グループのミャンマー・アドバイザーを務めるリチャード・ホーシー氏は「国軍は何度も屈辱を受け、多大な損失を被ってきた。軍の中枢が腐敗しているのは明らかだ」と指摘する。「現時点で組織として崩壊はしていない。(イスラム主義組織タリバンによる)カブール陥落とは異なる」

だが、今後は軍政がどれだけ支配地域を失うかということではなく、敗退が続くことによる軍内部への心理的影響と政治的影響が問題になるという。ホーシー氏は、ある種の政権崩壊もしくはミンアウンフライン氏の失脚などの内部崩壊の可能性があるとし、「こうした状態が永遠に続くことはない」と述べた。

国軍内でのトップ交代の手続きは不明だが、新トップは無差別砲撃・爆撃、焼き討ち、大量殺害を繰り返しているとされるミンアウンフライン氏よりも残虐な可能性もある。誰が選ばれるにしても、士気は低く、多数が逃げ、敵対勢力も多く問題は山積みだ。

■周辺地域の反応は?

東南アジア諸国連合(ASEAN)はミャンマー危機解決を国際的に主導しているが、成功していない。

タイのセーター・タウィーシン首相は今週、ロイター通信に対し、軍事政権が力を失い始めており、今こそ対話すべきだと述べた。

だが、国民には嫌われ、戦争犯罪を指摘される国軍が交渉に応じる可能性は極めて低い。民主派が立ち上げた国民統一政府は国軍が権力の座から降りることが対話の条件だと明示している。このため「和平交渉は始まらないだろう」と、豪メルボルンのラトローブ大学のハンター・マーストン非常勤研究員は指摘する。

一方、中国は、ミャンマーに最も影響力があると考えられているが、国軍との関係は複雑で、できることは限られている。

アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)政権と友好的な関係を築き、ミャンマーに投資を行っていた中国は、ミャンマー国内を混乱させ、不安定化させたクーデターに不快感を示した。

また中国は、中国人を標的としたインターネット詐欺の中心地にミャンマーがなっているが、国軍が取り締まりできていないことにもいらだちを募らせている。ミャンマー北部シャン州で昨年末、武装集団が国軍へ組織的攻撃を行うことを黙認し、国軍の大規模な敗退につながった。中国はそれ以来、この地域での停戦合意を仲介している。

ラトローブ大学のマーストン氏によると、中国は長年、ミャンマー国内のすべての利益団体と関係を築いてきた。「ミャンマーにおける中国のビジネス上の利益を損なったとしても、最終的には分断した従属的なミャンマーがいまだ理想的なようだ」「国境沿いで、西側主導のリベラルな民主主義のようなものは望んでいない」と指摘した。


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