掌編小説「ame〜朝露のごとき雫と、自然の営み〜」
ぐるぐる。ぐるぐる。ぐるぐる。ぐるぐる。
マグカップに入ったココア。
立ち昇る湯気。
香ばしさが鼻腔を暖かく撫でる。
すっかり馴染んだ粉末ミルクと砂糖が、スプーン越しに指先へ心地よい重みをかける。
端末から流れる楽曲は僕の時間を楽しませる。
人生にひとまずの翳りが落ち込む30代。
満たされない渇きより、口を湿らすミルク入りのココアに酔い痴れる。
あぁ、味わいに蕩けるようで。
伴侶を求め探しているが、なかなか出会いもタイミングもわからない。チャンスはそれなりにあるのだが…。
僕が好きなものはなんであったか。
女の子には愛を語らいたいが、それには言葉は複雑に過ぎる。
ディオニュソスやバッカスの如く熱いココアを一口スプーンで飲み下す。
そういえば、日本にもお酒の神さまがいたなぁ。
確か山の神だった。
名前は大山祇神、別名は酒解神。
山の上流から流れる水は、清流や滝が多い。市政を流れる河川は、流れのある池や湖の側面を持つ。三水が縦に流れるのが川でもある。
仏教ではお酒はあまり飲まれないが、勧められればお坊様は飲まれる。食べ物の理は食されることにある。
であれば、このココアは糧より安らぎ、癒しの面がつよい。
舌先で甘く優しく踊るココアは、僕には櫂で漕ぐ水面のようでもある。
そうか、匙。あるいは別の呼び名だったかもしれないが……。櫂、匙、鉾(やり)か。
日本語は本当に面白い。
休みの日の午後に飲むココアは誰にも甘くて。
彼女ができたら、一緒にココアを作るとしよう。
昔には甘い飲み物は果実酒くらいだったのだろうか。…果物じゃないけれど、甘酒とか。
日本の飲み物は風物詩的な意味合いが多いのかな。
甘酒を作るのもいいなぁ。
日本男児よ、ブレイクタイムは大事に過ごすとよいよ。夏だし。
ほづみわたる
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