夏と料理
日本の夏は老体にこたえる。気温の高さもさることながら、問題は湿度の高さである。
ヨーロッパに住んでいた20世紀中頃、夏と云えばミラノのような大都市では六月に入るころから人が減りだし、八月ともなればすべての店にシャッターが下ろされスーパーマーケットなども例外ではなく、家政婦からエリートビジネスマンに至るまで、ミラノの住人達は海や山に逃げ出していた。通常は車の激しく行きかう大道通りも人影はなく深閑として、ある時急用でヴァカンスを中断して急遽町に戻った私は、石畳を歩く自分の靴音が響きかえってくるのにギョッとしたのであった。八月のミラノはゴーストタウンと化す。現在は道路に覆い隠されていて見えないのだが、運河の多いミラノは標高マイナス80㎝ぐらいだそうで、かなり湿気があり空気が澱んでいる。
耐え難い暑さだと、その頃は思った。そんな私のことだから夏のヴァカンスの前半は海で、後半は山で、という風に9月までは涼しいところで英気を養っていた。
帰国を決意したころ、先ず第一に日本の気候を考慮しなければならなかった。日本はたいそう美しい国ではあるが、蒸し暑さだけは何としてでも避けなければならない。原始的な私は、クーラーなどと言う文明の利器は真っ平御免なのである。そこで私は山裾を選んで家を建てた。ところが近年の気候異変のせいか、この辺りも日中はかなり高温で湿度もかなりの高さになる。私の脳みそは溶けたバターの様になり、意識朦朧として思考能力が低下することになる(老化のせいかな?)。そこで、唯一ピンチの私を救うのは食事である。オートファジーを実行しているので(これはなかなか快適であるが)大好きなスペインの夏料理、中近東の豆料理などでへたばっている脳みそに喝を与える。
先ずは、アンダルシア地方のトマト料理ガスパーチョ 4~5人前
A
完熟したトマト 大 4~6個
玉ねぎ 中 1個
新鮮なパプリカ赤 大 1個
キュウリ 一本
ニンニク 2~3かけら
最上のエクストラヴァージンオリーヴオイル 大さじ6杯
大きなレモン搾り汁 1個分
ワインビネガー赤 大さじ3
唐辛子 適宜(タバスコソース 小匙1杯でもよいが、その時はビネガーの量を調節する)
塩 適宜
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B
*肉厚なイエローパプリカ大 1個
*新鮮なエシャロット 4~6個
*キュウリ 2~3本
*ニンジン(好みで) 2本
*フィノッキオ 2株
*セロリの柔らかい部分 2株
*トマト サラダ用 4個
*クルトン 適宜
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前提としてすべの食材は最上の質を使用すること。
A ニンニクを除くAを次々にミキサーに入れ、ペースト状にする。
味見をしてから、市販の無添加トマトジュースを加えてもよい。にんにく
を包丁でバンと潰しAに加え大きな鉢に注ぎフリーザーで保管する。
凍り過ぎないように時々フォークでかき回す。
B の全てをサイコロ状に切り其々の小鉢に入れる。
C テーブルに出す前にAの鉢からニンニクを取り除く。
Aの大鉢をテーブルの中央に置き、サイコロに切ってある野菜の小鉢を並
べ、銘々の小鉢にトマトソースを取り、好みのサイコロ状の野菜をのせて
食する。好みで大鉢のトマトソースにブッカキ氷を浮かべても良い。
中東風の豆料理 フムムス 5~6人前
材料
ひよこ豆(茹でたもの) 500g
レモン大)のしぼり汁 1~2個分
塩 小さじ 1
パプリカ 小さじ 1/2
ニンニク 1片(パウダーでもよい)
コショウ 適宜
エクストラヴァージンオリーヴオイル(極上) 大さじ6
胡麻ペースト カップ1/2
カエンペッパー 適宜
1,ひよこ豆をミキサーに入れゆで汁を少し入れ滑らかになるまで攪拌る。
2,レモン汁を加え少し攪拌してからオリーヴオイルを加え攪拌し、さらに
他の調味料を加え混ぜ合わせる。
3,大皿に2,を伸ばしながら盛りつけ、オリーヴオイルを一回りかけて、
カエンペッパーを篩うる。
銘々皿に3,を大匙ですくい取り、それぞれ千切ったエジモやピタにつけて食べる。わたしは個人的にキュウリの薄切りやサラダ菜ですくって食べるのが好きである。また、ひよこ豆の代わりに大豆の茹でたのも意外とおいしいが、私の最も好きなのは豆の代わりに、焼きナスをペーストにしたもの。もちろんナスは焼いてから皮を取り除くことと、ミキサーにかける時にナスと一緒にレモン汁も入れる事を忘れない。
スペインは中世期にサラセンの侵略を受けていたせいか、香辛料をふんだんに使う料理が多い、特に南部において。その香辛料が私の溶けかかった脳味噌に喝をいれる。ひょっとして遠い先祖は、ユダヤ人かアラブ人ではなかったかと思う程、私は中近東の料理が好きである。
M.Grazia
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